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FIFA公認カメラマンの渾身ルポ、クラブW杯開催のカタールで完全隔離生活

2021 2/4 11:00小中村政一
ドーハの高層ビル群Ⓒ小中村政一
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Ⓒ小中村政一

ドタバタのカタール入国申請

新型コロナの感染拡大により2019年12月のFIFAクラブワールドカップ2019を最後に海外での撮影がなくなった。しかし、2021年2月に延期されたFIFAクラブワールドカップ2020で海外撮影のオファーがやっと舞い込んできた。

私は今、カタール・ドーハにいる。PCR検査を受けて隔離期間中なのだが、コロナ禍で海外撮影許可申請の難しさと、カタール政府が行っているコロナ対策を伝えておきたい。

カタール政府は国民及び永住権を所有しているもの以外の入国を一時ストップした。そのため、カタールに入国するにはカタール政府に特別入国申請を行い、承認されない限り入国はできないのが現状だ。

1月初旬、FIFAから連絡があり、FIFAクラブワールドカップの撮影許可はカタールメディアのみを予定しているという案内が来た。その時は、海外で試合は行われているのに自分自身いつ海外での撮影が行えるのかわからず、出口のない長いトンネルの中にいるようで絶望感でいっぱいだった。

だが、マネージャーを含めたスタッフがFIFAとメールをやり取りした結果、1月20日にFIFAから正式に撮影許可が出た。まずはカタール政府に特別入国申請を行う必要があった。

カタール政府へは事前にFIFAから私の入国許可をもらうための手続きをしてもらった上で、VISA発給とEEP(Exceptional Entry Permit 特別入国許可書)の発給申請を行うこととなった。

この申請には、色々と矛盾があり飛行機の便名と7日間の隔離生活を送るホテル名を記入する必要があった。だが、入国許可をもらう申請にいつから入国するかなど書けるわけがない…。

カタール政府が推薦するホテルを見ると一度予約をするとキャンセルや変更は不可と書かれている。予約せざるを得ないため出国を1月23日に設定して申請すると、3日間では入国許可は出ないが25日には発給できるという返答だった。

オークランドシティーの辞退で開幕戦に間に合う

この時点で2月1日から開幕するFIFAクラブワールドカップの開幕戦には隔離期間を入れると間に合わないことが確定したが、開幕戦に出場する予定だったオセアニア代表のオークランドシティー(ニュージーランド)がコロナウイルスの影響で大会参加を辞退して1回戦がなくなり、2回戦がある4日の開幕に変更された。

そのため26日までに出国すれば、順調なら4日の開幕には間に合う計算。結果、特別入国許可が出たのは日本時間25日夕方5時で、そこからすぐに飛行機とホテルを再度マネージャーが手配した。

カタール政府が推奨する7日間の隔離生活を送るホテル代が36万円(空港からの送迎と3食付き)、航空券24万円、23日に出国すれば泊まるはずだったホテル代20万円が重くのしかかる。それでもこのFIFAクラブワールドカップを撮影する意味は十分にあると考えて出国した。

なぜならカタール入国を許されたカメラマンがそんなにいるとは思えなかったし、何より自分の復帰戦がこの大会でできるなら、お金ではなく経験を選びたかったからだ。少なくとも必要とされているし、入国と撮影許可が降りていることが認められている何よりの証拠だと思うから。

カタール到着後に分かった衝撃の事実

すべての手続きと書類が揃った翌日26日の出国にはマネージャーとアシスタントが空港まで送ってくれた。成田空港でカタール航空807便の搭乗手続きをしていると、アシスタントの大学サッカー部時代の後輩・西友都(にしゆうと)君と偶然会った。同じ便でセルビアに向かうという。

サッカー選手を目指し、セルビアに入国できる保証がないままチャレンジするという西君を見ていると、なんだか他人事には思えなかった。私自身もFIFA公認のカメラマンになるために手段を選ばす行動したからだ。

そんな彼を含め、私たちの搭乗する飛行機は全員でおそらく50人もいなかったと思う。エコノミークラスの中で前方席は私以外誰もおらず、その他の搭乗者はすべて後方席に集まっていた。

その時は若干の違和感はあったが、私の専用機のようであまり気にはしていなかった。

ガランとした機内

Ⓒ小中村政一


飛行機の出発時刻は22時35分から22時05分出発に変更になっていた。おそらく搭乗人数が少ないための早発だったと思う。

機内の客室乗務員は、いつものカタール航空のユニホームとは程遠い防護服のようなものを全員装着していて、初めてカタール政府がコロナにどのように取り組んでいるかを実感した。

そして、成田から12時間半後、目的地カタール・ドーハに到着したのは午前5時。機内ではセルビアに向かう西くんと長い間話したが、別れは突然訪れた。

カタールで降りる搭乗者と、トランジットの搭乗者が別々の行動となった。そこで初めてカタールで降りる乗客が私一人だということが分かった。

入国後はGPS追跡とコロナ感染状況を監視

ここから始まるカタール政府が行っているコロナ対策に、私はさらに驚かされることになる。

まずは飛行機から私専用のバスでPCR検査を行う空港内の病院へ。そこでは完全防護をしている方々の出迎えがあり、すぐにカタールの携帯シムを購入させられた。購入したらすぐにカタールの携帯番号で、コロナ追跡アプリをダウンロードし、登録させられた。ここから私のカタール政府によるGPS追跡とコロナ感染状況の監視が始まった。

そのまま病院内に移動して、ドクターによるPCR検査へ。口と鼻による検査はほんの数分で終わり、再び私専用バスで専用イミグレーションを通過し、空港の外で待っているホテルの送迎車に乗車。カタール政府が用意してくれたホテルに流れ作業のように送り届けられた。

病院に向かうバス車内

Ⓒ小中村政一


ホテルは五つ星にも関わらず、正面玄関ではなく地下駐車場にある裏動線用の入り口から専用エレベーターで、客室のあるフロアまで直結だった。

そのままホテルに滞在しているドクターから体調や服用している薬などを聞かれ、メディカルチェックを受けて誰にも会わない状況で、自分の部屋に案内される。飛行機からここまでの流れで、カタールの一般市民と接触することもなくホテルの部屋まで行けるなんて想像もしていなかった。

そして部屋の中でドクターが一言。

「1週間この部屋から一歩も出ないでください」

カタール政府が国民と永住権を持つ人間以外の入国を一切認めていないからこそできる荒業だとも言えるが、これを日本政府がするかと言えば絶対にできないであろう。感染者が毎日平均200名人程度で抑えられていて、かつ第二波、第三波が来ていないのも納得できた。

広々したホテルの部屋で隔離生活

そして隔離生活が始まった。

部屋は想像以上に広く、キングサイズのベットに、バルコニーもある。トイレも浴槽もシャワーもセパレートで、ビジネスデスクにソファーまである。

ホテルの部屋

Ⓒ小中村政一


食事も同じメニューで一週間ルームサービスを頼んで過ごす日々の中で、一番活用したツールがstand.fmと今話題のclubhouseだ。

stand.fmでは自分のチャンネル「KONAKAMURA WORLD」で、隔離期間中毎日、世界中にいるアスリートやスポーツに関わる人々との対談を生配信した。

clubhouseでは、サッカーに関わる方々(サッカー選手、雑誌編集者、記者、カメラマン、サポーター)と連日連夜、サッカーに関わることを熱く語り続けた。時には24時間のルームを作り、20時間話し続けるという一日もあった。

この2つのツールがなければ、きっと私の隔離生活は苦痛でしかなく、食事とPCR検査と多少のSNSの更新で終わっていただろう。

さて、この記事を書いている3時間後には、最後のPCR検査を終えてスタジアムに向かう予定。いよいよ世界が注目する大舞台が幕を開ける。

《ライタープロフィール》
小中村政一(こなかむら・まさかず)1979年6月18日、兵庫県西宮市出身。MLB(メジャーリーグ)、FIFA(国際サッカー連盟)、USGA(全米ゴルフ協会)公認カメラマン。3団体の主催試合を撮影できる世界でも数少ないフリーカメラマン。サッカーワールドカップやイチロー、ダルビッシュらも撮影。

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