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【札幌記念】ソダシに襲い掛かる距離の壁 東大HCが札幌芝2000mを徹底検証

新潟芝1600mコースデータ,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

コース紹介

今週は札幌芝2000mを舞台に、夏競馬の華にして大一番、GⅡ札幌記念が行われる。無敗で桜花賞を制覇し、現役屈指のアイドルホースとなった白毛馬ソダシ、今春香港でQE2世Cを勝った名牝ラヴズオンリーユーの2強に、18年の有馬記念覇者ブラストワンピース、安田記念5着から七夕賞で重賞ウィナーとなったトーラスジェミニなど、秋GⅠへの前哨戦たるにふさわしい格を備えたメンバーが出揃った。

夏競馬でただ一つのGⅡ競走であり、昨年は1着ノームコアが香港Cを勝ち、3着ラッキーライラックがエリザベス女王杯連覇を果たしている。今週は当該コース唯一の重賞である同レースの施行に合わせて「札幌芝2000m」の特徴をデータで分析していく(使用するデータは特記なき限り2016年8月20日~2021年8月15日)。

まずはコース紹介。正面ポケット地点をスタートしてからゆるやかなコーナーを通過。その分向正面が短くなっており、4コーナーを通過したのち270m足らずの直線でゴールを迎える。円形のような独特な形状ではあるが、全体の高低差は1mに満たず、クセがない分力をフルに発揮しやすいコースだ。

1枠が4連覇中の札幌記念

札幌芝2000m・過去5年の枠別成績,ⒸSPAIA


<札幌芝2000m・過去5年の枠別成績>
1枠【11-12-17-101】勝率7.8%/連対率16.3%/複勝率28.4%
2枠【10-11-9-113】勝率7.0%/連対率14.7%/複勝率21.0%
3枠【14-7-11-120】勝率9.2%/連対率13.8%/複勝率21.1%
4枠【13-15-14-120】勝率8.0%/連対率17.3%/複勝率25.9%
5枠【13-18-14-125】勝率7.6%/連対率18.2%/複勝率26.5%
6枠【14-9-9-140】勝率8.1%/連対率13.4%/複勝率18.6%
7枠【16-15-12-135】勝率9.0%/連対率17.4%/複勝率24.2%
8枠【6-10-11-155】勝率3.3%/連対率8.8%/複勝率14.8%

枠別成績では中寄りの枠がやや抜けているものの、馬券の買い目を左右するほどの際立ったデータではない。評価を下げたいのは8枠で、勝率・連対率・複勝率がワースト、回収率も単勝:22%、複勝:34%といいところが何一つない。近10年の札幌記念を8枠で勝ったのは2011年のトーセンジョーダンのみで、次走の天皇賞(秋)レコード勝ちもうなずけるレベルの快挙だった。

札幌記念で活躍が目立つのは1枠。2017年の蛯名正義サクラアンプルールに始まり、以後サングレーザー・ブラストワンピース・ノームコアと4連覇中だ。名を連ねた勝ち馬は実力馬揃いであったものの、今年も白帽は注視しておきたい。

札幌芝2000m・過去5年の脚質別成績,ⒸSPAIA


<札幌芝2000m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【13-9-1-83】勝率12.3%/連対率20.8%/複勝率21.7%
先行【46-47-39-208】勝率13.5%/連対率27.4%/複勝率38.8%
差し【25-31-38-330】勝率5.9%/連対率13.2%/複勝率22.2%
追込【5-3-14-369】勝率1.3%/連対率2.0%/複勝率5.6%

脚質別成績の特徴は、ほぼ全てのコースで最も成績のいい逃げの不振。平均的に大きな緩みのないラップ構成が要因とみられる。同コース施行の札幌記念を逃げ切った馬は過去に4頭いるが、そのうちメジロパーマー、フサイチパンドラ、ネオリアリズムはGⅠを制しており、地力がなければ勝ち切れないことを物語っている。

王道は先行抜け出しで、4割近い複勝率かつ単複回収率100%超えと頼りになる。札幌記念では【0-1-2-15】と結果が出ていないものの、条件戦では前走先行かつ掲示板を確保した馬が【33-28-18-133】複勝率37.3%、単勝回収率126%をマークしており、該当馬を軸に据えて馬券を仕留めたい。

札幌記念では差しが決まっており、こちらも4連覇中。この勝ち馬4頭はいずれも前走重賞で4着以下に敗れており、斤量や展開の影響で末脚不発からの巻き返しというパターンだ。確かなキレが担保されていれば多少馬柱が汚れていても頭で買うだけの価値がある。

ソダシに再度襲い掛かる、クロフネの距離の壁

札幌芝2000m・過去5年の種牡馬別成績,ⒸSPAIA


<札幌芝2000m・過去5年の種牡馬別成績>
ディープインパクト【12-14-9-64】勝率12.1%/連対率26.3%/複勝率35.4%
ハービンジャー【10-9-14-88】勝率8.3%/連対率15.7%/複勝率27.3%
オルフェーヴル【5-2-1-17】勝率20.0%/連対率28.0%/複勝率32.0%
クロフネ【0-0-0-6】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%

種牡馬別成績ではディープインパクトとハービンジャーの2強。順に詳述していく。

ディープインパクト産駒は素直に前走好走馬を買えばよく、前走3着以内で【6-8-4-15】複勝率54.5%。このうちノーザンファーム・社台ファーム生産馬は【4-6-3-5】複勝率72.2%、単複回収率100%以上と絶好調だ。札幌記念でもディープインパクト産駒は好相性で、過去5年では【1-2-1-5】、サングレーザーの勝利など複勝率44.4%を記録。近走充実しているラヴズオンリーユーはまず崩れないだろう。同じく該当するアイスバブルにも注意を払っておきたい。

札幌記念連覇中のハービンジャー産駒は乗り替わり組が【4-8-8-43】で複勝率を3割に乗せ、このうち前走上がり3位以内で【3-2-1-8】複勝率42.9%、単勝回収率170%となる。昨年の札幌記念でラッキーライラックに先着する2着の激走を見せたペルシアンナイトにもう一丁を期待したい。

その他複勝率3割超えの種牡馬にはオルフェーヴル、キングカメハメハ、ステイゴールドなどの名前がある。一方ソダシの父クロフネは近5年で一度も馬券圏内がなく、全期間まで広げても【1-1-2-23】複勝率14.8%にとどまる。札幌記念では2014年ホエールキャプチャの3着があるものの、同馬はオークスで勝ち馬エリンコートとタイム差なしの3着に入っており、同じマイルGⅠ勝ち馬とはいえソダシとはタイプが違う。

さらに前走6着以下に限ると【0-0-2-22】で複勝率1割を下回り、4歳以下の馬では【0-0-0-17】と好走例がない。2番人気以内に推されることがほぼ確実なソダシにとっては嫌なデータで、消して勝負する絶好のタイミングといえる。

札幌芝2000m・過去5年の騎手別成績,ⒸSPAIA


<札幌芝2000m・過去5年の騎手別成績>
ルメール【21-16-10-28】勝率28.0%/連対率49.3%/複勝率62.7%
横山武史【6-5-5-38】勝率11.1%/連対率20.4%/複勝率29.6%
藤岡佑介【5-9-1-36】勝率9.8%/連対率27.5%/複勝率29.4%
吉田隼人【3-3-3-33】勝率7.1%/連対率14.3%/複勝率21.4%

最多の21勝を挙げているのはルメール騎手。2位のモレイラ騎手(7勝)にトリプルスコアをつける独走で、単勝回収率104%・複勝回収率97%は相性の良さを裏付けている。前走重賞組が【2-2-1-2】で複勝率7割超えかつ掲示板を外しておらず、前走クイーンS3着のサトノセシルは確実に買っておきたい。

若武者横山武史騎手は3位の6勝を挙げる活躍。7・8枠では【0-0-0-15】と好走例がないものの、6枠より内では【6-5-5-23】複勝率4割超え。先週日曜の札幌で【6-1-0-2】と圧巻の固め打ちを披露しただけに、ペルシアンナイトにも力を与えてくれそうだ。その他ユーキャンスマイルに騎乗する藤岡佑介騎手も3割近い複勝率をキープしている。

ソダシのデビュー以来手綱を取り続ける吉田隼人騎手は全体成績こそ悪くないものの、前走6着以下の馬では【1-0-1-18】複勝率10.0%と数字が落ちる。前走から距離短縮となるケースでは好走例がなく、やはり全幅の信頼は置きづらい。


新潟芝1600mコースデータ,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。


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