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女子ゴルフ界のシューズ「NN戦争」王者ナイキを稲見萌寧も使うニューバランスが猛追

2022 3/26 06:00森伊知郎
稲見萌寧,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

シード権獲得選手の約半数がナイキ

開幕からこれまで3試合が行われた2022年の日本女子ゴルフツアーは優勝者が西郷真央、サイ・ペイインと堀琴音という顔ぶれになった。3人の“足元”を注目してみると、開幕戦でうれしいツアー初優勝を飾った西郷はニューバランス、サイはナイキで堀はフットジョイと、女子ゴルフ界の「3強」ともいえるメーカーがきれいに揃った形となった。

ひと昔前までは、プロが履くシューズというとクラブ契約するメーカーのモノを使うのが一般的だった。ブリヂストンスポーツ、ミズノとキャロウェイはそのままのブランドでシューズを展開。

タイトリスト(アクシネット)は米男子のPGAツアーで圧倒的な使用率を誇る「フットジョイ」ブランドを持ち、ダンロップ(住友ゴム)はシューズ部門はアシックスと提携。テーラーメイドはかつてアディダスが親会社だったので、契約選手はほぼアディダスを履いていた。

コブラを使う選手は、やはり親会社のプーマを履く。現在ではブライソン・デシャンボーやリッキー・ファウラーがこのパターンだ。

これが大きく変化したのはここ5年ほど。そのきっかけはナイキがゴルフのクラブ部門から撤退したことだった。それまでナイキの契約はシューズだけでなくウエアやキャディーバッグ、クラブまで含めた総合契約をすることが基本だった。

だがプロゴルファーにとってクラブの契約を変えるのは勇気のいること。どんなにいいと言われているモノでも感覚が合わなければゴルフがボロボロになってしまうリスクもある。さらに契約や、長年お世話になっているメーカーとの関係などから簡単には変えられないケースが多いものだ。

それがクラブ事業から撤退したことで一気に使用する“ハードル”が低くなった。これによってシューズのみでの契約、あるいは提供という形で使用選手は激増し、2021~22年シーズンは全試合で使用率が1位。優勝数も「11」でトップ。

シード権(昨シーズンは賞金ランク上位50人)を獲得した選手の約半数がナイキを使用と、圧巻のデータを誇っている。渋野日向子と笹生優花の二人も海外メジャーを制した時はナイキのシューズを履いていた。

ニューバランスは今季大幅増の20人前後

まさに「王様」といえる世界最大のスポーツメーカーのナイキを猛追しているのがニューバランスだ。

同社の「顔」といえば賞金女王で東京五輪銀メダリストでもある稲見萌寧。一人で9勝を挙げる大活躍もあって、年間の勝利数ではナイキに「1」に迫るトータル10勝を挙げた。試合ごとの使用者数も、今シーズンは大幅に増えて20人前後が使用している。

昨シーズンの勝利数がニューバランスと並んで「10」を数えたのが北欧デンマークのシューズメーカー「エコー」だった。稲見、古江彩佳と賞金女王争いをした小祝さくら(5勝)と、申ジエ(4勝)の二人の実力者で勝利数を稼いだ形だ。

大会毎の使用者数は、選手が変わるとそれぞれの人数も変わってくるので昨シーズンの勝利数のランクで見ると、西村優菜らが使うキャロウェイ。古江彩佳らが使うブリヂストンスポーツと続き、その次には4勝でアディダスが入った。

アディダスは傘下だったテーラーメイドを2017年に売却。その影響で一時は使用するプロも減る形になった。それが近年は渋野、畑岡奈紗の二人と相次いで契約。昨シーズンは渋野が終盤に2勝。畑岡も米ツアーで2勝を挙げている。

女子プロの足元にも注目!

「お洒落は足元から」とは、よく聞く言葉。ゴルフだけでなく日常のシーンでも足元(=シューズ)は意外と見られているものだ。いくら高級な服で着飾っても、靴がボロボロでは見ていておかしいのは想像がつくだろう。

最新のドライバーを買ってもコースで使うのは概ねパー3を除く14回で、スイングしている時間は合計1分にも満たないぐらいだ。対してシューズは一日中履いている。

また、ドライバーを複数所有するのは金銭的な面からもあまり現実的ではないが、シューズを二足持つのはお勧めだ。ラウンドや練習の頻度が高い人は交互に履くことで長持ちになるだけでなく、カラーを白ベースと濃い色のベース。あるいはスニーカータイプと革靴タイプというように異なるデザインを所有すると、それに合わせてどんな服装をしていこうかと考える楽しみも増える。

草野球でも試合に出るとなるとチームで決められたユニフォームを着る必要がある。ゴルフはスポーツでは珍しく自分の好きなウエアを着てプレーすることができるのだから、シューズと合わせたコーディネートも楽しみたい。

間もなく春のゴルフシーズン。女子プロたちがどんなシューズを履いているのかをチェックしつつ、自分の足元にも気を使ってみてはいかがだろう。

《ライタープロフィール》
森伊知郎(もり・いちろう)横浜市出身。1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社でゴルフ、ボクシング、サッカーやバスケットボールなどを担当。ゴルフではTPI(Titleist Performance Institute)ゴルフ レベル2の資格も持つ。

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