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渋野日向子が米女子ゴルフで狙ってほしい賞金100万ドルのビッグタイトルとは?

2022 3/8 11:00森伊知郎
渋野日向子,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

LPGAツアーメンバー初戦は47位

渋野日向子が米LPGAツアーのメンバーになってからの初戦となった先週の「HSBC女子世界選手権」は通算1アンダーの47位だった。

「悔いの残る初戦だった」と本人が語ったのと同様にファンにとっては物足りない順位だったかもしれないが、最終日の後半は4バーディー、ノーボギーで回るなどして68でフィニッシュ。初出場だった昨年は4ラウンドすべてオーバーパーで、通算11オーバー。出場69人中の67位だったことと比べると成長した姿を見せられたといっていだろう。

休む間もなく今週はタイでの「ホンダLPGA」に出場。その後1週間のインターバルを挟んでいよいよ米本土に渡り、「JTBCクラシック」(24~27日、カリフォルニア州カールスバッド)と、翌週のメジャー「シェブロン選手権」(31日~4月3日、カリフォルニア州ランチョミラージュ)にエントリーしている。

賞金100万ドルの「AON RISK REWARD CHALLENGE」

ファンが渋野に期待するのは、2019年の「全英女子オープン」以来のメジャー2勝目。あるいはルーキー・オブ・ザ・イヤー(最優秀新人賞)といったところだろう。私ももちろん同じ。そして個人的にはぜひとも狙ってほしいタイトルがある。

それは、保険会社の「AON」(エーオン)がスポンサーとなって米国の男女両方のツアーで実施されている「AON RISK REWARD CHALLENGE」のタイトルだ。

これは、大会毎にリスクを恐れずに果敢に攻めて、それに成功すれば好結果が期待できるホールがひとつ指定される。そして3日間あるいは4日間の大会でのいいスコアふたつがその選手の対象スコアとして集計される。

AON社と各大会を放送するCBSスポーツまたはゴルフチャンネルが協議して決める対象ホールはパー4のこともあればパー5のこともあるので、スコアはパーに対しての数字(アンダーかオーバーか)で集計。男女それぞれ、シーズンで最もいい成績を残した選手には賞金100万ドル(約1億1500万円)がAONから贈られる。

アグレッシブに攻めるプレーを評価

ちなみに先週の「HSBC」では13番パー5が対象ホールだった。渋野は4日間でパーが3つとボギーがひとつ。いい方のスコアふたつが集計されるため、大会でのスコアは「イーブン」となる。

この集計システムのいいところは、例え果敢に攻めて失敗してダブルボギーなどを叩いても、残る3日間でイーグルやバーディーを奪えばそちらのいいスコアふたつのみが対象となるので、失敗したスコアが“帳消し”になることだ。

また予選落ちしてしまっても、仮にその2日間ともにバーディーならば「2アンダー」の記録が残るので、成績が振るわなくてもこの部門では上位を狙うチャンスはある。

渋野の「ハイリスク、ハイリターン」での成功例といえば、優勝した2019年「全英女子オープン」最終日の12番パー4だろう。距離的にはワンオンが可能とはいえ、右サイドには池が広がるレイアウト。それでも「行くしかない。ドライバーを打たないと後悔する」と迷うことなくドライバーを振りぬくと、池をぎりぎりで越えて見事にグリーンオンさせた。

イーグルにはできなかったものの、メジャー最終日のバックナインでの勇気あるプレーで奪ったバーディーで勢いを付けたことが大快挙につながったといえる。

日本人のイメージからすると「ハイリスク、ハイリターン」を嫌いそうな業種の保険会社がスポンサーになっているぐらい、アメリカ人はリスクを恐れずに勇気を持ってアグレッシブに攻めるプレーや心意気を評価する。それだけに渋野には成績での結果を残すとともに、このタイトルを狙うぐらいの心意気で印象に残るゴルファーとして活躍してほしい。

今週の「ホンダLPGA」は15番パー4が対象

今後の対象ホールを見てみると、まず今週の「ホンダLPGA」では15番のパー4となっている。ティーイングエリアが日によって変更され、265ヤードから320ヤードの間でプレーすることになるこのホールはフェアウェーを池が横切っている。距離の設定によってワンオンを狙うか安全に池の手前に刻むかの選択を迫られるホールでは2007年から昨年までに39個のイーグルが出ている。

2019年大会は4日間で133個のバーディーが出て、平均スコアは「3.56」だった。大まかに言うと二人に一人はバーディーを奪っていることになるホールで渋野が果敢に攻める姿を見てみたいものだ。

舞台を米本土に移しての「JTBCクラシック」でもパー4のホール(16番)が対象となる。ここは285ヤードか375ヤードでプレーすることになる予定。短い設定となった場合は、グリーン左に大きく池が広がるレイアウトで果敢にワンオンを狙うのかの選択を迫られる。

安全策で刻む場合や、後ろのティーイングエリアが使われる日は2打目でグリーンを狙うことになるが、奥行きがたっぷりあるグリーンに対して正確なウェッジショットが打てないと3パットの可能性が出てきてパーセーブも怪しくなる。このホールの平均スコアはもちろん「4」を切っているが、一方では毎日平均で7人の選手が3パット以上をしているという。

メジャー初戦「シェブロン選手権」で歴史に名を刻むか

そして、その翌週は今シーズンメジャー初戦の「シェブロン選手権」。昨年までは「ANAインスピレーション」あるいは「クラフトナビスコ選手権」の名称で開催されていた大会は、優勝者が飛び込むことでおなじみの「ポピーズ・ポンド」がグリーンを取り囲む18番パー5が名物だが、対象ホールとなったのは11番のパー5だ。

536ヤードのホールに池はないものの、2打目でグリーンを狙いやすくするためにはティーショットで右サイドの木を超えるか、避けて距離を稼ぐことが求められる。

過去5年では、実に45%の選手がこのホールでバーディーかそれよりいいスコアを記録しており、平均スコアは「4.65」だった。ただし優勝者に限定すると「4.45」となり、4日間で考えると1ストローク近く違っており、このホールでいかに伸ばすかが勝利へのカギとなっていることがわかる。

1972年に始まった大会は、男子の「マスターズ」とともに一貫して同じコースで開催され続けていた。それが石油大手で「スーパーメジャー」とも呼ばれるシェブロン社がタイトルスポンサーになったことで、来年以降は同社の一大拠点でもあるテキサス州での開催に変更されることが決まっており、ミッションヒルズ・カントリークラブでは今年が最後となる。

ポピーズ・ポンドに勝利のダイブをした最後の選手となればツアーの歴史にもファンの記憶にも名前が残る。11番でバーディーやイーグルを奪うことが「AON RISK REWARD CHALLENGE」とメジャーのタイトルに近づくこともなるので、ぜひとも果敢に攻めてほしい。

《ライタープロフィール》
森伊知郎(もり・いちろう)横浜市出身。1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社でゴルフ、ボクシング、サッカーやバスケットボールなどを担当。ゴルフではTPI(Titleist Performance Institute)ゴルフ レベル2の資格も持つ。

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