上りよりも下りが難しいパット
パットは同じ距離の場合、上りよりも下りのパットの方が難しい。下りのパットは弱く打つため初速が遅く、その分スライスやフックなどの傾斜の影響を受けやすい。曲がり幅が大きくなりやすいため、難しくなるのだ。
さらに、上りの場合はカップの奥の縁が受けているため、多少強くてもカップのカップインすることがあるが、下りの場合、上りに比べると奥の縁が受けていないため、少しでも強いと入りにくくなる。また、カップの内側、左右ギリギリにボールが転がった場合も、上りに比べて下りの方がカップの縁をクルリと回ってカップイン、とはなりにくかったりする。
これは一般のゴルファーに限らずツアー選手も同じだ。下記は米ツアーで公式採用されているSG(ストローク・ゲインド)指標の生みの親であるマーク・ブローディ著「ゴルフデータ革命」に掲載されているパッティングデータ。ショートパットの1パット確率が下りの方が低く、ロングパットの3パット確率が下りの方が高いことがわかる。
打つ前の素振りでテンポを定め、構えたらストロークに集中
下りのパットでは「強く打ってはいけない」「強く打ってしまうと、大きくオーバーしてしまう」というプレッシャーから、インパクトでゆるみが出てしまうことがある。ゆるむと、弱くなり過ぎて距離が全然合わなかったり、フェースの向きが乱れてラインに乗りにくくなってしまう。
また「ゆるまない」ということは、インパクトを意識せずにストロークすること。インパクトの加減だけで調整しようとすると、ゆるみやすくなる。
コースラウンドでは、まずは打つ前の素振りで、振り幅とリズムやテンポを定める。そして、構えたら、素振りで定めたストロークをすることに集中したい。ショットでは「インパクトは通過点」と言われたりする。インパクトではなくフォロースルーやフィニッシュを意識してスイングするべき、という意味だがこれはパットも同じだ。
東京よみうりカントリークラブの名物ホール
昨年12月2日から5日に開催された男子ツアーの最終戦、日本シリーズJTカップは今年も東京よみうりカントリークラブで開催された。その東京よみうりの名物ホールが18番ホールのパー3。18番ホールがパー3というだけでも珍しいが、そのグリーンの傾斜が特徴的で、奥から手前に向かって急激に下っているのだ。
ここで下りのパットを残したくない選手達は、極力ピンをオーバーしないようティーショットを打つ。グリーンに乗らなかった場合は、上りのパットを残すようにアプローチする。
このホールの難しさを表すシーンとして思い出されるのが、2018年大会の最終日最終組、堀川未来夢のプレーだ。入ればプレーオフという約2メートルの下りのパーパット。触る程度のヒットで大きくオーバーし、返りも入らないままダブルボギーで終戦となった。このように、ツアー選手でもショートパットで3パットする場合がある。それが下りのパットの怖さだ。
不安に打ち勝ちゆるみのないストロークを
グリーンの速さはコースによって異なり、速くなるほど距離を合わせることが難しくなる。速いグリーンで下りのパットは非常に困難だが、インパクトでゆるめることなくストロークしたい。
オーバーする不安に打ち勝ち、安定してゆるみのないストロークができれば、下りのパットでも距離感が合い、ラインに乗る確率も上がるはずだ。
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