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渋野日向子、米ツアー最終予選で見せた爆発力と勝負勘の可能性

2021 12/16 06:00田村崇仁
渋野日向子,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

目標の「20位以内」でぎりぎり突破

12月2日から4日間、9日から4日間の計8日間144ホールに及んだ長丁場。悪戦苦闘の日々を乗り越え、23歳の渋野日向子が「合格」を勝ち取った。

米女子ゴルフツアーの最終予選会(Qシリーズ)は12月12日、米アラバマ州ドーサンのハイランドオークスGC(パー72)で最終の第8ラウンドが行われ、日本勢では古江彩佳が7位、渋野日向子は20位に入り、45位までに与えられる来季出場資格を得た。

前日の第7ラウンドで79をたたいて7位から29位に後退した渋野は、5バーディー、2ボギーの69で10アンダーに伸ばし、20位に挽回。45位までが「合格」だが、一定以上の大会出場を見込める20位以内にぎりぎり滑り込めた価値は大きい。

重圧の中で弱気だったパットも決まり、8番(パー4)からの5ホールで4バーディーを奪って流れを引き寄せた。この辺りも「何か持っている選手」の違いを見せたと言えるかもしれない。

シブコスマイルと逆境での真骨頂の強さ

渋野は自身のインスタで念願のツアーカードを持った写真を公開し「今年もたくさんの応援、ありがとうございました」と満面の「シブコスマイル」で感謝を表現。山あり谷ありの戦いを繰り広げたコースをバックにチームのメンバーとともに、左手で親指を立てるサムアップポーズも決めた。

今年のQシリーズは世界ランキング75位以内や2次予選会(Qスクール)を通過した選手ら110人が出場。渋野は最終予選会の第1ラウンドで81位と出遅れ、第2ラウンドも伸ばせず72位。しかし、予選敗退もちらついた第3ラウンドで66と伸ばして通算4アンダーで25位に浮上すると、前半の1週目は24位で「第一関門」を通過した。

コースの難易度が上がった後半はスイングのリズムと勢いを取り戻し、第6ラウンドを終えて14アンダーの7位まで上昇。ところが一転して第7ラウンドでは2度のダブルボギーをたたくなど79と崩れて29位に後退する危機もあった。

それでも逆境に立てば立つほど、真骨頂の強さを発揮できるのが渋野の最大の魅力ともいえる。悪循環にはまるとメンタルをコントロールできなくなる面も垣間見られるが、開き直った時の勝負勘は最終予選でも随所に発揮された。

最終予選の枠は上から14番目

渋野は2019年のAIG全英女子オープン優勝で得た米ツアーのメンバー入りの権利を、当時は行使しなかった。あえてもう1年は日本で経験を積む道を選んだが、コロナ禍で2020年末の予選会が延期となるなど逆風も経験。コーチと離れ、自ら考えてスイング改造にも取り組んだ。

少し遠回りしてつかんだ米ツアーの出場資格。来季の米ツアーは1月後半から11月後半まで34戦の予定だ。「黄金世代」を引っ張る畑岡奈紗の背中を追えることも心強いだろう。

ただ渋野は最終予選で「20位以内」に入ったことでより多くの試合に出場できるが、すべての試合に出場できるわけではない。米ツアー出場有資格者のカテゴリーには①前年の賞金ランキング上位80人②生涯獲得賞金上位20人③過去2年間のツアー優勝者など各項目があり、最終予選の枠は上から14番目。米ツアーは1試合で120~150人程度が出場し、どの試合に出場可能かは流動的な部分も残されている。

一方で渋野は「全英」優勝の資格で、来年もメジャー5試合の出場権は既に持っている。目標はツアー勝利とシード権の獲得。筋力強化でドライバーの飛距離を伸ばし、ウエッジ4本を投入して100ヤード以内の精度も高めてきた。

これも米ツアーでの厳しい戦いを見据え、本格的に準備してきたものだ。最大の強みは爆発力と勝負勘。まだまだ伸びしろもある。渋野は逆境に耐える覚悟も持ち、新天地での飛躍を期している。

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