交流戦前と交流戦の結果が対照的な5選手
今年の交流戦はセ・リーグ首位を走っていた広島が5勝12敗1分で12球団最下位に低迷し、パ・リーグ最下位のオリックスが11勝6敗1分で2位と健闘するなど、意外な結果となった。選手個人で見ても、交流戦前と交流戦での成績が対照的な選手がおり、それがデータにも顕著に表れている。
ここでは交流戦前は好調だったのに、交流戦で調子を落とした巨人・坂本勇人、広島・鈴木誠也、DeNA・筒香嘉智、逆に調子を上げたオリックス・中川圭太、ソフトバンク・松田宣浩を取り上げる。
ボール球に手を出した坂本勇人
巨人・坂本は交流戦までにリーグトップの19本塁打、41打点をマーク。打率.340も同3位と三冠王さえ狙える好調ぶりで、「シーズン53発ペース」などと報じられていた。だが、交流戦に入ると別人のようにバットが湿る。71打数13安打、2本塁打、7打点で規定打席到達者70人中65位の打率.183と大不振に陥った。
最も顕著に表れているのが打球方向。交流戦前はセンター返し、もしくは左方向へ引っ張る打球で計8割近かったのに、交流戦では右方向への打球が38.1%で最も多かった。
さらにボールゾーンのスイング率は交流戦前の16.8%から27.3%と10ポイント以上はね上がっており、ボール球を打たされていたことが分かる。

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普段対戦することのないパ・リーグの投手の球筋や攻め方に苦しんだことがよく分かるデータだ。
得意の外角球を打てなかった鈴木誠也
広島の鈴木誠也も苦しんだ。交流戦前まで打率.343、15本塁打をマークしていたが、交流戦では63打数15安打で打率.238、3本塁打、10打点と低迷。4番の不振とともにチーム成績も下降線を辿り、交流戦最下位に沈んだ。

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ストライクゾーンを9分割して比較してみると、交流戦前は真ん中から外寄りのボールに強いことが分かるが、交流戦では極端に捉えられていない。ど真ん中が打率.406→.188、打率.667をマークしていた外角高めの球は1安打も打てなかった。
ボールを見すぎた筒香
交流戦まで打率3割をキープしていたDeNAの筒香も、交流戦は54打数11安打で打率.204、3本塁打、4打点とスランプだった。ただ、出塁率は.368と悪くない。これはリーグ2位の14四球を選んだことが大きく影響しているが、裏を返せばボール球に手を出さなかった分、ストライクゾーンの球も打ち損じたと言える。

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実際にボールゾーンのスイング率は交流戦前の21.5%から16.1%に良化しているものの、ストライクゾーンのスイング率は65.1%から57.4%と7.7ポイントも低下。交流戦の三振数はヤクルト・村上の29個、巨人・坂本の28個に次ぐワースト3位の27個を喫しており、ボールを見すぎたと言えるだろう。
苦手のスライダーを克服した中川
逆に交流戦で調子を上げたのがオリックスの中川だ。廃部になった大阪・PL学園出身で「最後のPL戦士」と呼ばれる右の巧打者。交流戦前まで打率.274だったが、交流戦では70打数27安打で打率.386をマークし、見事に首位打者となった。

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好調の要因は「スライダー打ち」にあった。元々、ストレートに対しては強く、打率.311だったが、スライダーに対しては22打数1安打と極端に弱かった。それが交流戦ではスライダーに対して13打数7安打の打率.538をマークしたことが、そのまま首位打者につながったと言える。
ボールを見極めた松田
優勝したソフトバンクの松田も交流戦で好調だった一人。交流戦前は打率.274だったが、交流戦では66打数23安打の打率.348、7本塁打、14打点をマークした。

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積極的な打者というイメージ通り、交流戦までは第一ストライクのスイング率が87.9%と「好球必打」を実践していたが、交流戦ではなんと50.8%にまで低下。セ・リーグの投手の攻め方を研究したおかげか、じっくりボールを見極めることで好成績をあげた。
データ提供:共同通信デジタル