秋吉の離脱で巡ってきたチャンス
昨季は19セーブ及び18ホールドを挙げ、日本ハムのクローザーとして一躍ブレイクを果たした石川直也。絶対的な守護神の地位確立に向け、さらなる飛躍が期待された今季だったが、開幕直後の4月5日に2軍に降格。昨オフに、ヤクルトとの交換トレードで加入した秋吉亮が4月中旬からクローザーを務めた。
しかし、5月1日に再び1軍に昇格すると、セットアッパーとして安定感のある投球を披露。宮西尚生らと鉄壁のリリーフ陣を形成し、ここまで12ホールドを挙げる活躍を見せている。その一方で、クローザー志望であることを常々公言してきた石川。以前も「出てきたら、相手が諦めてしまうぐらいの存在感のあるクローザーになりたい」と胸の内を語っていた。
そんな石川に再びチャンスが巡ってきた。クローザーとしてチームを支え、ここまで12セーブを挙げていた秋吉亮が右足内側広筋および内転筋の肉離れと診断され、6月11日に1軍登録を抹消されたのだ。
本拠地・札幌ドームで行われた同日の広島戦では、1点リード、9回表のマウンドに上がると、3者凡退に抑えてチームを勝利に導いた。クローザーとして久々の登板も、堂々たる投球で広島打線に付け入る隙を与えなかった。
高身長を生かした直球とフォークが武器
石川といえば、191cm・94kgの恵まれた体格で真上から振り下ろす角度ある直球と、切れ味が鋭く落差のあるフォークが武器。今季は最速153km(昨季は156km)をマークしており、フォークも140km前後と速い。150km台の直球と140km前後のフォークをコンスタントに投げる上に投げっぷりも良く、三振もとれる。まさに、クローザー向きの投手といえる。
球種配分を見ると、昨季は直球が約61%、フォークが約28%、カーブが約9%とほとんどが直球とフォーク。今季も直球が約57%、フォークが約34%、カーブが約9%と球種配分の傾向はほぼ変わらない。また、フォークの被打率は昨季が.135、今季は.125。いかに打者がフォークを打ちあぐねているかが分かる。
6月19日のDeNA戦では大和にサヨナラ二塁打を浴びた場面があったが、打たれたのはカーブ。直球とフォークのコンビネーションで打者をねじ伏せるのが、己のスタイルであることを改めて痛感した瞬間だったのではないだろうか。
石川の投げっぷりの良さへの称賛やクローザーとしての資質に注目するファンは多く、「躍動感凄いよな!150kmのストレートに落差あるフォークボール!セーブ王期待してます」「高身長からの投げ下ろしの迫力は凄まじいものがありますよね」「2017に初めて見た時から次期守護神を確信してたけど、1年でこんなに雰囲気出せるようになるのはすごいと思う」「背の高さを目一杯活かしたフォームが好き」といった声がSNSに寄せられている。
クローザーの地位確立へ
日本ハムは現在、35勝33敗でリーグ4位。この数字だけを見れば悪くはないが、交流戦終盤のDeNA戦は1勝2敗と負け越し、中日戦では3連敗を喫するなどチーム状態はあまり良くない。
パ・リーグは7ゲーム差の中に6チームがひしめいており、後半戦にどのチームが抜け出してもおかしくない状況だ。そして、どのチームにとっても、盤石のリリーフ陣を形成・維持できるかが安定して白星を積み重ねていくための最低条件とも言える。
2017年、前半戦を快走していた楽天とソフトバンクだったが、最終的に楽天は首位争いから大きく後退し、ソフトバンクがリーグ優勝を飾った。この時のことを元中日監督の落合博満氏は「最後まで安定していたサファテと途中で離脱した松井裕樹の差」とし、守護神の差が明暗を分けたと語っていた。
日本ハムが後半戦で巻き返すためには、石川が昨季つかみかけたクローザーの地位を確立するぐらいの働きを見せることが必要不可欠だ。
※成績は2019年6月25日終了時点