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巨人・戸郷翔征の成長示すデータ、飛び抜けた武器なくても安定感抜群の理由

2022 7/14 06:00SPAIA編集部
巨人の戸郷翔征
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ⒸSPAIA

133球の力投でプロ初完封

巨人・戸郷翔征が12日の阪神戦(甲子園)でプロ初完封勝利を挙げた。阪神打線に8安打を喫しながらも要所を締めて、阪神・青柳晃洋に並ぶリーグトップの9勝目。負ければ借金生活に突入する状況、しかも暑い夏場の9連戦初戦で、133球の力投はリリーフ陣を休ませる上でも大きな価値があった。

聖心ウルスラ高からドラフト6位で入団して4年目。2020年、21年と2年連続9勝をマークしたが、2桁には届かなかった。防御率2.76だった2020年、4.27だった21年と比べると、今季はここまで2.64と過去2年より良化している。今の安定感なら2桁勝利は時間の問題と言っても過言ではないだろう。

スリークォーターから投げ込むストレートは平均146.4キロとずば抜けて速いわけではない。それでも被打率は.218と低く、同じく被打率.197と低いフォークとの2つの球種だけで、投球全体の4分の3を占めている。スライダーも全体の15.3%を占めているが、被打率は.407と高い。やはりストレートとフォークのコンビネーションが生命線だ。

他球団のエース級と比べても飛び抜けた数値はない。奪三振数は84でリーグ3位だが、投球回数が多いこともあり、奪三振率(K/9)で見れば7.39で、規定投球回に達している10人中4位。真ん中より少し上という程度だ。

逆に与四球32はリーグワースト2位。与四球率(BB/9)は2.81で10人中9位なのだ。メジャーリーグで重視される奪三振と与四球の比率を表す指標「K/BB」は2.63でリーグ8位。6.14でトップの青柳晃洋と比べると、褒められた数字ではない。

ほかにも、1イニングあたりに何人の出塁を許したかを表す指標「WHIP」も1.17でリーグ7位など、リーグトップの9勝を挙げている投手としては物足りない数値が多い。

リーグトップのQS13回

そんな戸郷がリーグトップの指標がある。先発して6回以上を自責点3以下に抑えたことを示すクオリティースタート(QS)だ。登板15試合中13回でQSを記録しており、青柳晃洋と広島・森下暢仁の12回を上回っている。12日の阪神戦がそうだったように、相手打者が手も足も出ないわけではないが「要所を締める投球」を続けているのだ。

2021年は26試合登板でQS13回(QS率50%)、2020年は19試合登板でQS10回(QS率55.6%)だったから、QS率86.7%の今季は、いかに粘り強く投げられているかが分かるだろう。

ストライクゾーンを9分割したコース別の被打率は下の通りとなっている。

戸郷翔征のゾーン別データ


投球割合の15%以上を示す赤色は右打者の外角低めと、左打者の内外角低めの3つ。右打者の外角低めは全体の32.6%を占め、被打率.175と低い。左打者の内外角低めはいずれも17.1%で、外角低めは被打率.295と高いが、内角低めは.136と低い。

逆に投球割合が7%未満のコースはど真ん中を含めて左右打者合計で6つ。右打者のど真ん中は6.3%に過ぎないが、被打率は.353と高く、左打者も同様に被打率.370と高い。全体的に見るとコントロールミスは少ないものの、失投すると高い確率で打たれていることが分かる。

つまりストレートとフォークを中心に低めを丁寧につき、ボール球を見極められた場合は四球になっているということだろう。だから与四球率は高いが、バッタバッタと三振を取るタイプでない戸郷の場合は、それほど気にしなくていいのかも知れない。

今季年俸4000万円、コスパも抜群

加えて、数値には表れないメンタル面の成長もあるだろう。桑田真澄コーチからアドバイスを受けながら粘り強さを身に付け、完封したという事実によってさらに自信を深めるはずだ。

2018年ドラフトの同期組は中日・根尾昂、ロッテ・藤原恭大、巨人・横川凱、日本ハム・柿木蓮の大阪桐蔭勢を始め、金足農出身の日本ハム・吉田輝星や報徳学園出身の広島・小園海斗ら高校時代に甲子園を沸かせたスター候補が多い。

2年生だった2017年夏に甲子園に出場したとはいえ、中央球界で目立つ存在ではなかった戸郷。今季の推定年俸は4000万円で、菅野智之や坂本勇人の1割にも満たない。決して飛び抜けた武器を持たない右腕が、地道な努力を重ねて「球界の盟主」を支える現状は、多くのファンの親近感を呼び、夢を与えるに違いない。

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