芯を外して打ち取る球種
ストレートの軌道から打者の手元でわずかに変化させるカットボールは、バットの芯を外して打ち取るのに効果的な球種だ。内野ゴロを打たせる確率が上がるため、球数を減らす上で最適。先発投手にとっては持っておきたい球種の一つと言えるだろう。
今回は規定投球回数に到達した12球団の先発投手を対象に、カットボールの被打率をランキング形式で紹介し、投手によってどのような特徴があるのか考察していく。
ストレートの軌道から打者の手元でわずかに変化させるカットボールは、バットの芯を外して打ち取るのに効果的な球種だ。内野ゴロを打たせる確率が上がるため、球数を減らす上で最適。先発投手にとっては持っておきたい球種の一つと言えるだろう。
今回は規定投球回数に到達した12球団の先発投手を対象に、カットボールの被打率をランキング形式で紹介し、投手によってどのような特徴があるのか考察していく。
1位に輝いたのは、最優秀防御率と最多奪三振のタイトルを獲得した柳裕也。カットボールの被打率は圧巻の.203で、奪空振り率も17.4%と高い。また、投球割合の21.7%を占めるなど多投しており、柳にとって生命線とも言える球種だ。今季もカットボールを武器に、中日の先発投手陣の柱として活躍が期待される。
2位には、オリックスの田嶋大樹(.219)と日本ハムの加藤貴之(.219)という両左腕が同率で並んだ。田嶋のカットボールは奪空振り率が16.4%と高いが、加藤は6.9%と低く、同じカットボールでもそれぞれの特長が出ている。
4位は日本ハムのエース・上沢直之(.220)。ストレートの平均球速が145.7kmで、カットボールが140.5kmと、球速差が5km程度しかないのが特長だ。もともとストレートとの球速差があまりない球種だが、8~10km程度の差がある投手が多い中、5kmの球速差は小さく、打者も戸惑いやすいはずだ。
カットボールの投球割合が特に多い投手が、5位にランクインした広島の大瀬良大地。カットボール以外にも、スライダーやフォーク、カーブ、ツーシームなど、多彩な変化球を操る大瀬良だが、カットボールの割合はダントツの32.5%を占め、ストレート(33.5%)とほぼ同じ割合だった。
芯を外して内野ゴロを打たせる意味合いの強いカットボールだが、大瀬良の場合は奪三振の46.1%がカットボールによるもの。つまり、打たせるだけでなく空振りのとれるカットボールとも言える。これだけ多投している上での被打率.223は、立派な数字だ。
カットボールの平均球速に目を向けると、ダントツで速いのがオリックスの山本由伸がマークした147.7km。被打率が.267のため今回のランキング外ではあったが、高速カットボールと言えば山本の代名詞の一つでもある。9位にランクインした楽天の則本昴大も143.6kmと速い方ではあるが、同球種の投球割合は6.4%と少ない。フォークとスライダーを軸にして三振を奪っていくタイプで、則本にとってカットボールは“見せ球”の意味合いが強いようだ。
ランキングに入った投手以外にも、広島の森下暢仁や日本ハムの伊藤大海、ロッテの小島和哉、西武の松本航ら規定投球回数に到達している先発投手の多くが、カットボールを織り交ぜて投球を組み立てている。
打者を打ち取ることはもちろん、先発投手として重要な投球の幅を広げられる上、球数を減らし、故障を回避するという観点からも有意義なカットボール。軌道的に多くの空振りを奪うような球種ではないため地味な印象はあるが、カットボールを投じるタイミングを意識しながら見ると、投球術をより一層楽しめるはずだ。
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