斉藤和巳以来の投手5冠でパMVP
2021年のパ・リーグMVPに輝いた山本由伸。最多勝(18)、最優秀防御率(1.39)、最高勝率(.783)、最多奪三振(206)、最多完封(4)の投手5冠は、2006年の斉藤和巳(ソフトバンク)以来、15年ぶりの記録だ。
球団新記録の15連勝を達成し、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞、沢村賞とタイトルを総なめ。チームを25年ぶりの優勝へと導くなど、文句のつけようのない成績でパ・リーグMVPの栄誉に輝いた。
タイトル以外の数字を見ても、QS率(88.5%)、被打率(.182)、K/BB(5.15)、WHIP(0.85)全てでリーグトップの数字をマーク。東京五輪でもエースとして金メダル獲得に貢献し、日本のエースへと成長を遂げた山本だが、最も得意・苦手とした相手は誰だったのか。昨シーズンの対戦成績から探っていこう。
日本シリーズ4連覇中の王者ソフトバンクを圧倒
昨シーズンの山本は、ソフトバンクを相手に無類の強さを誇った。7試合、55.1回を投げて6勝1敗、防御率0.98、57奪三振を記録。WHIPも0.76と完全に封じ込め、前年まで日本シリーズ4連覇中だったライバルを圧倒した。4試合、32回を投げた楽天戦では、3勝0敗、防御率0.84、27奪三振と、こちらも圧倒していた。
いずれも最多の8試合、58.1回を投げた西武戦では、5勝2敗、防御率1.54、60奪三振と好投。日本ハム戦では2試合、13回で0勝1敗、防御率2.08、15奪三振という成績を残した。
優勝を争ったロッテ戦では、2試合、13回を投げて1勝1敗、防御率3.46、14奪三振。防御率3点台、WHIP1.0超えはパ・リーグではロッテのみ。5月19日の試合では6回6失点(自責4)と、昨シーズン最多失点を喫した。とはいえ「比較的」打たれているというだけで、充分先発投手の役割は果たしている数字だ。
対セ・リーグでは、ヤクルト戦で7回2失点、中日戦で7回1失点、広島線で8回無失点と好投し、いずれも勝利。広島にいたっては2安打、15奪三振に封じるなど、圧巻の投球を見せた。
昨シーズンの山本はロッテに「やや」打たれたくらいで、苦手と言えるほど打たれたチームはなかったと言える。
前年MVP柳田悠岐を20打数1安打に封じる
続いて打者ごとの成績を見て行こう。山本と10打席以上対戦した打者は25人。そのほとんどを打率3割未満に抑えており、半数を超える13人が2割にすら届かなかった。
そのうち10人を打率1割未満、2人を無安打に抑え込むなど、圧倒的なピッチングを見せた。通常は対戦機会が多いほど打者が有利になっていくものだが、山本にとっては関係なかったようだ。
3割以上打たれたのはわずか2人で、最も苦手としたのは山﨑剛(楽天)だった。10打席対戦し、打率.500(10打数5安打)と苦しめられた。最も多く安打を喫したのは、源田壮亮(西武)だ。最多の28打席で対戦し、26打数10安打(打率.385)と打ち込まれた。山﨑の安打が全て単打だったのに対し、源田には4長打を打たれており、怖さでは源田の方が勝っている。
10打席未満の選手では、ロッテ勢の打率の高さが目立つ。荻野貴司が打率.429(7打数3安打)、レアードが打率.600(5打数3安打)、藤岡裕大が打率.750(4打数3安打)を記録。昨シーズンの山本の被本塁打は7本だが、2本塁打を浴びたのはレアードのみだった。
一方、山本が打率.000に抑え込んだのは、外崎修汰(西武)と岡島豪郎(楽天)の2人だ。外崎には2四球を与えているが、岡島は11打席で11打数無安打、3三振と封じ込めた。
しかし2人以上に圧倒したのが、2020年パ・リーグMVPの柳田悠岐(ソフトバンク)だった。25打席で20打数1安打、9三振。最多の5四球を与えたのは柳田を警戒してのことだろうが、プロ野球屈指の強打者をほぼ完ぺきに抑え込んでいたのだ。
村上宗隆とのMVP対決は山本に軍配
さらに、タイトルホルダー別に見て行こう。最多安打の荻野は、前述の通り10打席未満ながら打率4割を許している。打点王の島内宏明(楽天)は15打席で打率.077(13打数1安打)、4三振、2四球と相性の良さを見せた。得点圏打率.328の島内をピンチで迎える場面もあったが、1打点も許さなかった。
首位打者であり最高出塁率の吉田正尚と、本塁打王の杉本裕太郎はいずれも同僚のため勝負の機会はなかった。直接対決がないのが残念なくらいのタレントが、現在のオリックスには揃っているのだ。
最後に、セ・リーグMVPに輝いた村上宗隆(ヤクルト)との対戦を見ていこう。交流戦では2打数無安打、1四球、日本シリーズでも2試合で7打数1安打と抑え込み、通算では打率.111(9打数1安打)、5三振、1四球と封じ込めた。
日本一に輝いたのは村上だったが、エースと四番の勝負を制したのは山本だった。シーズンオフに共演したバラエティ番組では仲の良さも披露した2人だが、今後何年にも渡って「令和の名勝負」を繰り広げるライバル関係になっていくことだろう。
1月に行われた契約更改の場では、将来的なメジャー挑戦の意志を明かした山本。「(タイトルは)全部取りたいです」と貪欲に語る日本の若きエースが、今シーズンどんなピッチングを見せてくれるのか。楽しみに待ちたい。
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