引き分け数が史上最多となった2021年
前年に続いてコロナ禍で進められた2021年シーズン。営業時間短縮要請の影響から9回打ち切り制のルールが採用されたことは、大きなトピックといえるだろう。
延長戦がなくなった結果、年間の引き分け数は史上最多となる204試合を数え、その割合は全体の11.9%にまで増加した。このことは優勝争いにも差し響き、ヤクルトは阪神に勝利数で及ばなかったものの、引き分けの関係で勝率を上回ってリーグ制覇を果たしている。
今回は、そんな引き分けに関係するデータを見ていきたい。

救援投手の成績が向上
引き分けが増えた要因は、攻撃回が最大9回までとなったことに違いないだろう。ただ、それだけでなく救援投手の成績が良化している点も見逃せない。昨季の救援投手総計の被打率.235は過去10年で最も低く、試合後半に得点を挙げることが難しくなっていた。

これは球界全体の投手のレベルが向上しただけでなく、試合が9回で終わることも影響しただろう。延長戦がないことは継投のプランが立てやすいため、救援投手は準備を十分に整えてマウンドに上がる機会が多かったはずだ。さらに打者1人のみと対戦するワンポイントの起用が近年と比較して増加したことも、救援投手の成績の向上につながったと考えられる。
また、試合後半に関連するところで興味深いデータがもう1つあった。それは同点時の被打率が大幅に良くなっている点である。一般的に試合終盤にリードしている場面では、勝利の方程式と呼ばれるような好リリーバーが登板する機会が多いため、リード時の成績が良くなる傾向がある。

ただ、昨季に限っては同点時の被打率が最も優れており、これは過去10年を見ても昨季だけであった。延長戦に備える必要がなくなったことで、強力なリリーバーをリードした展開だけでなく同点でも積極的に投入できるようになったためと推察される。
逆転試合の割合は減少
そして、これらの事情は、引き分けの増加だけでなく、逆転試合の減少にもつながったようだ。延長10回制の2020年と比較しても、逆転試合の割合は5%近く減少しており、試合をひっくり返すことが難しくなっていた。わずか1イニングの差ではあるものの、延長戦の有無は試合展開に大きな影響を与えるようである。

昨季は引き分けが多く、かつ逆転も少ない、エンターテインメントの観点からはやや寂しいものであった。今のところ2022年は延長戦が復活して最大12回まで試合が行われる見込みである。今季は劇的な試合展開が増加して、多くの野球ファンが熱狂する機会が増えることだろう。
※文章、表中の数字はすべて2021年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:秋山 文
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