昨季10本塁打の「未来の主砲」林晃汰
ポスティングシステムを申請してメジャー挑戦を目指している広島・鈴木誠也の移籍報道が活発になってきた。レッドソックスやドジャースなどが有力とされ、鈴木は25日に松田元オーナーやチームメイトらに挨拶を済ませたという。侍ジャパンで4番を務めるなど日本球界屈指の強打者が海を渡ってどんな成績を残すのか楽しみだ。
送り出す広島としては、後任の4番を誰に任せるかは最大の難問だろう。王貞治、落合博満に続いて史上3人目の6年連続3割25本塁打を達成した鈴木の穴は簡単には埋まらない。
後継者として期待されるのは左の長距離砲・林晃汰だ。智弁和歌山高から2018年ドラフト3位で入団した21歳。3年目の昨季は102試合に出場して打率.266、10本塁打、40打点をマークした。高校通算49本塁打を誇り、2020年は二軍で4番としてウエスタン・リーグ2位の9本塁打を放つなど、早くから「未来の主砲候補」として経験を積んできた。
課題は低めへの対応
遠くへ飛ばすことにかけては十分な素質を持つが、まだまだ課題も多い。ストライクゾーンを9分割した2021年のコース別打撃成績を見ると、低めに弱いことがよく分かる。
真ん中高めの打率.415を筆頭にベルトラインより上のコースは打率3割以上を示す赤色が多い。
しかし、内角低めは27打数4安打の打率.148、外角低めは67打数10安打の.149と極端に低い。昨年喫した93三振のうち、62三振は真ん中も含めた低めで喫しているのだ。
三振をひとつ喫するまでにかかる打席数を示すPA/Kは4.04。昨季最も三振の少なかったヤクルト・青木宣親は11.39、鈴木誠也でも6.06だったから、三振自体が多いことが分かる。低めのボール球の見極めは大きな課題だ。
184三振でも村上宗隆をフル出場させたヤクルト
加えて左投手対策も急務。昨季は右投手に対して打率.280だったものの、左投手に対しては打率.237と大きな開きがある。10本塁打は全て右投手からだ。ここまで極端だと、例えば終盤のチャンスで打席が回ってきた時に左の中継ぎをぶつけられる可能性も高く、得点力低下が危惧される。
ただ、それでも使いたくなる魅力があるのも確かだ。昨季、本塁打王に輝いたヤクルトの村上宗隆は高卒2年目の2019年に143試合フル出場。36本塁打を放ってブレイクした一方、歴代ワースト4位の184三振を喫し、15失策を犯した。ベンチは三振やエラーには目を瞑って起用を続け、ついにセ界のホームランキングに登り詰めたのだ。
2019年のヤクルトは最下位だったことも、結果的には幸運だったかも知れない。優勝を争っていれば、終盤になればなるほど勝負に徹しないといけない場面も訪れるからだ。
カープの4番候補として育てるには、首脳陣の我慢が必要なのは間違いない。「実戦」という替えの利かない経験を積むことが、成長には最高のビタミンとなるだろう。
林と同期の2018年ドラフト1位・小園海斗や、昨季、鈴木誠也に次ぐリーグ2位の打率.315をマークした坂倉将吾ら若手の台頭が著しい広島。その中心に林がどっかりと座ることができれば、鈴木の穴は最小限で抑えられるかも知れない。
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