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打撃の陰で目立たないが鈴木誠也は守備も凄い!紅林弘太郎は大橋穣を彷彿

2021 12/5 11:00山田ジョーンズ
広島の鈴木誠也とオリックスの紅林弘太郎,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

2021年度ゴールデングラブ賞

2021年度ゴールデングラブ賞が発表された。特に注目すべき選手を挙げてみた。

2021年ゴールデングラブ賞

柳裕也が横浜高で培った伝統の投手守備

セ・リーグ投手部門の初受賞は柳裕也(中日)。「横浜高校時代、守備を鍛えてくれた小倉さんに真っ先に報告したい」が受賞のコメント。小倉さんとは、渡辺元智監督とともに二人三脚で横浜高を幾度となく甲子園に導いた小倉清一郎・元部長だ。

小倉氏は言う。「投手がプロに入ってカルチャーショックを受けるのは、守備の上手さ。投球がよくても守備がまずくて一軍で投げられないのはもったいないから、ドラフトにかかりそうな投手には前もってバント守備、牽制などを仕込んでおくのさ」

事実、横浜高出身の松坂大輔(西武=引退)は実に7度、涌井秀章(楽天)も4度のゴールデングラブ賞に輝いている。特に投手の守備は自らの投球を助けることに直結する。

柳は2021年の思い出深いプレーに、スクイズを察知してウエストし、三塁走者を挟殺したヤクルト戦を挙げた。

辻発彦8度を破った「忍者」菊池涼介は9年連続

今では高校野球でも普通の戦法になっている「ギャンブルスタート」。バットにボールが当たった瞬間、三塁走者がスタートを切るものだ(ライナーだった場合はゲッツーでも仕方ないので「ギャンブル」と呼ぶ)。

92年日本シリーズ第7戦で、三塁走者の広沢克己(ヤクルト)が、打球がライナーになる危険性を恐れてスタートが遅れたことから、野村克也監督が考案した。このときのゴロを好捕してバックホームしたのが辻発彦二塁手だった。

辻は絶対の自信を持つ守備に関して「ボールカウント、投手の球種、打者のスイングを見れば、バットにボールが当たる前から打球がどこに飛ぶか分かった」と豪語した。いわば「ポジショニング」だ。

その辻の受賞8度を抜いたのが、「忍者」の異名を取る菊池涼介(広島)だ。あるプロ野球のベテラン審判に言わせれば「打球方向をあらかじめ予測して、一人だけとんでもないポジショニングをとっている」と証言する。

「補殺」とは、簡単に言えば捕った(打)球を送球などで、(打者)走者のアウトを補助すること。セ・リーグ二塁手記録は菊池の14年144試合535だが、パ・リーグ二塁手記録は中村奨吾(ロッテ)の18年143試合486。

DH制がなく、打者が一人少ないセ・リーグにあって1シーズンで50個も多い。いかに打球に追いついて送球でアウトにしたか、「守備範囲」の広さを証明する。

メジャー垂涎の当代随一の外野手・鈴木誠也

かつて外野でゴールデングラブ賞を6度受賞した名手・赤星憲広をして、「現在の外野手で一番上手いのは鈴木誠也(広島)」と言わしめる。

「外野手の送球は、イチローさん(オリックスほか)のように強肩を生かしたタイプ、飯田哲也さん(ヤクルト)のように捕ってからの送球が早いタイプに分かれる。誠也は両方を兼備する」と絶賛する。

「コリジョン(衝突)ルール」が制定されてから、捕手は走者をブロックできないため、外野手は捕手の左手のミット方向にピンポイントでバックホームしないと、なかなか走者をアウトにできないようになった。それでもリーグ最多の13補殺をマークしている鈴木の守備はさすがである。

秋山翔吾(西武→レッズ)がゴールデングラブ6度・首位打者1度の実績で、メジャー3年総額24億円(推定)。鈴木はゴールデングラブ賞5度・首位打者2度で、メジャーと契約すれば5年総額55億円(推定)とも言われる。

「鈴木は日本随一の5ツールプレイヤー(ミート力・長打力・走力・守備力・送球力)だ」と、メジャーの評価は高い。

紅林弘太郎は伝説の名ショート大橋穣級の守備範囲

プロ入り2年目から4年連続4度目の受賞となった源田壮亮遊撃手。今季盗塁王の俊足を生かした広い守備範囲、堅実なゴロ捕球、安定した送球は誰の目にも明らかだ。

その源田にいずれ追いつく可能性を感じさせたのが紅林弘太郎(オリックス)だ。今年の日本シリーズ、外野にも踏み込むような守備位置の深さには、度肝を抜かれた。遠投力に相当自信があるのだろう。

かつて山本浩司(のちに浩二。広島)・田淵幸一(阪神)・星野仙一(中日)らを輩出した1968年ドラフト会議が「史上最高の豊作ドラフト」と呼ばれるが、その年の「いの一番」指名が遊撃手の大橋穣(東映=現日本ハム)だった。

「僕が東映時代の登板で、一塁走者なしで6-4-3の送球。大敗だったのでゲッツーの練習を兼ねたファンサービス。守備にそんな余裕と自信があった」(江本孟紀)

「ワシが打席のときはレフトの芝生のところを守っていたぞ。72年から7年連続ダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)。打率.191でもベストナインにも選ばれているんだから、相当守備が上手かったということだ」(野村克也)

紅林の守備位置の深さと強肩は、伝説の大橋穣を彷彿とさせる。来季以降も注目だ。

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