今季はスタイルチェンジに着手
2021年にパ・リーグ初となる20ホールド&20セーブをマークした平良海馬。フル回転の働きを見せた右腕にとって、今季はスタイルチェンジに着手したシーズンでもあった。昨季は投球の過半数を占めていたストレート中心の投球から、今季はリーグ屈指のスピードボールを持ちながらも変化球メインの投手に一新している。
一般的に、ボールが先行した時の投手はストレートでカウントを整えようとする傾向がある。昨季の平良もその例に漏れなかったが、今季の球種別投球割合は明らかに異なる。
ボールが先行している状況とは、バッテリーはストライクが欲しい一方で、置きにいっての痛打は浴びたくない場面。僅差の登板が多い勝ちパターンの投手であれば、なおさらだろう。その状況において、相手打者が狙い球を絞ることが困難な投球を見せていたことがデータから分かる。
複数の球種で勝負できる投手に成長
加えて今季は「ボール球」が「ボールカウントになりづらい」一面があった。各球種のボールゾーンスイング率を見ると、変化球はスライダーとカットボールが前年の数値を大きく上回り、また、その相乗効果もあってかストレートでも打者のスイングを誘発している。
相手バッターは常時150キロ台を計測する直球を意識しながら、昨季よりも割合を増やした変化球にも対応しなければならず、その見極めは困難だったと推測される。
その結果として投手有利な状況を生み出しており、昨季と異なり今季は複数の球種で勝負できる投手になった。昨季も防御率1.87、被打率.129と驚異的な成績を残していただけに、今季のそれらの数字と比較した場合に成長点を挙げるのは難しい。だが、投球内容を掘り下げると昨季からの変化を追い求めた姿は明らかで、その取り組みによる効果は確かに表れているといえる。
39試合連続無失点のNPB新記録を樹立するなど、高卒4年目でリリーバーとして球史に名を刻んだ平良だが、かつては先発希望を口にしている。今回のスタイルチェンジは、そういったことを見据えた上での取り組みだったのかもしれない。
今季パ・リーグの投手4冠に輝いたオリックスの山本も、入団当初はリリーフとして活躍した後に球界No.1の先発投手に上り詰めた。今後、獅子の剛腕はどのような道をたどるのか、その未来が楽しみだ。
企画・監修:データスタジアム
執筆者:西田 祥玄
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