開幕34試合連続無失点で日本記録を更新中
今シーズン、ここまでリーグ最多の34試合に登板し、1勝0敗、7セーブ、21ホールド、防御率0.00という圧巻のパフォーマンスを発揮している西武のクローザー・平良海馬。
開幕当初はセットアッパーだったものの、守護神・増田達至の不調などでクローザーに。しかしそのプレッシャーをものともせず、6月13日には開幕からの連続無失点を32試合に伸ばし、2016年に中日の田島慎二が記録した31試合を抜いてプロ野球新記録を樹立した。
2019年にデビューし、2020年には新人王に輝いた右腕は今シーズン、さらなる高みへとのぼりつつあるが、この圧倒的な活躍の要因とはいったい何なのだろうか。
速球をガンガン投げ込むスタイルからの一新
平良といえば、160キロの剛速球をガンガン投げ込むイメージがあるが、その投球スタイルに変化があったようだ。
昨シーズンは半分以上がストレートで、カットボール、スライダーを混ぜるという形だった。まさに得意球をガンガン投げ込んでいたわけだが、今シーズンは一転、ストレートの割合が全体の約3分の1程度まで減り、スライダー、チェンジアップの比率が大幅に増加したのだ。
さらに、ほとんどの球種で空振り率、見逃し率が向上しており、投球の精度や威力が向上していることがうかがえる。特にスライダーに関しては、投球割合が約15%、空振り率が約10%、見逃し率が約5%増えており、大きく変わった点の一つだ。
投球の精度が向上したことにより奪三振率、与四球率が良化、K/BBも2.14から3.07へと劇的に改善した。今シーズンの平良は強力なストレートに加え、変化球でも勝負できる投手へと変貌を遂げたと言える。一方で多くの球種で被打率が悪化している面もあるが、これについては後述したい。
今シーズンはど真ん中でも打たれない球威を獲得
続いて投球ゾーン別の傾向を見ていこう。
被打率で昨シーズンから大きな変化が見られるのが「ど真ん中」と「真ん中低め」だ。昨シーズン左右両打者合計の被打率はそれぞれ.273、.385と打たれたが、今シーズンはともに.182と抑え込んでいる。打たれやすいど真ん中の被打率が低いということは、球の威力が打者を上回っているということだ。
また、今シーズンの平良は対右では外角低め、対左では外角高めと内角低めの対角線の攻めを基本としているようだ。昨シーズンは被打率.375だった対左の真ん中低めを、今シーズンは.000と完全に抑え込んでいる。しかし、対右の真ん中低め、インコース低めはいずれも.400以上と打ち込まれており、今後の課題となってくるかもしれない。
被打率は悪化するも、得点圏被打率は.000を継続中
通算被打率では昨シーズンの.129に対して今シーズンは.161とやや悪化している。しかし、そんな中でも無失点に抑えられる理由は、得点圏での成績にある。打者36人と対戦し、30打数無安打、6四死球、15奪三振という内容で、驚異の被打率0割をマークしているのだ。
さらに、今シーズン通算でのK%は約33%(130打席43奪三振)だが、得点圏になると約42%にまで上がる。文字通り「ギア」を上げて打者たちをねじ伏せていることがわかる。多くの球種で被打率が悪化しながらも、空振り率・見逃し率が向上した理由はこの辺にありそうだ。
20日現在、平良は自身の連続無失点記録を34試合にまで伸ばしており、2006年に阪神の藤川球児が記録した38試合連続無失点のプロ野球記録更新も視野に入れる。
身長173cm体重100kg剛球右腕がどこまで記録を伸ばしていくのか、今後はどんな規格外な活躍を見せてくれるのか。4年目の若獅子から目が離せない。
※成績は6月20日時点
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