ここまでわずか2勝と勝ち星が伸びず
セ・パ交流戦を終え各チームともに65試合ほどを消化した。パ・リーグでは楽天が2位のソフトバンクに2ゲーム差をつけ首位を走っている。
楽天の先発投手陣の勝ち頭はドラフト1位ルーキーの早川隆久で7勝。7勝はハーラーダービー単独トップでもあり、新人王のみならず最多勝も狙えそうなほどの活躍だ。後には昨年最多勝の涌井秀章が6勝、則本昂大と瀧中瞭太の両投手が5勝と続く。
現時点で5勝以上の投手はパ・リーグに10人いるが、そのうち4人が楽天の投手ということには驚きで、その先発投手陣の充実ぶりには目を見張る。
今シーズンから楽天へ復帰した田中将大は、開幕直前に右ふくらはぎ痛を発症し出遅れながらもすでに9試合に登板。だが、現時点で2勝にとどまっており、勝ち星は伸びていない。
先発登板数、勝ち負け、QS(6回以上自責点3以下)を楽天の先発数上位6人で比べてみると、田中のQSは則本とチームトップタイの7、QS率はチームトップの数字だ。田中は試合を作りながら勝ち星に恵まれていないことがわかる。
防御率、被打率などはチームトップの数値を残す
その他の指標ではどうだろう。防御率、被打率、K/BB(三振と四球の割合)、WHIP(1回で何人の走者を出すか)をまとめたのが下記の表となる。
投球回数では涌井や早川に劣っているものの、その他の指標ではほぼトップの数値を記録している。では、神がかり的な投球を見せた2013年の成績と比べるとどうだろか。
シーズン途中なので投球回数に大きな開きがある。だが、その他の指標では、防御率こそ1点以上悪化しているものの、被打率、K/BB、WHIPに大きな変化は見られない。比較表には載せていないが、被本塁打が2013年は6本だったのに対し、今年はすでに9本と一発を多く浴びている。それが防御率の悪化につながっているといえそうだ。
援護率2.1はチームワースト
投手の勝ち星は自身の投球はもちろん、味方打線の援護にも大きく左右される。投球している間に味方がどれだけ得点を奪ったかを表す援護率をまとめたものが、下記の表になる。
岸孝之や涌井は5点を超える援護があるのに対し、田中には約2点しかなく自身の防御率よりも低い。2013年と比べても4点以上援護が少なくなっていた。
田中自身の成績は2013年より多少悪くなってはいるものの、それほど大きな変化はない。また、今シーズンの楽天先発陣の中では、最も安定した数字を残していると言っていい。それにもかかわらず勝ち星に恵まれていないのは、味方の援護が少ない影響が大きそうだ。
当然だが援護は相手投手との兼ね合いになる。エース級との対決が多くなれば援護は減り、実績がない投手とのマッチアップであれば増える可能性が高い。「勝ち星が投手の能力を表しているわけではない」と言われるゆえんである。
交流戦明け、オリンピックの中断期間までのおよそ1ケ月。はたして田中の勝ち星は伸びてくるだろうか。相手とのマッチアップも含めて見守っていきたい。
※数字は2021年セ・パ交流戦終了時点
【関連記事】
・技巧派に変貌した楽天・田中将大、実はリーグ1位相当の数値とは?
・髙山俊に2球団競合した2015年ドラフトの答え合わせ、一番出世は?
・新人最多勝も視界!楽天・早川隆久の投球フォームが優れている4つのポイント