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【大阪杯】過去にアルアイン、ポタジェが激走V「金鯱賞組×5歳馬」が狙い目 ホウオウビスケッツに好機到来

2025 3/30 17:30勝木淳
GⅠ昇格後8年間のデータから見る大阪杯,ⒸSPAIA

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主力は4、5歳

春の中距離王決定戦としてGⅠに格上げされて8年。優勝馬を見ると、キタサンブラック、アルアイン、ラッキーライラックは2歳または3歳でGⅠを勝った5歳馬。これが4歳ではない点が肝になる。

GⅠ初制覇となった4歳馬はスワーヴリチャード、レイパパレ、べラジオオペラの3頭。残るは5歳でGⅠ初制覇となったポタジェ、ジャックドールとなる。GⅠ初制覇が多いのは同じ阪神の宝塚記念に似ている。どちらも舞台は内回り。ようやく適性に合うGⅠが巡ってきた。秋の内回り古馬中距離GⅠは有馬記念だけ。正確には長距離カテゴリーに入るので、機動力が武器の中距離型は春に全力投球。チャンスはそう多くない。

今年のメンバーで2、3歳GⅠウイナーの5歳といえば、ソールオリエンス。GⅠ初制覇をかける4、5歳ではシックスペンス、ロードデルレイら人気候補が並ぶ。一方、ここ8回で一頭も勝っていないのが4歳のGⅠ馬。マカヒキ、エポカドーロ、アルアイン(4歳時)、クロノジェネシス、コントレイル、エフフォーリア、スターズオンアース、タスティエーラ、ソールオリエンスなどそうそうたると錚々たる4歳馬たちが大阪杯で負けた。

ステレンボッシュ(24年桜花賞)は大阪杯に新たな風を吹かせるだろうか。ステレンボッシュは3歳ラストの香港ヴァーズでルクセンブルクを競り落とすも、最後は1、2着馬に屈した。距離短縮はプラスでしかない。

ここからはGⅠ昇格後、8年分のデータを使用して、今年の大阪杯を展望する。

人気別成績,ⒸSPAIA


人気別成績では、1番人気【2-1-2-3】勝率25.0%、複勝率62.5%、2番人気【3-1-1-3】勝率37.5%、複勝率62.5%と主役はそれなりに期待に応えるものの、4番人気【1-1-2-4】勝率12.5%、複勝率50.0%のほか、8、9番人気が各1勝と穴馬の勝利もある。

芝内回り2000mでは展開がまぎれるケースもあり、全馬が力を出し切れるとは限らない。そもそも競馬はこれが前提で成り立つ。実力通りで決まってはギャンブルにならない。春先の難しい時期でもあり、不確定要素が入り込む余地が多いのも大阪杯の特徴だ。

年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別では、4歳【3-3-5-26】勝率8.1%、複勝率29.7%、5歳【5-4-3-34】勝率10.9%、複勝率26.1%の2世代が主力を形成し、6歳以上は【0-1-0-33】。2000mとなると、スピードと持続力を問うため、充実期を迎える4、5歳の強みは大きい。データ上はこの二世代に絞ってもいいほどだ。

なんだかんだと先行有利

最大の注目はシックスペンスだろう。毎日王冠、中山記念と1800mのGⅡを連勝中。体調が整わず、間隔をとらざるを得ない状況を脱し、いよいよ順調にGⅠの舞台に立つ。中山で問題ないように内回りは苦にしない。残るは200mの距離延長だろう。中距離型のなかには1800m巧者というカテゴリーがある。たかが200mが遠く、涙を飲んだGⅠ級の馬は多い。

4歳・前走クラス別成績,ⒸSPAIA


4歳の傾向をみると、前走GⅡは【2-2-3-19】勝率7.7%、複勝率26.9%と前哨戦経由は頭数もそろう。金鯱賞組は【1-0-0-4】で18年スワーヴリチャードが連勝。中山記念は【0-1-1-5】とちょっと苦戦傾向にある。シックスペンスとエコロヴァルツはデータを越えられるだろうか。

今年の中山記念は1000m通過58.5の平均ペースで進み、最初の200m通過後からゴールまですべて11秒台。それも11.4~11.6と極めて上下動のないラップを刻んだ。上がり33.9で差し切ったシックスペンスは軽さだけではなく、持続力も兼ね備える。毎日王冠ではラスト3F11.3-11.0-11.4となる展開を勝ち切っており、非の打ちどころがない。

200mの延長でパタリと止まるとは思えないが、もう一点は初の長距離輸送だろう。1番人気で惨敗した22年エフフォーリアも初の長距離輸送が予想以上にこたえた。美浦所属の4歳馬は【0-1-1-9】と振るわない。

中山記念2着のエコロヴァルツもラップを踏まえれば、ハナ差に持ち込んだのは価値がある。菊花賞後の2戦は充実した内容であり、こちらも1800m巧者でない限りは、チャンスではないか。くわえて、栗東所属の4歳馬は【3-2-4-17】と好成績だ。

ステレンボッシュと同じ前走海外の4歳馬は出走ゼロ。世代問わずだと、前走海外は【1-1-0-4】で、そのうち、香港Cが【1-1-0-3】。レースは違うが暮れの香港から直行は悪くない。気になるのはステレンボッシュが外回り向きの雰囲気である点だろう。内回りだと忙しすぎて、というシーンは想像できなくもない。“マジックマン”モレイラ騎手は腕の見せどころだろう。

5歳・前走距離別成績,ⒸSPAIA


5歳馬については前走距離を確認する。前走2000mは【3-2-1-13】勝率15.8%、複勝率31.6%。2000m未満【1-0-1-10】勝率8.3%、複勝率16.7%、2000m超【1-2-1-11】勝率6.7%、複勝率26.7%なので、できれば距離変化なく挑む馬を選びたい。

該当するのは金鯱賞2、9着ホウオウビスケッツ、ラヴェル。金鯱賞5着以内【2-1-1-5】、6着以下【0-0-0-6】。19年9番人気1着アルアイン、22年8番人気1着ポタジェなど穴パターンがここ。先手候補のホウオウビスケッツはレースを支配できるアドバンテージをいかしてほしい。

距離短縮組は前走1着【0-0-0-5】、2着【1-0-0-1】、5~9着【0-2-1-0】。日経新春杯1着のロードデルレイより京都記念5着のソールオリエンスか。馬場次第の馬だが、雨の影響があるなら強気に出られる。

位置取り別成績,ⒸSPAIA


最後に全体のデータをひとつ。やはりというか「内回りの攻略」はこのGⅠにとって最大のカギであると思い知らされるのが脚質のデータ。逃げ【2-0-1-5】勝率25.0%、複勝率37.5%、先行【4-4-1-16】勝率16.0%、複勝率36.0%と前へ行く優位性が高い。

中団は【1-3-5-41】勝率2.0%、複勝率18.0%と差し損ねる場面が目立つ。後方は【0-0-0-29】で、中団以降からなら、まくり【1-1-1-2】勝率20.0%、複勝率60.0%しかない。位置取りは予想する上で重視すべきだろう。

GⅠ昇格後8年間のデータから見る大阪杯,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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