3番に座り打線が機能
今季からロッテのキャプテンを務める中村奨吾。5月12日試合終了時点で、打率.308(リーグ4位)、25打点(リーグ4位)、出塁率.428(リーグ3位)など、打撃の各項目で好成績をキープし、チームを牽引している。
チームは開幕5連敗を喫しながらも、18勝15敗と巻き返しに成功。特にリーグトップの180得点を挙げている打撃陣の好調が大きく、荻野貴司、レオネス・マーティン、中村、安田尚憲と続く上位打線が上手く機能している。昨季は様々な打順を打った中村が、今季は3番に固定できるような成績を残していることが大きい。
数値が示す粘り強さ
特筆すべきは四球数。38試合を消化し、既に30個(リーグ2位)。過去5年間(2016年~2020年)の平均四球数は42.2個と四球数が多いタイプではなかったが、今季はいかに多くの四球を選んでいるかがわかる。
また、三振が少なく四球が多い打者であることを示すBB/K(四球数÷三振数)という数値では、中村は吉田正尚や浅村栄斗らに次ぐリーグ4位の1.25をマーク。今季は例年よりも粘り強さやチームバッティングへの意識の高さを感じる打席が増えた印象があるが、数値がそのことを証明している。
カウント別の打率を見ても、昨季は2ストライクに追い込まれてからの打率が軒並み1割台だったが、今季はカウント1-2(1ボール2ストライク)で.290、2-2で.280、3-2で.353と大幅に上昇。例年2割前半~中盤だった得点圏打率も.333とハイアベレージを残し、勝負強さも見せている。
加えて、犠飛数はリーグトップの5個。ロッテは今季のスローガンに「この1点を、つかみ取る」を掲げているが、打席での粘り強さやそれに伴う四球数の増加といい、キャプテンの中村がそれを最も体現している。
これまでは、早いカウントからどんどん打っていく積極性が際立つ反面、どこか脆さを感じる部分もあった。だが、これらの数値を踏まえると、今季はそういった過去のイメージとは異なる打者になったと言っても過言ではない。
課題は落ちる球への脆さ
中村の調子を表すバロメーターとして、右方向へ強いライナー性の打球が多いかどうかという点がある。今季はそういった打球も含めて広角に打ち分けることができているようだ。
ⒸSPAIA
SPAIAの打球方向データを見ると、左中間が27%と最も多く、次に右中間の21%、左翼が18%で、中堅と右翼が17%と、どこかに偏ることがなくバランスがいい。
外角低めの難しい球を器用に合わせて逆方向へ運んだり、内角の球を腕をうまくたたんで引っ張ったりと巧みなバットコントロールが際立つ。特に、多くの打者が2割前後にとどまる外角低めの打率が.406というのは驚異的だ。
ただ、真ん中低めの打率は.176と低く、フォーク及びチェンジアップに対して18打数1安打と、落ちる球に脆さがあることは課題だ。そこの見極めができれば、ますますいやらしい打者になるだろう。
二塁手として守備範囲も広大。攻守で欠かせないキャプテンだが、近しいレベルで代わりを務められる選手がいないため、シーズンを通して高いパフォーマンスを維持するためのコンディション管理に不安が残る。昨季も疲労が影響し、シーズン終盤には打撃の調子を落とした。
今季のロッテでは一塁手、遊撃手は複数の選手を併用しているが、二塁はここまで中村がフル出場している。高いパフォーマンスを維持するためにも休ませることは必要だろう。代役となりうる二塁手の育成・運用は喫緊の課題だ。
昨季もそうであったように、中村の好不調はチームの浮沈に直結する。特に打撃面で一皮むけた姿を見せているだけに、今後もチームを牽引する活躍に期待したい。
※数字は5月12日試合終了時点
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