要所で一発に泣いた日本シリーズ
2年続けて日本シリーズ4連敗を喫した巨人。ほとんど良いところがなくシリーズを終えてしまったが、こと「守り」に関しては、本塁打でソフトバンク打線を勢いづかせてしまったことが惨敗の要因といえるのではないだろうか。
初戦はエース菅野智之が栗原陵矢に先制2ラン(2回)を許す。CSでノーヒットだった栗原はシリーズ最初のこの打席で目覚め、MVPに輝くほどの活躍を見せた。
第2戦はすでに2点リードを許したところから甲斐拓也ソロ(2回)、グラシアル2ラン(3回)と得点を重ねられ、デスパイネの満塁弾(7回)で止めを刺される。
敵地へ移った第3戦は好投していたサンチェスが中村晃から先制2ラン(3回)。第4戦は初回に1点を先制した直後、柳田悠岐に逆転2ラン。続く2回に甲斐の2ランで突き放された。
初戦は先制弾、第2戦は戦意を喪失させられるような一発攻勢を浴び、第3戦も先制弾。第4戦はシリーズに入って初めて巨人がリードし、ようやく反撃だという気運が起こってきたところで続けざまにアーチを浴び、あっという間に反撃ムードをへし折られた。要所で一発に泣き、相手を勢いに乗せてしまったというのがシリーズを通しての印象だ。
純粋な投手力を示すFIPではホークスと大きな差
今年の巨人はソフトバンクを上回り12球団トップタイのシーズン135本塁打を記録した打力だけでなく、ディフェンス面でもセ・リーグ他球団を圧倒してきたチームのはずだった。チーム防御率3.33はリーグトップであり、12球団で見てもソフトバンクの2.92に次ぐ2位を誇っている。
しかしもう少し詳しくデータを見ると、実は両チームの「投手力」には大きな差があったことがわかる。「FIP」という指標に注目する。これは野手の守備力に影響されない奪三振・与四球・被本塁打という3つの要素だけを基に、より純粋な投手の能力を評価するものだ(防御率同様に低い方が良い)。
巨人のチームFIPは10位の3.98。対してソフトバンクのFIPは12球団トップの3.47をマークしている。真に圧倒的な投手力を誇ったソフトバンクに対して、巨人の純粋な投手力は決して高いとは言えなかったのだ。
本塁打を防ぐ能力にも大きな差が
前述したFIPの3要素(奪三振・与四球・被本塁打)のうち、巨人投手陣が特に悪かったのが日本シリーズでも目立った「被本塁打」である。被本塁打率(9イニングあたりの被本塁打数)は0.97で10位。東京ドームは比較的本塁打が出やすい球場ということもあるが、巨人投手陣のフライ率44.5%は12球団で3番目に高く、そもそもフライを打たれやすいという特徴があった。
対して、ソフトバンク投手陣はホームランテラスによって東京ドームと近い大きさになったペイペイドームをホームとしながら、本塁打率は12球団で最も低い0.70に抑えている。フライ率も3番目に低い41.1%だ。日本シリーズでも被本塁打は第2戦でウィーラーに許した1本のみに抑え、3人で計77本塁打をマークした巨人打線のコア「サカオカマル」からアーチを許さなかった。
守りではリーグトップの防御率、攻撃ではリーグトップの本塁打数を誇るチーム同士の戦いとなった今回の日本シリーズ。レギュラーシーズンでの投手データを振り返ってみると、「本塁打を防ぐ能力」の差がそのまま結果に表れたといえるかもしれない。
シーズン中、巨人の守りが安定していたのは野手の守備力によるところが大きい。グラウンド上に飛んだ打球のうち、野手がアウトにした割合を示す「DER」は12球団トップの.721を記録しており、鉄壁の守備陣を誇っていたのだ。しかし打球がフェンスを越えてしまえば、その見事な守備力も活かしようがない。
いかに本塁打を防ぐか。その能力の高い投手陣を形成することができるか。ここが雪辱へのカギとなるのではないだろうか。
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