プロ5年目で自身初の首位打者を獲得
プロ5年目の今季、打率.350で自身初タイトルとなる首位打者を獲得したオリックス・吉田正尚。球団としては2014年の糸井嘉男以来、生え抜き選手では2000年のイチロー以来の受賞となった。
代名詞の豪快なスイングを維持しながらハイアベレージを実現した彼の打撃には、どのような変化があったのだろうか。
プロ5年目の今季、打率.350で自身初タイトルとなる首位打者を獲得したオリックス・吉田正尚。球団としては2014年の糸井嘉男以来、生え抜き選手では2000年のイチロー以来の受賞となった。
代名詞の豪快なスイングを維持しながらハイアベレージを実現した彼の打撃には、どのような変化があったのだろうか。
今季の吉田正で注目したいのが、ファーストストライクに対するアプローチだ。スイング率は毎年リーグ平均を下回っていたが、今季はキャリアで最も低い23.8%を記録。最初のストライクゾーンへの投球に手を出すのは4~5打席に1度というペースだった。
ファーストストライクを見送れば、打者にとって不利な2ストライクに追い込まれるリスクは高くなる。しかし、今季の吉田正は2ストライク時でも打率.302をマークしており、両リーグの規定打席到達者53人の中で唯一3割を上回った。
不利なカウントでも結果を残せるようになったことが、打率アップにつながったといえる。
2ストライク時に放った安打の内容を見てみると、19年以降は引っ張る打球が減少し、センター方向の打球が増加している。
近年では強打者に対して極端な守備シフトを敷くケースが増えており、吉田正も例外ではない。追い込まれたら広角に打つという意識の切り替えは、結果的にシフト対策として機能しているかもしれない。
昨季から身につけた広角打法に、今季はコンタクト率のさらなる向上が加わった。球種別ではストレートに対して95%を上回り、変化球に対しても約90%という驚異的な数字をマーク。
これほどのバットコントロールを見せられると、相手バッテリーは追い込んでいるにもかかわらず「投げる球がない」状況に陥りそうだ。
吉田正自身も、好成績の要因として「ミスショットをせずに1球で仕留める」ことを挙げている。投球をじっくりと見極め、追い込まれても柔軟に対応し、狙った球は逃さない。
492打席でわずか29三振という精度の高さは、かつて圧倒的な打棒を見せたイチローやブーマーをも上回るものだった。球史にその名を刻んだ背番号34の活躍に、来季も注目したい。
※文章、表中の数字はすべて2020年11月10日終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:矢島 慎太郎
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