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【チームの将来10年を左右する男】中日・梅津晃大 1年目で見せたエースの片鱗

2020 5/5 11:00青木スラッガー
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ⒸSPAIA

将来の「エース候補」として注目される右腕

未だ開幕の見通しが立たないプロ野球。話題が乏しくなかなか今季のことは考えづらい状況だが、そんなこの時期だからこそ、今ではなくもう少し将来のことに目を向けてみたい。チームの将来10年間を見据えると、重要となるのはこれから成長していく若手選手だ。今後の成長度合いが、2020年代の各チームの命運を左右しうる選手に注目していきたい。

今回はプロ1年目の昨季、終盤の先発ローテーションに定着して好投し、2年目に大きな期待を残した中日の梅津晃大を取り上げる。

2019年シーズンは5位に終わり、7年連続Bクラスとなった中日。それでも今季の前評判は高い。昨季は若手の台頭で徐々に戦力が充実していき、投手陣は前年リーグワーストの4.36だったチーム防御率をリーグ3位の3.72まで立て直す奮闘を見せた。その楽しみな若手投手陣の中で、近い将来の「エース候補」として注目されているのが梅津だ。

187センチの長身から最速153キロの速球を繰り出す大型右腕の触れ込みで、2018年ドラフトで2位指名を受けて入団。期待のルーキーイヤーはドラフト後に肩の故障が発覚し、リハビリに時間を費やして出遅れたが、8月12日の阪神戦(ナゴヤドーム)で初登板初勝利を挙げると6試合で4勝をマーク。34.2投球回を投げ4勝1敗、防御率2.34、34奪三振、奪三振率8.83の好成績を残した。

防御率と奪三振率は中日の5試合以上に先発登板した投手の中ではトップ。登板数が少なかった中でローテーション投手たちと単純に比べられるものではないが、エース候補と言われるだけのポテンシャルは十分に発揮したプロ1年目だったといえるだろう。

平均146キロ超、一軍でもトップクラスのストレート

投球データを詳しく振り返ると、さらにそのポテンシャルの高さが見えてくる。

まず、梅津の最大の売りであるストレート。昨季の最速は151キロで、大学時代の153キロには届かなかった。ただ、先発投手にとってストレートの球速でより重要となるのは「マックス」ではなく「アベレージ」だろう。

昨季のストレート全投球の平均球速は146.2キロ。これは中日の5試合以上に先発登板した投手の中でロメロ(149.5キロ)に次ぐスピードで、日本人選手ではエース・大野雄大(145.7キロ)をも上回ってトップだ。

また他球団のエース級と比較しても、ソフトバンク・千賀滉大(153.1キロ)、オリックス・山本由伸(150.7キロ)は平均150キロを超えて別格だが、日本ハム・有原航平(147.2キロ)、巨人・菅野智之(146.8キロ)、DeNA・今永昇太(146.4キロ)、広島・大瀬良大地(145.8キロ)あたりとは互角である。

さらにイニング別の球速を確認すると、サンプルが少ない7回を除いては試合を通じてほぼ一定のスピードをキープし、6回にシーズン最速の151キロとシーズン平均を上回る146.4キロを記録している。

イニング別ストレート球速

スピードは先発としてトップクラス。イニングが進んでもそれを安定して出すことができるというのが梅津のストレートだ。

変化球はメインの3球種すべてが決め球に

変化球も分析していくと球種割合はストレートが56.4%を占め、スライダー(26.4%)とフォーク(14.8%)をメインに、まれにカーブ(2.4%)という構成。特に威力を発揮したのが長身を活かした角度のあるフォークだ。被打率.091、空振り率22.0%を記録。これを各球団のフォークを扱う主な先発投手と比べてみる。

2019年フォークの被打率と空振り率

空振り率22%はエースクラスの好投手らと互角。被打率0割台は抜粋した投手の中では有原のみと際立って優秀な数字で、フォークも一級品の力を持っていることがわかる。

2019年スライダーの被打率と空振り率

スライダーも優秀だ。被打率は.235でフォークほど絶対的ではないものの、曲がりが大きいタイプで空振りを奪う能力に長けている。空振り率17.1%は両リーグの規定到達投手と比較しても上位で、決め球として機能している。

そして、最も多く三振を奪ったのがストレートだ。三振の球種別割合はストレート38.2%、スライダー32.4%、フォーク29.4%となり、まんべんなく数字が分散。メインに扱う3球種すべてが決め球になっているのが特徴的である。打者からすればマークを分散せざるを得なく、このコンビネーションも打者を抑える武器になる。

一軍でもトップクラスのストレートと変化球、またそのコンビネーションと、先発投手としての総合力・完成度の高さを1年目の投球データから読み取ることができた。

大学時代はケガなどで登板が少なく、即戦力というよりも将来性に懸ける「素材型」というのがドラフト当時の評価だったが、それも的外れだったと言えるのではないだろうか。逆にここからまだ大きな伸びしろがあるのかもしれないと考えると、ポテンシャルは末恐ろしい。

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