試合数減少は不可避
新型コロナウイルスの影響により開幕が都度延期されているプロ野球。ウイルスの封じ込めに成功した台湾や韓国では無観客でプロ野球が開幕しているが、日本は緊急事態宣言の延長が5月4日に発表されるなど、まだ開幕の見通しは立っていない。
12球団は引き続きチームの全体練習や他のチームとの練習試合は行わず、調整は選手個々に委ねられている。仮に全体練習が再開できたとしても、コンディションを調整するために1ヶ月程度は必要と目されており、NPBは開幕が7月以降にずれ込むことも想定しているという。
仮に7月の早い段階で開幕できたとしてもレギュラーシーズンの試合数減少は不可避で、プロ野球史上例のない異質なシーズンとなる。そして、試合数が少なくなると予想される状況で鍵を握りそうなのが「開幕ダッシュ」だ。
そこで今回は、過去5年間でリーグ優勝したチームの開幕20試合目までの成績を振り返り、開幕ダッシュとリーグ優勝の関連性(パ・リーグ編)を考察する。
開幕ダッシュはそれほど影響しない?
下記の表を見ると、開幕ダッシュに成功したと言えるのは2018年の西武(16勝4敗)のみ。この時は20試合のうち、菊池雄星(現マリナーズ)が4勝、多和田真三郎が4勝を挙げる活躍を見せ、強力打線が後押し。結局、開幕から一度も首位の座を明け渡すことなくリーグ優勝を決めた。
それ以外のシーズンは、どこのチームも開幕からつまづいているとは言い難いが、開幕ダッシュにも成功していない。これらを基に考えると、シーズン序盤を5割前後で乗り切れば、シーズン後半で逆転優勝のチャンスは十分にあると言えるだろうが、それは143試合ある場合の話。
実際、2016年に最大11.5ゲーム差をひっくり返してリーグ優勝を果たした日本ハムが、初めて首位に立ったのは115試合目。2019年、最大8.5ゲーム差を逆転した西武が初めて首位に立ったのは130試合目だった。
こうした逆転劇は、143試合が120試合になろうと100試合になろうと起こりえるものかもしれない。だが、投手のやりくりをはじめとしたベンチワークやペース配分が未体験となる試合数になることは確実だ。やってみなければわからないが、試合数が少ないほど開幕ダッシュの重要性は増すことになるだろう。
例年以上にベンチワークが勝敗を左右
2017年、開幕から20試合で15勝5敗と開幕ダッシュに成功したのは楽天だった。1番に茂木栄五郎、2番にカルロス・ペゲーロを据える強力打線がハマり快進撃を演じた。しかし、故障者が続出した夏場以降に急失速。7月7日(71試合目)にソフトバンクに勝率で抜かれるまで首位の座を守り続けたが、選手層の薄さが最後まで響いてリーグ3位に終わった。
だが、今季は有事に備え、1軍公式戦に出場可能な「出場選手登録」の人数を現行の29人から拡大する可能性も示唆されている。選手層が厚いソフトバンクなどにとっては有利に働きそうだが、選手層が薄いと思われるチームでも、適材適所のベンチワークによって怪我人の穴を上手く埋めていくこともできそうだ。1軍で実績のないプレーヤーがブレイクする機会も、通常のシーズンより増えるかもしれない。
開幕ダッシュに成功したチームが、そのままペナントレースを突っ走るのかどうか。今季は例年以上に要注目だ。
2020年プロ野球記事球団別、月別まとめ