5回4失点で幻の復帰初勝利
存在価値の大きさは計り知れない。試合に投げても投げなくても話題になる。時代のアイコンと呼べる野球選手は、そう多くはいない。近年、野球界のスーパースターがメジャーに流出する中、松坂大輔投手(39)が古巣の西武ライオンズに戻ってきた効果は絶大だ。
松坂は14年ぶりに西武に復帰し、キャンプからオープン戦にかけて順調に調整を重ねてきた。開幕が延期となり、3月28日に右膝のコンディション改善のため注射を打ったが、故障ではないと首脳陣も説明している。現在、球団が活動休止となっており、見通しは立たないがチームの戦力として待機している状態と言っていい。
今季の松坂は2月25日の練習試合で実戦初登板。そこからオープン戦2試合に登板。3月8日の広島戦(マツダ)では鈴木誠也に特大の本塁打を許すなど3回2失点。3月15日のヤクルト戦(メットライフ)では、3回1安打無失点と徐々にギアを上げてきた。
開幕が延期となり、実際なら開幕3戦目となったはずの3月22日の練習試合、日本ハム戦(メットライフ)に登板。ここでは5回を5四死球4失点の内容ながら、打線の援護に助けられ幻の西武復帰初勝利を挙げた。ただ、この不安定だった投球が今後の光明でもある。
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心強い1試合平均5得点以上の強力打線
一般的にクオリティスタート(QS)といえば6イニングで自責点3以内の投球を指す。だが、2019年シーズンに1試合平均5.29得点を叩き出した西武打線をバックにすれば、西武先発陣のQSは6回4失点程度でも構わないということだ。そう考えれば、松坂の投球は許容範囲。相手先発が強力ではないローテの5、6番手として、登板を重ねれば白星量産も夢ではないということになる。
これに関しては、松坂の入団前から潮崎編成ディレクターが「普通の投球をしてくれたら、今の西武打線をバックに投げたら白星を重ねてもおかしくないでしょ」と指摘していた。辻監督も「打線が取ってくれるんだと思ってくれれば。5回100球で3点くらいに抑えてくれれば本人も計算がつく。そういう抑え方で、白星がつく可能性も十分にある」と先発ローテを想定している。
日本復帰前の松坂の投球を知る人の多くは、力でねじ伏せるイメージを持ちがちだが、それは違う。松坂自身、若手時代から大差のついたゲームで完投し救援陣を休ませることは重要だが、必ずしも完封する必要性を感じてはいなかった。「味方が1点取ってくれたなら無失点。2点取ってくれたなら1点以内。1点でも勝っている状態でマウンドを降りられれば」と話していた。割り切ってスタイルチェンジした今の松坂は、試合を作ることに専念してくるだろう。
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阪神・下柳剛は規定投球回未達で最多勝
2005年のセ・リーグには見本にすべき投手がいた。このシーズン、37歳で15勝を挙げ、自身初の最多勝のタイトルを獲得した当時阪神の下柳剛だ。このシーズンの下柳は1試合あたりの投球回数が平均5回3分の1。規定投球回にはもちろん達していない。中継ぎ、抑えにジェフ・ウイリアムス、藤川球児、久保田智之投手の“JFK”が君臨し、勝利投手の権利ギリギリのところで交代しても白星が積み重さなっていったのだ。
現在、いつになるのか分からない開幕へ向け調整を続けている松坂。だが、これまで出口の見えない故障との戦いを経験してきたベテランにとって、乗り越えられないカベではないはずだ。
「調子はまだまだですが、ここから頑張ります」。何より言葉が前向きで明るい。プロ野球が再開するとき、松坂の再復活も現実となるはずだ。
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