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第50回全日本大学駅伝② 3強の争いも、青学が一歩リード

2018 10/27 07:00鰐淵恭市
マラソン
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新区間距離になった全日本大学駅伝の優勝候補は?

50回目の節目を迎える全日本大学駅伝には、25の大学とオープン参加の2チームが出場する。新しい区間距離になった全日本を制するのはどのチームなのか。今回は出場チームの中で優勝候補と言われる3強を紹介する。

青学が史上初の2度目の三冠へ

近年の大学駅伝界を引っ張る青山学院大が今年の優勝候補筆頭だろう。学生三大駅伝で最もスピードが必要で、青山学院大にとって一番難しいと思われていた10月の出雲駅伝。ここで2年ぶり4度目の優勝を果たした。それも、1区途中から一度もトップを譲らない「完勝」だった。全日本でも2年ぶり2度目の優勝を十分に狙える。

今年の青山学院大には絶対的なエースはいないが、駒はそろっている。主将の森田歩希(4年)は2年生の時の全日本6区、3年生の時の箱根2区で区間賞を獲得。小野田勇次(4年)も2年生の時の全日本5区と3年生の時の箱根6区で区間賞、林奎介(4年)は3年時の箱根7区区間賞と、最終学年には結果を確実に残してきた選手がいる。今年の出雲では小野田と林は走っていないが、距離が少し長くなる全日本では出場の可能性は十分にある。

さらに箱根ほど長くない全日本では十分活躍できるスピードのあるランナーも育ってきている。今年の出雲の1区で区間賞を獲得した橋詰大慧(4年)は5000メートルの青山学院大記録となる13分37秒75をマーク。生方敦也(3年)は関東インカレ2部の1500メートルを制した。

そして、青山学院大を率いるのは、チームを強豪校に育てた原晋監督。原監督の素晴らしさは目の前の大会を勝ちながら、チームを育てるところにあるだろう。もちろん、それを可能にする選手層の厚さがあるのだが、それをいかす力が指揮官にはある。

今年の出雲はそれが顕著だった。スピードのある橋詰、生方を使い、結果を残した。さらには、将来のエース候補である吉田圭太(2年)を使い、区間賞を獲得。吉田はこれで、全日本や箱根で使えるめどが立った。原監督は目の前の大会を戦いながら、次の大会のことや数年先のことまで考えて、選手を起用している。

絶対的エースがいないと言ったが、今年の青山学院大はそこが強みかもしれない。1人の力に頼る必要はなく、粒ぞろいの選手が力をあわせれば勝てるだけのポテンシャルがある。全日本を制して、史上初の2度目の学生駅伝三冠に前進するのではないだろうか。

指揮官の我慢が花開きつつある東洋大

青山学院大の行く手に立ちはだかるのは東洋大だ。

昨年の全日本は5区までトップを守りながら、6区のブレーキで5位と沈んだ。だが、その時のメンバーはすべて3年生以下。今年もその時のランナー全てが残っている。

昨季の東洋大は今季に向けた我慢のシーズンだった。将来のことを考え、学生三大駅伝は下級生を中心に起用。出雲、全日本は5位だったが、箱根では往路で優勝し、総合でも2位に入った。今年の出雲では青山学院大にあと一歩まで迫る走りで2位に。酒井俊幸監督が辛抱して種をまき続けたことで、今年は花を咲かせようとしている。

相沢晃(3年)は昨年の全日本1区区間賞、西山和弥(2年)は今年の箱根1区区間賞と、それぞれの世代を代表するランナーだ。今年の箱根3区区間賞の山本修二(4年)を加えた3人が東洋大の「3本柱」といえる。

さらに、今年の箱根10区区間賞で主将の小笹椋(4年)、出雲5区区間賞の今西駿介(3年)、同6区区間賞の吉川洋次(2年)と力のある選手がそろっている。昨季の三大駅伝の経験者が多いのも強みだろう。

出雲は序盤で失敗したが、同じ轍を踏まなければ全日本では青山学院大に勝つチャンスは十分にある。

スピードをいかせるか、東海大

昨年は出雲を制した東海大。実力のあるランナーがそろう3年生の「黄金世代」がチームを引っ張る。青山学院大、東洋大と並んで3強と呼ばれるが、出雲の走りはいまひとつだった。長野・佐久長聖高を強豪に育てた両角速監督が指揮を執っており、スピードランナーの育成に定評がある両角監督らしく、東海大の選手はスピード自慢がそろう。

1、2年時に出雲で区間賞を獲得した關颯人(3年)は5000メートルで13分35秒81の記録を持つ。今年の出雲はケガで欠場したが、昨年の出雲4区区間賞の鬼塚翔太(3年)もいる。2年連続で日本選手権1500メートルを制し、今夏のアジア大会にも出場した館澤亨次は、1、2年生の時に全日本で区間賞を獲得しており、他にも三上嵩斗(4年)、阪口竜平(3年)ら名の知れたランナーが数多くいる。

課題は長い距離を走れる選手がどれだけいるかだ。昨年の全日本では最終8区の19.7キロで逆転され、2位に終わった。ただ、前半で差をつけ、長い区間に余裕を持ってつなげば、15年ぶりの優勝も見えてくる。(続く)