先行逃げ切りがはまった駒澤大
学生3大駅伝の幕開けとなる出雲駅伝で、史上初となる2度目の「3冠」を狙う駒大が、同校が持つ大会記録を更新する2時間7分51秒で2年連続5度目の優勝を果たした。その圧勝劇は何が引き金になり、ライバルたちはどこでつまずいたのだろうか。そこには駅伝らしい定石と、駅伝を知らないからこその展開があった。
一般的に駅伝は「先行逃げ切り」が有利だと言われる。なぜなら、追いかける側はオーバーペースになることが多いからだ。一方、先行したチームは自分の力を出しやすくなる。もちろん、全ての大会でそううまくいくわけではないが、6区間45.1キロと距離が短い出雲ではこの定石が当てはまりやすい。
今回の順位変動を見れば分かるが、駒大は1区の途中でトップに立ってから、2度とその座を譲ることがなかった。まさに定石通りの展開だった。
一方、5000メートルの平均タイムでトップだった中大は1区で駒大から1分25秒遅れの13位のスタートとなったことが大きく響き、7位に終わった。エースの吉居大和がメンバー入りしなかったことも大きいが、1区の大幅な出遅れはあまりにも痛かった。
同じく優勝候補の青学大は1区で39秒遅れの7位と、こちらも出ばなをくじかれた形だった。2区で2位に上がったものの、駒大との差はなかなか詰まらず、優勝争いに絡むことはなく、5位で終わった。
意外な選手がレースを動かすきっかけに
1区での成績が今回の順位に大きく影響したのは事実だが、それにはあるきっかけがあったように思う。
普段、駅伝を走ることがない米国アイビーリーグ選抜の1区の選手が、早々とレースを動かしたことだ。
通常、1区は終盤まで集団で走ることが多い。なぜなら、1区はほかの区間以上に「失敗できない」区間だからだ。「先行逃げ切り」の逆にはなりたくないから、1区は終盤まで牽制し、大きな差がつきにくい。
今回もそうなると思っていたが、アイビーリーグの選手が早々とペースアップしたために、いつもとは違うレース展開になった。駅伝特有の展開を知らないアイビーリーグの選手には普通の走りだったかもしれないが、結果的にこれが各校の明暗を分ける形になった。
1区にエース格の篠原倖太朗を入れていた駒大は吉と出た。今期、1万メートルで日本人学生トップの記録を持つ篠原はこの「予想外」のペースアップに対応し、最後はトップでたすきをつないだ。
一方、中大は浦田優斗、青学大は野村昭夢を置いたが、3年生の2人はともに学生3大駅伝デビュー戦だった。浦田は4キロ付近で脱落し、野村は5キロ過ぎに遅れた。結果論にはなるが、2人には力を出しにくいレース展開となった。
なお、トップの駒大と、日本の大学で2番目にたすきを渡した國學院大との差は21秒だった。1区の1位と2位の差が昨年は9秒、一昨年は4秒だったことを考えれば、今年は1区で大きな差がついたことが分かる。
「ゲームチェンジャー」がいた創価大が2位、城西大が3位
今大会、躍進を遂げたのは2位の創価大、3位の城西大だった。両校に共通するのは「ゲームチェンジャー」がいたことだった。
創価大は3区のリーキ・カミナが2位に上がり、城西大も3区のヴィクター・キムタイが3位に。留学生が期待通りの走りで流れをつくったことが大きかった。
駒澤大は11月の全日本で3大駅伝連勝記録に並ぶか
今回、圧勝劇を見せた駒大はこれで3大駅伝4連勝となった。出雲が始まり、3大駅伝となった1989年以降、89年の全日本から91年の箱根まで優勝した大東大の5連勝が最長だ。
駒大はこの記録に挑む挑戦権を得た。11月5日の全日本が楽しみである。
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