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【バルセロナの心臓】シャビ・エルナンデスここにあり

2017 9/13 14:03dada
シャビ・エルナンデス選手
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クラブの生え抜き!シャビ・エルナンデスの誕生

シャビ・エルナンデス選手(以下、敬称略)は、「シャビ(チャビ)」の愛称で知られるが、正式な名前はシャビエル・エルナンデス・クレウスという。生年月日は1980年1月25日。

スペインのカタルーニャ、タラサに生まれた彼は、11歳の時にカタルーニャの伝統を重んじるFCバルセロナ(以下、バルセロナ)のユースへ入団した。バルセロナはいわば地元のクラブであり、シャビ少年にとっても身近なクラブだったろう。

バルセロナのユースは、世界中から多くの有望株が集めるが、彼の優れた技術は群を抜いていた。複数存在するユースのカテゴリーをどんどんと駆け上がり、1997年のバルセロナBにおいては、リーガ・エスパニョーラ2部への昇格、そして昇格後のチームの柱としての地位を確保するようになった。

翌年1998年の8月にはトップチームデビューを飾り、バルセロナBとの行き来を経験しつつも、やがてこのトップチームでも一定の地位を築くことに成功する。

ティキ・タカの体現者!極まるプレースタイルと頭脳

シャビはユース時代とトップチームの長年を通して、バルセロナの「ティキ・タカ」の哲学をものにした。ショートパスの多用、およびそのパスコースの複数確保、オフザボールと呼ばれるボールを持たない時の選手の動き、そのすべてが美しく合致した時、バルセロナの攻撃は炸裂する。

特にこのティキ・タカは2008-12シーズンにバルセロナの監督を務めたジョゼップ・グアルディオラ監督(以下、敬称略)の時代に創始、および最盛期を迎えたとされる。

シャビのプレースタイルはこのティキ・タカの哲学に基づいている。戦術眼に優れるシャビはどんな位置にいても、正確なパスを繰り出すことができる。パスの送り先が近かろうと遠かろうと、必要なスピード、軌道、タイミングを正確に理解しており、ボールをロストすることがない。精密機械のような彼のプレーぶりは「バルセロナの頭脳」とも呼ばれるようになり、この彼の頭脳の導きによりバルセロナの選手たちは身体を動かしていた。

シャビは特別ドリブルができる選手でもなければ、速く走れる選手であるわけでもない。ただ、正確なパスの技術と味方の統率力は世界でも随一で、この力によりバルセロナの輝かしい一時代の立役者となった。

また、同じ中盤で活躍していたアンドレス・イニエスタ選手(以下、敬称略)との相性の良さも抜群だった。イニエスタもシャビ同様にボールの扱いに長ける選手だが、シャビよりも推進力の面で優れる。シャビがオフザボールの動きと、長短のパスによって、ボールを前へ運ぶ土台を整え、イニエスタがその土台を基に易々と相手選手の間隙を縫うようにドリブルしていく。非常に合理的でありながら、彼らにしか成せない技だ。

当時のバルセロナの平均ポゼッション率は70%を超えるのが普通で、相手はジワジワと、しかし確実にバルセロナの華麗な攻撃により仕留められていった。グアルディオラの下で、バルセロナは1つの黄金時代を迎えていた。

無敵艦隊の最たる功労者!シャビとカシージャス

スペインは世界でも屈指のサッカー強豪国だが、その名声の高まりは、シャビとイケル・カシージャス選手(以下、敬称略)が同代表に在籍していた頃と時期を同じくする。

スペイン代表はかねてより、バルセロナとレアル・マドリードCF(以下、マドリード)の選手たちで構成されることが多い。バルセロナとマドリードは、スペインの複雑な歴史背景、そしてリーガ・エスパニョーラの覇権を100年以上にわたって争ってきたことなどが相まって、関係が芳しくない。
この関係の悪さは、クラブ間だけでなく選手間にも波及しており、代表でのプレーの質にも大きな影響を与えてきた。

そんなクラブ間の仲立ちをしたのが、バルセロナのシャビとマドリードのカシージャスだった。彼らはそれぞれのクラブのキャプテンを長く務めており、同僚たちをうまく統率する能力に長ける。
2008、2012のEURO連覇と2010のワールドカップ制覇は、この2人の存在無くして成し得なかったことだ。シャビはカシージャスのことを「チームに安定と信頼をもたらしてくれる存在」と讃え、カシージャスもまたシャビを親友であると認めていた。

シャビとカシージャスは宿敵関係にあるクラブに所属しながら、素晴らしい絆を構築した。「無敵艦隊」と呼ばれるにふさわしいスペイン代表は、スペインのサッカー協会でも監督でもなく、この2人こそが最たる功労者であるといえよう。

代表から2人が去った後のスペイン代表は輝きを失っている。この輝きが戻るのはいつの日になるのだろうか。

熾烈を極めるクリスティアーノ・ロナウドとの舌戦!

2015年にカタールのアル・サッドSCに移ったシャビは、ご意見番色を強めている。

シャビはともにプレーしたリオネル・メッシ選手のことを、世界最高の選手として度々賞賛するが、その比較対象に挙げられがちなクリスティアーノ・ロナウド選手(以下、敬称略)には苦言を呈することがある。

「クリスティアーノは最高のレベルに達している。だけど、彼の不幸は同じ時代に最高の選手(メッシ)がいるってことだね。彼はいつだってNO.1でいられるんだ」と発言。
これに対してロナウドは「シャビはすべてのタイトルを獲ったよね。だけど、彼はバロンドールを獲ったことがない。僕は3回獲ったんだがね。彼はカタールでプレーしている。でも、僕は彼が今もプレーを続けているのかどうかは知らないね」と反論した。

この激しい舌戦は度々メディアに取り上げられており、バロンドールの発表の度、あるいはバルセロナとマドリードが試合を行う度に、ひと悶着起きるのではないかと、内心、多くの人が期待している。

シャビが懸念するバルセロナの未来とキャリアの行方

ご意見番色を強めるシャビにとって、目下の議論テーマは「バルセロナの未来」のようだ。

バルセロナはシャビがプレーしていた頃に比べると、ユース出身者で構成されることが減少している。ユースの選手たちはバルセロナのトップチームに定着することなく、国内外の他クラブへ移籍する。そしてバルセロナは、国外のスター選手を大金をはたいて買うことが増えてきた。

シャビはこの事態を嘆き、「カンテラ(ユース)と、そのプレースタイル(選手起用)を強化すべき」といった発言をしている。
ただ、バルセロナの会長であるバルトメウ会長は「問題はシャビ、イニエスタ、メッシらすべての選手だ。メッシやネイマール、ブスケツらと競争することや、彼らが存在するチームに(若手が)存在することは難しい」と発言。強過ぎるスタメンの選手たちと、そこに割って入れない若手選手の難しい境遇を説明した。

バルセロナのような大きなクラブは新陳代謝が激しいが、それはスタメンに常にその時々の実力者を揃えなくてはならないからだ。故にその実力者の壁を越えられない、あるいは出場機会を得ることができず去っていく若手は大勢いる。
バルセロナは勝利を当たり前のように要求されるクラブであり、クラブとしても監督としても若手に出場機会を与えるというのは大きなチャレンジだ。

ユース時代から常に高いレベルにあったシャビが、古巣の現状を嘆く気持ちはわからないでもないが、バルセロナ側の歯がゆい気持ちもわからないでもない。

もしかするとこういった状況を変えるのがシャビかもしれない。バルセロナと強い結びつきがある彼ならば、監督としてコーチとして、あるいはフロントとしてバルセロナを内側から変える方針を打ち出すかもしれない。 バルセロナの頭脳は、これからのキャリアをどう思案しているのだろうか。