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共生社会を実現するブラインドサッカー ~ワールドグランプリを観戦してみた~前編

2018 4/11 11:10きょういち
ブラインドサッカー,ワールドGP2018,日本代表,イングランド代表
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※イメージ写真 Photo by Ververidis Vasilis/Shutterstock.com

ブラインドサッカーワールドGP2018

目が見えなかったり、弱視だったりする視覚障害者と、健常者が協力して戦うサッカーをご存じだろうか。その名をブラインドサッカーという。3月21日から東京都品川区の天王洲公園で開催された「IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)ブラインドサッカーワールドグランプリ2018」に足を運んでみた。

開幕戦となった3月21日の気温は、氷点下にならないものの、零度を少し超えた程度。時には雨の中に雪が混じるという、春分の日とは思えない悪天候だったが、スタンドには多くの観客が訪れた。このワールドグランプリは今年新たに創設された国際大会だが、主催者発表によると約1000人が観戦していた。ブラインドサッカーは略して「ブラサカ」と呼ばれるが、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、ブラサカが徐々に認知されていることを証明する開幕戦だった。

5人の選手以外にも、カギとなる人物がいる

この大会のことを語る前に、まずはブラサカがどんなスポーツなのか、説明した方がいいだろう。

コートの大きさはフットサルと同じ。1チームは5人(フィールドプレーヤー4人、ゴールキーパー1人)で対戦する。

ゴールキーパーは目が見える「晴眼者」や弱視の選手が務める。フィールドプレーヤーはアイマスクを着用し、条件を同じにする。フィールドで戦うのは、この5人だが、選手以外にカギとなる人がいるところが、通常のサッカーとは違う。 敵陣ゴール裏から、シュートコースなどを指示するスタッフがいる。その人をガイド、もしくはコーラーという。目が見えない選手はどこがゴールで、どういう状況かわからない。だから、ガイドが指示を出し、選手にどういう風にシュートを打てばいいのか指示し、得点につなげる。

ゴールキーパーも、通常のサッカー以上に役割が大きい。戦っている5人のうち、目が見えるのはゴールキーパーだけだ。だから、状況を目で把握できるのはゴールキーパーしかいない。声を出して選手たちを統率し、守備をまとめる役割を担っている。実際に試合を見ると、ゴールキーパーがどんどん指示を出しているのがわかる。

シャカシャカとなるボール

サイドラインにフェンスがあるのも特徴だ。高さは1メートル。外側に10度傾けられているのは、安全のため。選手は空間を把握する能力でおおよそ自分がコートのどこにいるかがわかっているものの、完璧ではない。時にはフェンスに激しくぶつかることもある。このフェンスの跳ね返りを使ったパスもOKだ。

目が見えない人がどうやって、ボールのある位置がわかるのか、と思っている人も多いだろう。それには秘密がある。ボールの中には小さな金属が入っている。そのため、転がると「シャカシャカ」という音が鳴る。これをもとに、選手はボールの位置を把握する。逆にボールが止まってしまうと、選手はボールがどこにあるのかわからなくなってしまう。そんな時は、審判が止まったボールを少し転がして、選手にボールの位置を知らせる。

選手同士が衝突しない工夫もある。試合を実際に見ればわかるのだが、目が見えないというハンディがあるにも関わらず、選手は思った以上にぶつからない。ポジションに戻っていくときなどは、時々手を広げて、周りに人がいないことを確認しながら走っている。

そして、ボールを持った選手に向かうときには、あるかけ声を出しながら向かう。そのかけ声は「ボイ」。スペイン語で「行く」を意味するのだという。この声を出さないと反則になる。

南米が強いブラサカ

ブラインドサッカーは1980年代から南米、欧州で普及し始めた。世界選手権が最初に開催されたのは1998年で、場所はブラジルだった。

世界選手権はこれまで6回開催され、ブラジルが4度、アルゼンチンが2度の優勝。パラリンピックは2004年のアテネ大会から採用され、これまでブラジルが4連覇を達成している。世界選手権、パラリンピックとも、「南米優位」の状況が続いている。

日本に国際的なルールが伝わったのは2001年と言われる。日本は世界選手権に2006年に初出場。これまで6位に入るなど、活躍している。

一方、パラリンピックに関しては出場はなし。2020年、母国で開催される東京パラリンピックに向け、競技力向上が課題となっている。

後編に続く