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森喜朗会長辞任の東京五輪、後任白紙撤回で3度目の失態

2021 2/14 06:00田村崇仁
森喜朗氏(左)と川淵三郎氏Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

後継指名の川淵三郎氏、一夜で急転辞退

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が2月12日、女性蔑視と受け取られた発言を巡る一連の問題の責任を取り、辞任を表明した。

開幕まで半年を切った時期の大混乱で後継指名された日本サッカー協会(JFA)元会長で選手村村長の川淵三郎氏(84)は「密室人事」と異論が噴出して一夜で急転、就任を辞退。日本社会の旧態依然とした体質をあぶり出し、人事は白紙に戻った。

政府側から女性がふさわしいと橋本聖子五輪相(56)の名前も浮上しているが、東京五輪を巡る白紙撤回は新国立競技場の建設計画、盗用疑惑が拡大した大会エンブレムの見直しに続き、これで3度目の失態となる。

森会長のトップ交代案に政府難色

「ポスト森」を巡るドタバタ劇は、選考の透明感を欠いたと言わざるを得ない。

組織委の定款で会長は理事会が選ぶルールなのに、森会長の辞任表明の前日に事実上の「後継指名」が表面化。五輪というビッグイベントで世界が注目する中、政府側も「引責辞任する張本人が密室で後継指名する茶番は国民の理解を得られない」(関係者)と難色を示したという。

森氏と川淵氏は早稲田大学の同窓で昔から気脈が通じた間柄でもある。森氏による後継指名は、辞任後も自身の影響力を維持するための「院政」につながるのではないかと世論の反発も広がった。

組織委はより透明性の高い手続きを取るため、後任会長の「候補者検討委員会」を置き、委員長に御手洗冨士夫名誉会長(85)が就任すると発表。選考の条件に男女平等、多様性などに関する高い認識を挙げて後任人事に着手するが、大会への不信感と混乱は簡単に収まりそうにない。

海外メディアも「泣き面に蜂」と集中砲火

森氏の女性蔑視発言を巡る混乱は海外メディアの関心も高く、集中砲火を浴びせた。中国メディアは新型コロナウイルスの脅威が続く中で「東京五輪、泣き面に蜂」と指摘、米NBCニュースも「新たな一撃」と報じた。

AP通信は、世界経済フォーラムによる女性の社会進出の指標で日本は153カ国中121位だったと紹介し、日本が先進国の中でも女性の進出が極めて遅れている実態を印象づけたと解説している。

英紙ガーディアン電子版は「議論や透明性がないという批判の中、森氏から就任要請を受けた川淵氏は辞退」と報じた。

とどめを刺したIOCとスポンサーの圧力

森氏の発言から8日後。最後のとどめを刺したのはSNSで世界に広がった批判に加え、国際オリンピック委員会(IOC)やスポンサーの圧力の高まりだった。多くのスポンサー企業が実名で遺憾の意を表明し、最高位スポンサーのトヨタ自動車も「トヨタが大切にしてきた価値観と異なり、誠に遺憾だ」との豊田章男社長のコメントを発表している。

巨額のテレビ放送権料で五輪の競技運営に多大な影響力を持つ米NBCテレビは「森会長は性差別でテニスの大坂なおみらから批判を受けた。彼は去らなければならない」と題した衝撃的な記事を電子版に掲載した。

「平和の祭典」と呼ばれる五輪は複雑な利害が絡む巨大ビジネスでもある。IOCは当初、森氏の謝罪会見を受け「この問題は決着したと考えている」と不問に付したが、世論や選手、協賛社から非難の声が相次いだことを受けて「彼の発言は完全に不適切だ」と一転して批判に転じる声明を発表した。この動きも決定打となった。

森氏の後任候補に挙がった川淵氏に期待されたのは、逆境に立ち向かう誰もが認める強力なリーダーシップだった。Jリーグ初代チェアマンとしてプロサッカーの強固な土台を築き、バスケットボール界の改革も進めてBリーグ誕生で一躍救世主となった人物だ。

次期会長に求められるのは、短期間でコロナ対策や観客受け入れなど山積する課題を解決できる実行力と世論への発信力。組織委は政府の圧力を受けず、透明な手続きで早急に後任会長を選定し、残された時間で大会準備を進めて信用を回復するしかない。

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