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テコンドーと空手、五輪競技の生き残りかけて場外戦?

2020 3/3 17:00田村崇仁
テコンドー(左)と空手、五輪で生き残るのは?Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2024年パリ五輪は日本伝統の空手が落選

朝鮮半島発祥の武道が原型とされるテコンドーと沖縄発祥の日本武道である空手。五輪で生き残るのはどちらなのか―。

2020年東京五輪は初めて両競技とも実施されるが、悲願の五輪競技入りを東京で決めたばかりの空手は2024年パリ五輪の追加種目候補から意外にも落選した。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンのほか、ブレイクダンスが初めて選ばれた一方、フランスで若者人気へのアピールが不足したのが一つの理由とされた。だが水面下では五輪競技入りを巡ってテコンドーとの政治的な激しい争いも見え隠れする。

世界空手連盟(WKF)のエスピノス会長(スペイン)は「日本伝統の空手は世界に『KARATE』として普及し、1億人以上が取り組む最も人気がある格闘技だ」と強調し、国際オリンピック委員会(IOC)の重視する「若者」や「男女平等」にも合致する点をアピールしてきた。美しい演武の「形」とスピーディーな突きと蹴り技の応酬となる「組手」は東京五輪でその魅力を世界に発信するデビューとなる形だが、パリ五輪の無念を受け止め、2028年ロサンゼルス五輪での復帰へ早くも全力で動き出している。

「似通った競技種目は削除する方針」にテコンドーも危機感

テコンドーは1988年ソウル五輪で公開競技として採用され、2000年シドニー五輪で正式競技に昇格した。「足のボクシング」ともいわれ、スピーディーで見応えのある足技が最大の見どころだ。華麗でダイナミックな蹴り技は前蹴り、横蹴り、回し蹴り、後ろ回し蹴りなど種類は実に多彩。2020年東京大会で6大会連続の実施となり、世界に約8000万人の愛好家がいるといわれる。

組手(キョルギ)と型(プムセ)という2つの形式で競うテコンドーのうち、五輪に採用されているのは組手のみ。顔や胴に防具をつけており、直接当てて攻める「フルコンタクト」だ。頭部への蹴りは3点、回転が加わると5点。胴部への蹴りは2点、回転が加わると4点となる。五輪での実績でみれば圧倒的なアドバンテージがテコンドーにあるが、関係者は危機感を隠さない。

IOCは肥大化する大会のスリム化で似通った競技種目を削除する方針を打ち出しており、同じ打撃系の東洋武術である空手とテコンドーは将来的にも五輪のライバルになると考えられるのだ。さらに中国の武術も虎視眈々と五輪入りを狙っている。

一連の騒動から正常化図るテコンドー

強化体制を巡ってトップ選手と幹部の対立が続き、体制が一新されたテコンドーは2月9日、東京五輪最終選考会で日本代表の顔触れも決まった。女子57キロ級は2015年世界選手権覇者の浜田真由(ミキハウス)が3大会連続の代表入り。同49キロ級は全日本選手権3連覇中の山田美諭(城北信用金庫)が初めて代表に選ばれた。男子58キロ級は全日本選手権で3連覇している鈴木セルヒオ(東京書籍)が制覇。同68キロ級では弟の鈴木リカルド(大東大)が優勝し、日本人の父と南米ボリビア人の母を持つ兄弟での初出場を決めた。

五輪でのメダルは、2000シドニー五輪で「銅」に輝いた岡本依子のみ。近年はアフリカや中東の金メダリストも誕生するなど世界のレベルは上がっているが、東京大会で新たな日本のヒーローが誕生する期待感も高まっている。

空手は形で男子の喜友名諒(劉衛流龍鳳会)、女子の清水希容(ミキハウス)、組手では男子84キロ級の荒賀龍太郎(荒賀道場)や女子55キロ級の宮原美穂(帝京大職)らが続々と五輪代表を確定させ、金メダルへの期待が集まる。

東京五輪ではテコンドーと空手のもう一つの場外戦も目が離せなさそうだ。