東京五輪、世界選手権でも圧勝V
空手発祥の地とされる沖縄で育ち、男子形で一時代を築く31歳の喜友名諒(劉衛流龍鳳会)の強さはどこから来るのか―。見る人を引き込む圧倒的な演武と存在感は今なお、他の追随を許さない。
空手が初めて実施された今夏の東京五輪で金メダルに輝き、11月20日にドバイで行われた世界選手権でも史上初の4連覇を達成。決勝の形は五輪決勝と同じ劉衛流の「オーハンダイ」で鋭い突きや蹴りの力強い演武を見せつけ、28.38の高得点で五輪銀メダルのダミアン・キンテロ(スペイン)に1.72点の差をつけて圧倒した。
技の動きやタイミングなどを評価する技術点(21点)は19.74をマーク、スピードや力強さの競技点(9点)は8.64を出し、中学生から師事する佐久本嗣男氏が1980年代に築いた3連覇を超える偉業となった。
「野生動物」の動画で磨く本能の闘争心
喜友名は10月、五輪とパラリンピックに出場した選手の交流の場となった日本オリンピック委員会(JOC)主催のイベントで、強さの秘密の一端を明かしている。
東京パラリンピックの車いすラグビーで銅メダルを獲得した池崎大輔から「顔力」について「見るからにオーラが出る顔。威嚇したらみんなが道を空けてくれるような、そういう顔を僕も身につけたい。気迫がすごかった」と質問されると、こう答えたのだ。
「沖縄の遺伝子というか、両親の遺伝子に感謝したいと思います(笑)。あとは、稽古からくる自信が全身から出る気迫にもつながってくるのかなと」
さらに「普段から野生動物の獲物を狙うシーンを見ながら、野生になりきってまねしている。ぜひ参考にしてください」と付け加えると、賛同する選手が相次いだ。
この「野生動物」発言には池崎も素早く反応し「ライオンとか、ヒョウとか狩りをする動画は僕も見ている。自分もしっかり野生の勘を持ちながら、パフォーマンスにつなげていく。本能で闘う」と応じるユニークなやり取りがあった。
アスリートの闘う本能とは、こうした隠れた努力で培われることを改めて思い知らされる場面だった。
12月の全日本では前人未到の10連覇に挑戦
故郷でもある空手発祥の地、沖縄で腕を磨き続ける絶対王者が「百獣の王」からヒントを得て、他を圧倒する「顔力」を醸し出しているとは何とも興味深いエピソードだ。
12月の全日本選手権では、自身の持つ史上最多記録を更新する10連覇に挑む。その体幹の強さから生み出される圧倒的なパワーも武器。突きや蹴りなどの技を繰り出し1対1で勝敗を競う組手に対し、1人で演武する形は世界空手連盟(WKF)が定める102種類の形から選択し、その正確さや総合的な完成度によって勝負が決まる。
「喜友名時代」はまだしばらく続きそうだ。
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