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空手の新ルール、東京五輪へ旗判定やめ採点制導入

2019 3/10 15:00田村崇仁
空手,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒ全日本空手道連盟

分かりやすさ重視で高評価

2020年東京五輪で追加種目として初めて実施され、日本勢が金メダル量産を狙う空手は競技の魅力アップへ今年から新ルールが導入された。全日本空手道連盟によると、国内で200万人以上、世界で1億3000万人以上の愛好者がいる沖縄発祥の武道。攻撃と防御の技を組み合わせた1人の演武で出来栄えを競う「形」は従来の審判員5人による旗判定を変更し、採点方式へと大きくかじを切った。勝敗の基準を分かりやすくするのが狙いで、審判員7人が技術点と競技点を評価する。

1対1の対戦形式で階級別に戦う「組手」は女子の競技時間が従来の2分から男子と同じ3分に延びた。国際オリンピック委員会(IOC)が提唱する男女平等の観点に配慮した措置だ。

形は技術点7割

1月27日、空手の新ルールで行われた初めての主要国際大会、プレミアリーグ第1戦がパリで行われ、形の決勝で男子は世界選手権3連覇中の第一人者、喜友名諒(劉衛流龍鳳会)が26.92点の高得点で、ウーゴ・キンテロ(スペイン)を退けて頂点に立った。女子は女王の清水希容(ミキハウス)が26.14点で優勝し、幸先の良いスタートを切った。

新たな採点方式は審判員7人が技の正確性や動き、タイミングなどを評価する「テクニカル・パフォーマンス(技術点)」と、力強さ、スピード、バランスをみる「アスレチック・パフォーマンス(競技点)」を10点満点(5.0~10.0の0.2点刻み)で採点する。フィギュアスケートなどと似た仕組みだ。

それぞれ最高点と最低点の上下二つずつの点を除いて中間の三つを足した合計点を出し、これを技術点は70%、競技点は30%に換算した点の合計で順位を競う。空手は伝統的に「スピードやパワーよりも技術が大事」という考え方があるため、技術点の割合がかなり大きい。満点は30点となる。

空手採点表,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

喜友名は驚異的

これまでの審判の傾向を見ると平均的に9.0以上はほとんど出ず、合計23~25点程度が大半。こうした中、絶対王者の喜友名の驚異的なスコアは目を引き、9点台を連発。パリ大会の決勝は技術点で9.6、競技点で9.4をつけた審判もおり、2位に合計1.92点差をつける圧勝だった。持ち前の力強さに加え、流れるような動き、正確な呼吸法、立ち方、気迫を込めた演武は世界から高く評価された。

これまでは演武を終えた選手が横に並び、主審の笛の後に旗判定が下った。旗判定では必ずしも明確でなかった差が数値化されたことで、喜友名や清水は一段上の実力が証明された感がある。勝者が決まる際の緊張感と盛り上がりは旗判定の方が大きかった面もあるが、観客の反応は上々だ。

IOCから「空手を知らない人には勝敗の理由が分かりにくい」と指摘されたのを受け、世界空手連盟(WKF)のエスピノス会長(スペイン)は「空手を真の国際スポーツにする必要がある。点数制なら説得力がある」として長年の議論の末に採点制を導入。「日本勢は基本と技術がしっかりしているので有利になる」とみる関係者は多く、女子の清水は「採点制は最終的に自分自身との闘い」と受け止めた。

組手女子は3分

女子の組手は競技時間が3分と長くなり、より一層の集中力やスタミナが求められるようになった。万全の対策で臨んだ68キロ超級の植草歩(JAL)は決勝でナンシー・ガルシア(フランス)に7-3で逆転勝ち。新ルールの下で初代女王の座に就き、試合運びに手応えをつかんだ形だ。

試合中盤に地元フランス出身のガルシアに攻め込まれて1-2と劣勢に陥ったが、最大3得点がもらえる上段蹴りの大技を決めて4-2と逆転。「3分になったことで余裕を持って試合に臨めた」と変更を追い風にして逆襲に転じ、その後も前に出てくる相手に突きを合わせてポイントを重ねて7-3で快勝した。

従来の2分制では先制点が重視され、先行逃げ切りのスタイルが一般的だった。だが3分になったことで先制されても逆転の可能性が高まり、試合展開の幅が広がった形だ。日本のエース、植草も有酸素運動を組み合わせたトレーニングで終盤の苦しい場面でも爆発力を出せるように意識。昨年の世界選手権決勝では先手を奪われて冷静さを失い、2連覇を逃しただけに頂点に返り咲いた喜びは大きく、金メダルを期待される東京五輪へ大きな一歩を踏み出した。

東京五輪の空手 開催都市が提案する追加種目として、組手の男女各3階級と、形の男女の計8種目を実施。世界選手権の組手は男女各5階級だが、男子は67キロ級、75キロ級、75キロ超級、女子が55キロ級、61キロ級、61キロ超級で争われる。各種目の出場枠は10。日本には全種目で1枠ずつの開催国枠が与えられた。団体種目はない。

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