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【高松宮記念】春のGⅠ祭りがいよいよ開幕 「波乱」と「悲願」の歴史を振り返る

2021 3/23 11:00緒方きしん
高松宮記念過去5年の優勝馬ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

「最優秀短距離馬」に直結しない

春の短距離王決定戦・高松宮記念。2月のフェブラリーSはまだどこか「年明けのGⅠ」くらいの感覚ではあるが、高松宮記念からは怒涛のGⅠ祭りが開幕する。大阪杯のGⅠ昇格により、さらにそのポジションが明確になった感がある。

古くは2000mのGⅡ高松宮杯として開催され、ハイセイコーやトウショウボーイ、ハギノトップレディらが勝利。最近盛り上がりを見せている某競馬コンテンツに登場するダイタクヘリオスやオグリキャップ、ナイスネイチャ、マチカネタンホイザらが、2000m時代の本レースを勝利している。

GⅠ昇格した1996年からスプリント競走となり、2000年以降は3月開催に移行、現在の形態に落ち着いた。昇格後、しばらくは連覇する馬が登場しなかったが、2010年・2011年にキンシャサノキセキが遂に連覇を達成。さらに2012年・2013年はカレンチャン・ロードカナロアで安田隆行厩舎が連覇している。

しかし、JRA賞最優秀短距離馬の受賞になかなか直結しないレースでもある。ここ10年の勝ち馬は、2013年ロードカナロア・2018年ファインニードル(ともにスプリンターズSも制覇)が最優秀短距離馬に選出されているのみ。その分、波乱も多い一戦として知られる。

1番人気は大苦戦。ビッグアーサー以降は連対も叶わず

ビッグアーサーが初のGⅠタイトルを獲得した2016年。その年は馬券圏外の4着に16番人気アクティブミノルが食い込んだものの、上位は1番人気-2番人気-3番人気と手堅い決着。5着も5番人気のエイシンブルズアイだった。その年を境に高松宮記念は波乱の連続になり、1番人気馬は4年連続で連対すらできていない。

高松宮記念2016~2020年の優勝馬ⒸSPAIA



2020年は、1番人気タワーオブロンドンが、高松宮記念を得意とする名手・福永騎手を鞍上にしながらも12着に敗れ、2番人気のグランアレグリアは2着。特にグランアレグリアはその後安田記念・スプリンターズS・マイルCSとGⅠで3連勝しているのだから、むしろ「グランアレグリアでも勝てない」、番狂わせが多いレースという印象が強まった気もする。

2019年は、1着こそ3番人気ミスターメロディが勝利しているが、2着にはセイウンコウセイ(単勝オッズ108.0倍)、3着にはショウナンアンセム(単勝オッズ358.9倍)が食い込んで、三連単44974.7倍の大波乱が巻き起こった。

そもそも、歴史的名スプリンター・ロードカナロアが初GⅠ制覇を目論み、満を持して挑んだ2012年ですら3着に敗れていることからも、1番人気にとって相当ハードルの高いレースであることは間違いない。

超良血馬キングヘイローが果たした、悲願のGⅠ制覇

一方で、高松宮記念は『悲願のGⅠ制覇』が多いことでも知られる。オールドファンにとって印象深いのは、キングヘイローが制した2000年の高松宮記念ではないだろうか。

超良血馬として、デビュー前から注目を集めていたキングヘイロー。当時、若手期待の星であった福永騎手を背に、デビュー3連勝を飾った逸材だった。しかし、生まれた年が悪かった。まだまだ若かった福永騎手の騎乗にも一因はあるが、皐月賞はセイウンスカイ、ダービーはスペシャルウィークという名馬の前に敗れる。

有馬記念・宝塚記念も同じく同期のグラスワンダーには敵わず、かといって安田記念・マイルCSは、やはり同期のエアジハードに勝てなかった。それでは、とダートに転向してぶっつけで挑んだフェブラリーSでは1番人気になるものの、同期のウイングアローが優勝するなか13着に敗れた。

そしてその次戦、ようやく『悲願のGⅠ制覇』を果たしたのが、この高松宮記念だった。その時のキングヘイローは4番人気、2着馬ディヴァインライトは8番人気。2019年ほどのインパクトある不人気馬ではなかったが、それでも馬連は163.3倍の万馬券だった。ちなみにキングヘイローにクビ差敗れたディヴァインライトの鞍上は、福永騎手である。

以降も、この舞台で初のGⅠ勝利を挙げる馬は多く、現在も香港馬エアロヴェロシティが勝利した2015年を除けば6頭連続でGⅠ初制覇が続いている。

今年は見られるか悲願のGⅠ制覇……それとも

今年の高松宮記念メンバーを見てみると、GⅠ実績馬が多い。「GⅠなんだから……」といえば当たり前ではあるが、勢いのある4歳馬からは2歳女王レシステンシア、NHKマイルCラウダシオンが登場。さらにここを勝利したことのあるベテランからは6歳馬モズスーパーフレア、8歳馬セイウンコウセイが参戦してきている。

そんな中で『悲願のGⅠ制覇』という言葉がふさわしい馬はどの馬か探してみると、2016年の朝日杯FS以来3度GⅠに挑戦してきた7歳馬レッドアンシェル、同じくGⅠに3度挑戦しているカツジ、そして昨年ヴィクトリアマイルでアーモンドアイの2着と惜しくも戴冠を逃したサウンドキアラの名前が目に飛び込んでくる。

徐々に人が戻りつつある競馬場。昨年のGⅠは1番人気馬の勝利が多かったが、それは果たして無観客の影響もあるのだろうか。今年のGⅠ開幕戦・フェブラリーSでは、確かに1番人気馬カフェファラオが勝利したが、この中京の舞台でその流れが続くのか、否か──。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。レオダーバンの菊花賞をみて競馬の魅力に取り憑かれ、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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