世界ランキング1位と2位のグリップ
2021年全米オープン覇者で世界ランキング1位(3月7日時点)のジョン・ラームと、2020年全米プロ、2021年全英オープンの覇者で同2位のコリン・モリカワには共通点がある。それは、二人とも左手のグリップがウィークグリップということだ。
左手がウィークとは、アドレス時に左手甲が目標方向を向く状態のことで、左手甲がやや正面を向くグリップをストロンググリップという。最近のゴルフクラブの特性にはストロンググリップが合っている、という論調の意見も聞かれる中、なぜラームとモリカワはウィークグリップを採用しているのだろうか。
左手ウィークグリップのメリット
ウィークグリップにはメリットとデメリットがある。
急激なフェースターンの防止と、人によっては左腕と胴体の一体感が高まる点がメリットだ。特にパワーヒッターは、スイングのタイミングが少しずれて急激にフェースターンをしてしまうと強烈に左に曲がる。右よりも左へのミスの方が曲がりが大きくなるため、取り返しがつかないことになりやすい。左手をウィークにすることで、左へ曲がるリスクを抑えて躊躇なくハードヒットしやすくなる。
ラームはコンパクトなトップで、独特の速いスイングテンポ。切れ味鋭いショットは飛距離と方向が両立している。ティーショットからグリーンに乗るまでにどれだけスコアを稼いだかを示すSG(ストロークゲインド):ティー・トゥー・グリーンは昨季米ツアー1位で、今季も現時点で1位。これらは、左手のウィークグリップのメリットを活かしている結果だろう。
モリカワはゆったりとした独特の始動で、アドレス時の体幹、腕、クラブの一体感を崩さない意識がうかがえる。この一体感は肘の内側が正面を向いた状態で、肘が胸の上に乗っている方が出しやすい。左手グリップをウィークにすることで、肘の内側が正面を向きやすくしているのだ。
さらに、モリカワは右肘の内側も正面を向きやすくなるよう、右手はストロンググリップにしている。つまり、両腕とも肘の内側を正面に向けるようグリップしているのだ。
モリカワのSG:ティー・トゥー・グリーンは、昨季米ツアーでラームに次ぐ2位。今季は現時点で6位につけている。安定感抜群のショットを支えている理由として、体幹、腕、クラブの同調と、無理なくそれを可能にしているグリップが挙げられる。
左手ウィークグリップの注意点
左手のグリップは、ウィークの方がストロングよりも良いというわけではない。二人のスイングコンセプトにマッチしているグリップがウィークであるだけで、当然デメリットや注意点もある。
左手ウィークは左腕の力を使いにくく、クラブフェースが開きやすくなる。クラブヘッドが大型化している最近のクラブは、モデルによってはフェースが一度開くと閉じにくいという特性がある。その場合、なおさらフェースが開きやすくなってしまう。
ラームやモリカワのスイングでは、トップオブスイングやインパクトで左手を掌屈(手の平側に折る)させてクラブフェースを閉じる力を出している。これができなければ、左手ウィークグリップで安定して目標方向にボールを飛ばすことができないのだ。
スタンダードグリップになる予感
タイガー・ウッズやブルックス・ケプカはグリップで左へのリスクを軽減するのではなく、左肘をインパクトからフォローで少し抜くことで急激なフェースターンを抑え、左へのリスクを軽減させている。
また、左手ストロンググリップで元世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンは、スイングに右へ飛ぶ要素を入れて、左手グリップの左に飛ぶ要素と調和させている。ダウンスイング以降の体の左回転や、強めのハンドファーストインパクトがそれにあたる。
グリップは、その時代の強い選手のものがスタンダードとされる風潮があるため、これまで以上に左手のウィークグリップを肯定する意見が多く聞かれるようになるかもしれない。ラームやモリカワのようなグリップに調整や変更をする場合は、メリットや注意点などを整理してから行いたい。
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