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女子ゴルフ古江彩佳、宮里藍も果たせなかった米ツアー新人Vへ必要なこと

2022 2/21 11:00森伊知郎
古江彩佳,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

米本格デビュー戦で18位の上々スタート

今シーズンから米LPGAツアーのメンバーとなった古江彩佳が上々のスタートを切った。“デビュー戦”となった「ゲインブリッジLPGA」で18位。2戦目の「ドライブオン選手権」では最終日に7つのバーディーを奪って「67」と伸ばし、30位でフィニッシュした。

古江は昨シーズンの日本ツアーで6勝を挙げ、稲見萌寧と最後まで賞金女王争いを続けてランクも2位になるという堂々の成績を引っさげて乗り込んだだけに「これぐらいはやってくれるだろう」との見方をするかもしれない。あるいは物足りなさを感じるかもしれない。

同じように米LPGAツアーのメンバーとなる前のシーズンで6勝を挙げ、やはり賞金ランク2位で乗り込んでいったのが2006年の宮里藍だった。

ハワイで行われた開幕2連戦は48位と24位。この2試合は私も現地で取材していた。前年の大活躍で日本では横峯さくらとの2人で起こしたブームの絶頂期ともいえる時期だっただけに「藍ちゃんといえども、アメリカでいきなり上位に入るのは難しいものなのだな」と感じたものだった。

さらに加えると、2017年に米LPGAツアーのメンバーとなった畑岡奈紗は初戦で予選落ちだった。その後勝利を重ねている“先輩”たちの出だしと比べてみると、古江の成績を評価できることがわかるはずだ。

各部門のスタッツも悪くない。フェアウェーキープ率は80.61%でランク26位。パーオン率は72.22%で27位。パーオンしたホールでの平均パット数1.77(35位)。1ラウンドあたりの平均パット数は29.29で40位とバランス良く稼いで、ポイントランクでも34位につけている。

スタートから安定した成績を出せているとなると、藍も畑岡も成し遂げられなかったルーキーシーズンでの優勝への期待がかかる。

ちなみに藍が初優勝を挙げたのは4シーズン目の2009年。畑岡は2年目の2018年だった。ここに至るまでのシーズンのスタッツを振り返ってみると、藍は2008、09年のフェアウェーキープ率とパーオン率が100位前後。畑岡はルーキーイヤーの両部門で150位台といった「ウィークポイント」が見られるのに対して、古江はそれがないだけに、勝利への期待をしてしまうのだ。

優勝に必要な「ストロングポイント」

では実際に優勝するために何が必要か、となると「ストロングポイント」を確立することだろう。藍が初優勝を挙げた2009年シーズンは、前年に79位だった「パーオンしたホールでの平均パット数」が5位に。「パーオン率」も12位(前年96位)に上がっている。

パーオンしてパットが入ればいいスコアとなるのは当然で、「平均スコア」も48位から4位へとアップした。ちなみに年間5勝を挙げて、日本人男女を通じて唯一の世界ランク1位にもなった翌2010年シーズンは「パーオンしたホールの平均パット数」が1位。「1ラウンドでの平均パット数」も3位で「平均スコア」が7位と、明らかにグリーン上でスコアを作っていたのかがわかる。

この頃の藍のパッティングについては、米LPGAツアーで2度の賞金女王になり、リオ五輪では金メダルも獲得したパク・インビ(朴仁妃)が「世界一」と評するなど、多くの選手が参考にするほどだった。

また畑岡の2018年のスタッツを見ても、「パーオンしたホールでの平均パット数」が2位。「1ラウンドでの平均パット数」が4位とトップクラスにつけている。これら2部門は前年も12位と5位で元々高い技術を持っていたことに加え、「フェアウェーキープ率」と「パーオン率」を前年から改善させたことで「平均スコア」が137位から10位へと一気にアップ。

藍と同じくパットが「ストロングポイント」でショット力を向上させたこと、多くのトーナメント会場が2年目ということで、前年からの積み上げでコースマネジメントも上手くできるようになったことが勝利につながったといえる。

そうなると、やはりパットということになるが、他の部門での“強み”も磨いてほしい。例えば、身長154センチの小柄で米LPGAツアー通算8勝を挙げたキム・ミヒュン(金美賢)は多くの選手から「彼女のフェアウェーウッドの精度は、私のウェッジ並みかそれ以上」と言わせるほどの正確性を誇っていた。

このように「アヤカの〇〇はツアーでトップクラス」と周りに言わせる何かを身に付けられるかがカギになる。

藍、畑岡と古江の3人とも平均飛距離は下位の部類になってしまう。こればかりは今から大幅なアップは見込めないので、なおさら他の部分での「武器」がほしい。

渋野日向子も来週のHSBC女子世界選手権にいよいよ登場

ストロングポイントが欲しいのは、3月3日からの「HSBC女子世界選手権」(シンガポール)でいよいよ米LPGAツアーのメンバーとしてデビューする予定の渋野日向子も同様だ。昨シーズンは日米両ツアーともに各部門のスタッツがランク対象外となっているが、日本ツアーで記録した「パーオンしたホールでの平均パット数1.7865」はランクに当てはめると8位に相当する。

「全英女子オープン」を制し、スマイリング・シンデレラとして一躍世界に名を知られるようになった2019年は「サンドセーブ率」(グリーン周りのバンカーから2打以内でホールアウトした確率)で85.71%を記録した。

米LPGAツアーでの計3試合だったのであくまで“参考記録”でしかないが、持ち前のアグレッシブなゴルフでピンを果敢に狙い、グリーンに乗せればバーディーチャンス。攻めた結果でバンカーに入れてもパーセーブしてスコアを落とさない、というゴルフで勝利をつかんでほしいものだ。

渋野は日本ツアーでの「1ラウンドあたりの平均バーディー数」部門で2019年シーズンに1位となった。昨シーズンは規定ラウンド数を満たしていないためランクに入っていないが、73ラウンドで262個のバーディーを奪っており、1ラウンドあたりにすると「3.616」で、この部門で1位となった賞金女王の稲見萌寧の「3.7343」に続いて2位に相当する数字をマークしている。

バーディー量産で全英以来の優勝、となれば、いかにも渋野らしい。そんなシーンを想像すると、次の試合がより待ち遠しくなってくる。

《ライタープロフィール》
森伊知郎(もり・いちろう)横浜市出身。1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社でゴルフ、ボクシング、サッカーやバスケットボールなどを担当。ゴルフではTPI(Titleist Performance Institute)ゴルフ レベル2の資格も持つ。

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