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渋野日向子、東京五輪へ全米女子オープンで証明した新たな武器

2021 1/2 11:00田村崇仁
渋野日向子Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

成長のアプローチ

1年4カ月ぶり2度目のメジャータイトルに迫ったが、あと一歩届かなかった。

2020年12月14日、米ヒューストンのチャンピオンズGC(パー71)で行われた女子ゴルフの海外メジャー最終戦、全米女子オープン選手権の最終ラウンド。1打リードの単独首位から出た22歳の渋野日向子は2バーディー、5ボギーの74で逆転を許し、通算1アンダー、283で2打差の4位に終わった。

大会のデータで振り返ると、パーオン率は平均67%で全体の11位。ショット、パットとも絶好調だった第1ラウンドは83%、第2ラウンドは78%だった数字が最終ラウンドで44%に下がったのが響いた形だが、その中で粘りを見せた新たな武器のアプローチに成長の跡を証明した。

見せ場は最終ラウンドの5番(パー5)。グリーンを狙った3打目がミスショットでオーバーし、奥のラフへ。続く4打目は芝が薄く硬い土という難しいライと位置からのアプローチとなったが、ウェッジのバウンスを巧みに使った絶妙な距離感で打ち上げて約2メートルに寄せた。惜しくもチップインバーディーとはならなかったものの、東京五輪を視野に海外メジャーでも通用するアプローチを証明した一打だった。

パーセーブ最優秀候補?

不調に苦しんだ渋野が進化を求めて取り組んだ課題の一つが、グリーン周りでアプローチのバリエーションを増やすこと。ボールを低く打ち出すピッチエンドランだけでなく、米ツアー参戦を見据えてフェースを開いて球を柔らかく打ち上げるアプローチを武器に加えた。

2019年は国内4勝を挙げ、海外メジャーのAIG全英女子オープンでも日本勢42年ぶりの優勝と大躍進。世界中のゴルフファンが「スマイリング・シンデレラ」と賛辞を贈る中、オフの間にトレーニングに力を入れて肉体改造も図った。

こうした鍛錬の積み重ねが海外メジャーの優勝を争う厳しい局面でもアプローチ技術で攻略する引き出しにつながり、米ゴルフダイジェストは「パーセーブ・オブ・ザ・イヤー候補」と称賛した。

バーディー数5位

ドライビングディスタンスは平均240.4ヤードで34位。雨も降った影響でフェアウエーのランが出にくい状況はあったが、予選ラウンドから首位を走った要因はパーオン率の数字が示す通り、セカンドショットの好調さにもあった。

ただ最終日は寒さによってボールが思ったほど飛ばない中、ピン位置も難しくなり苦戦。セカンドショットは高い弾道で止められる技術が求められた。 パッティングは118回で全体16位。決勝ラウンドではやや精彩を欠く場面もあったが、どっしりと構えてストロークも安定していた。バーディー数は計13個で全体5位と勢いに乗ると止まらない爆発力を秘めた復調ぶりも印象付けた。

東京五輪も射程圏

女子ゴルフの最新世界ランキングで全米女子オープン4位に入った渋野は13位に浮上し、畑岡奈紗の7位に次いで日本勢2番手。古江彩佳は16位、鈴木愛は22位に下がった。今季開幕からの不調で一時は遠ざかりかけていた東京五輪の大舞台も再び射程圏にとらえている。

初の海外メジャーで一気に頂点に立った全英女子オープンと比べ、誰もが知るメジャー女王として臨んだ今回の全米女子オープンのプレッシャーは比較にならないだろう。しかも不振にあえいだ1年を払拭し、優勝争いの主役を演じて4位という成績を残したことは誰にもまねできない「才能」であり、大きな一歩になったのは間違いない。

新型コロナウイルスが猛威を振るう中、2021年はどんな活躍で明るい話題を届けてくるのか―。重圧や失敗も糧にして笑顔で進化を続ける渋野から目が離せない。

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