GPファイナルはマリニン初優勝、宇野昌磨は2位
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ上位6人で争われるGPファイナルの男子は12月9日まで北京で行われ、まれに見るハイレベルな戦いとなった。
「4回転の神」の異名を取る19歳のイリア・マリニン(米国)がショート・プログラム(SP)、フリーともに1位となり、世界歴代3位の314.66点で初優勝。SPで世界初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を成功させ、フリーでは4回転半ジャンプで転倒したものの、4種類計5度の4回転ジャンプを決める異次元の演技を見せた。
前回覇者で世界選手権王者の25歳、宇野昌磨(トヨタ自動車)は磨きを掛ける「表現力」で対抗したが、SP、フリーともに2位の合計297.34点で2位。初出場で北京冬季五輪銀メダルの20歳、鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)は288.65点で3位となった。
国際スケート連盟(ISU)の公式サイトによると、宇野は「かなり自分自身勢いがあったと思うけど、完璧ではなかった部分もある。今シーズンはとても幸せ。クオリティーの高い他のスケーターたちと競い合い、一緒に向上していけることをとても楽しみにしている」とコメント。世界王者として守りに入るのではなく、ハイレベルな頂上決戦でライバルの台頭を歓迎し、むしろ奮起を促される状況を楽しんでいるようだ。
SPは今季自己ベストで演技構成点トップ
宇野はGPファイナルで連覇こそならなかったが、今季の最大テーマである「表現力」で着実な進歩の跡を示した。
SPは冒頭の4回転フリップから4回転―3回転の連続トーループ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)と3つのジャンプ全てで2点以上のGOE(出来栄え点)を引き出す圧巻の内容。11月のNHK杯では4回転ジャンプがことごとく回転不足と判定されたが、スピン、ステップでも最高のレベル4を獲得し、今季自己ベストの高得点をマークした。
さらに構成力、演技力、スケート技術という3つの項目で「表現力」を示す演技構成点は全体トップと成長ぶりを証明した。
フリーも表現力示す演技構成点は1位
フリーは冒頭に4回転ループを決めると、続く4回転フリップも着氷。4回転トーループも2本降りた。一方で中盤はトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の回転が抜けて単発になり、4回転フリップとトーループはわずかに回転不足を意味する「q」マークの判定。それでも基礎点が上がる後半の3つのジャンプはいずれも着氷し、表現力を評価する演技構成点はSPに続き全体トップの93.37点をマークした。
スピンでレベルの取りこぼしもあったが、宇野はユーチューブで公開された大会の記者会見で「ショートもフリーも自分のいまできるベストを出したと思います。この大会を終えてうれしい気持ちです」と前向きにコメント。「うれしい気持ち」と捉えたところに、ハイレベルな戦いで奮起を促された思いが伝わる。
これまで宇野は冬季五輪2連覇の羽生結弦や北京冬季五輪金メダルのネイサン・チェン(米国)らの背中を追いかけてきた。今季は世界選手権の3連覇が懸かる。世界王者として挑戦を受ける立場になった今も、異次元のジャンプを世界にアピールしたマリニンの存在が新たな刺激になり、氷上で闘う最大のモチベーションになっているのだろう。
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