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宇野昌磨が世界一!苦節7年…魂を込めた「ボレロ」完成形で悲願達成

2022 3/28 06:00田村崇仁
宇野昌磨,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

世界歴代3位、日本勢で羽生結弦以来5年ぶり3人目

スピン、ステップは全て最高評価のレベル4を獲得し、表現力を示す音楽の解釈やスケーティング技術の演技構成点も5項目全て9点台。3月26日に行われたフィギュアスケートの世界選手権(フランス・モンペリエ)で悲願の世界一に輝いた北京冬季五輪銅メダルの24歳、宇野昌磨(トヨタ自動車)がフリーで演じた自身最高難度の「ボレロ」は、数字が示す通り圧巻の内容だった。

ショートプログラム(SP)に続いてフリーもトップの202.85点をマークし、世界歴代3位の合計312.48点。シニアデビューから苦節7年で世界歴代3位の高得点が出ると、キスアンドクライで右腕を突き上げ、元世界選手権王者のステファン・ランビエルコーチと抱き合って喜びを分かち合った。

2016年から過去出場した五輪と世界選手権では3度の2位が最高成績。演技後の場内インタビューで「国際大会でなかなか優勝をとったことがなかったので、初めて世界選手権で1位になれたことをうれしく思います。振り付けをしてくれたステファンが納得できる、満足させる演技をしたかった」と笑顔でタイトルの味をかみしめた。

日本勢の男子では2017年大会の羽生結弦(ANA)以来5年ぶりで、2010年大会の高橋大輔を含めて3人目の快挙となった。

4回転ジャンプは5本中4本に成功

宇野にとって自身の殻を破る意味で特別な存在であり、フリップ、ループ、サルコー、トーループの4種類計5度も4回転ジャンプを組み込む「ボレロ」は「体力を必要とするプログラム。今年1年で出来上がるのかは不可能だと思っていた」という。それでも「最高難度」と表現する演目は世界選手権で一つの「完成形」にたどり着いた。

冒頭の4回転ループに始まり、サルコー、トーループ、さらにトリプルアクセル(3回転半)と美しい着氷で、出来栄え点(GOE)3点以上を軒並み獲得。ジャンプを決めるたびに会場の拍手と歓声が大きくなった。

後半のフリップ成功に続くトーループは着氷が乱れたが、4回転は5本中4本を決めた。そして観客を魅了したのはクライマックスに差し掛かる演技終盤の魂を込めたステップだ。

「何よりジャンプ以外の部分が、おろそかになっていることが多い」との自戒も込め、最後まで笑みさえこぼしながら全身で表現し続けた。技術だけでなく、ステファン流の表現力にこだわった結果が世界一の称号にもつながった。

来季へ再出発、宇野の「ゴール」は先に

今大会は世界選手権3連覇中だった北京五輪金メダルのネイサン・チェン(米国)や羽生がけがで欠場。宇野は世界一を再出発と位置付け「自分のゴールはまだ先にある」と満足することなく将来を見据えた。

演技後の場内インタビューでは2019年のグランプリシリーズ、フランス杯が「僕のスケート人生の分岐点」とも振り返った。指導者不在で臨んで8位と惨敗し、涙を流した忘れもしない大会。だからこそ「再びこの舞台で優勝できた」という因縁の地での現実が再出発への思いを強くするのだろう。

後輩ながらいつも刺激を受ける北京五輪銀メダルの18歳、鍵山優真(オリエンタルバイオ・星槎)は合計297.60点で2年連続の2位。日本勢では2017年大会の羽生、宇野以来のワンツーフィニッシュとなった。来年の世界選手権はさいたま大会。どん底期を乗り越えた宇野はさらに強くなって日本に戻ってきそうだ。

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