GPシリーズ中国杯は2位でも一定の手応え
フィギュアスケート男子で昨季のグランプリ(GP)ファイナル初制覇を遂げ、世界選手権でも日本男子初の2連覇を達成した25歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)が「新」をテーマに掲げる新たなシーズンを本格的にスタートさせた。
今季初戦となった11月11日までのGPシリーズ第4戦、中国杯(重慶)はショートプログラム(SP)で今季世界最高の105.25点を出してトップに立ちながら、フリーは2位の合計279.98点で2位。優勝はSP2位から逆転した新鋭のアダム・シアオイムファ(フランス)でフリー1位の298.38点をマークした。
それでも世界王者として次なるステージへ「ジャンプ」の二の次でなく、観客を引き付けるような「表現力」を追い求める今季のスタンスは明確だ。一つの理想に掲げるのは、幼少期から憧れの存在だった高橋大輔のような卓越したジャンプだけでなく表現力豊かなスケーターだという。
国際スケート連盟(ISU)の公式サイトで「シーズンが進むにつれて良くなっていくと思う」とコメントしたように、確かな手応えも得た初戦となったようだ。
SPは3本のスピン全てで最高のレベル4
SPは独特の世界観をアピールした。冒頭の4回転フリップを流れるように決めると、3.46点の加点を得るGOE(出来栄え点)を獲得。続く4回転―3回転の連続トーループも成功してGOEで2.85点の加点を得て、続くトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も何とか着氷をこらえた。
見せ場のステップとスピンでも中国の観客を沸かせ、3本のスピン全てで最高のレベル4を獲得。演技構成点は出場選手中トップの46.08点をマークし、上機嫌で親指を立てるポーズまで見せた。
中継局のインタビューでは「表現面で感情をしっかり乗せることはできていた」と納得する一方で「つなぎ」や「スピード」で「もっとよくできると思っている」と課題も口にしたが、着実なステップアップを証明した。
フリーは4回転ループの着氷で転倒
SP首位で迎えたフリーは冒頭の4回転ループの着氷で転倒し、GOEで5.25点の減点を受けた。続く2本目で4回転の予定だったフリップも回転が抜けて2回転となるなど、序盤から流れに乗りきれなかったのが結果的には響いた形だ。
それでも後半は4回転―3回転の連続トーループをきれいに成功させて2.85点のGOEの加点を獲得。スピンも3本全てで最高のレベル4を獲得し、内容自体に手応えもあるようだ。SPから14点近い差をひっくり返されながらも演技をまとめた。
ISUの公式サイトで宇野は「SPの後、自分の仕事ができなかった」とコメント。「ジャンプに集中しなければならないが、表現面でもっと見せたい」とも語っている。
今夏は大人気アニメのワンピースが史上初めてアイスショーとなった『ONE PIECE ON ICE~エピソード・オブ・アラバスタ~』で主人公の少年モンキー・D・ルフィを演じ、そこでもこだわったのは「表現力」だったという。
今季初戦で見せたのは指先まで神経を研ぎ澄ませ、プログラムを通して体現しようとする氷上での姿勢だった。根底にあるのはシーズンを通してプログラムを完成させたい思いだ。
進化した新たなスケーター像を見据え、今季の宇野はとことん理想の姿を追い求める。
※3回転と表記すべきところを2回転と表記しておりました。お詫びして訂正いたします。11月16日10時16分
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