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フィギュア世界王者の宇野昌磨、4回転ルッツ習得へ「昨日の自分に負けない」

2022 7/7 06:00田村崇仁
宇野昌磨,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

アイスショーで新SP「Gravity」披露

フィギュアスケートの新シーズンが始まった。3月の世界選手権(モンペリエ=フランス)を初制覇した男子の宇野昌磨(トヨタ自動車)は7月1日、横浜市のコーセー新横浜スケートセンターで始まったアイスショー「ドリーム・オン・アイス」で2022~2023年シーズンの演目を滑り、伸びのあるスケーティングで観客を魅了した。

大トリを務めた24歳の宇野は新たなショートプログラム(SP)のブルースギター曲「Gravity(グラビティー)」(重力)の旋律に合わせてトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を鮮やかに決め、得意のクリムキンイーグルも披露。日本スケート連盟の公式サイトで「昨日の自分に負けない様に前を向いて頑張っていきます」と決意を述べた通り、まず向き合うのは自分だ。世界王者として新シーズンに挑む気負いは見えない。

「Gravity」の振り付けを担当した全幅の信頼を置く元世界王者ステファン・ランビエールコーチとブラッシュアップを重ねながら、さらなる成長への意欲をにじませた。

引退が先か、4回転ルッツが先か

YouTubeで公開された6月下旬のイベントでは習得を目指す高難度の4回転ルッツが話題になり「頑張っているんですけど、僕の引退が先か、ルッツがましになるのが先か、どっこいどっこいです」と冗談交じりに返答する場面もあった。

新シーズンからルール改正で表現力を示す演技構成点が5項目から3項目に減る影響については「大きな変化はない。コンビネーションでアクセルが使えるようになったし、新しいルールにも向き合っていく」と前向きにコメント。

4回転ジャンプ時代でつきまとう負傷のリスクには「どんどんベテランの域に近づいていく。現役を長く続けるためにも先輩方を見習い、自分に合った練習の仕方を身に付けたい」と意欲的に語った。

4回転の神、米国の新星マリニンも意識

今回のアイスショーには4月の世界ジュニア選手権王者で17歳の新星イリア・マリニン(米国)も参加しているとあって、大いに刺激を受けているようだ。マリニンといえば、前人未到の超大技、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を練習中に跳んだことが話題になった逸材だ。

夢の4回転半は羽生結弦(ANA)が2月の北京冬季五輪の男子フリーで果敢に挑み、回転不足と判定されて成功こそならなかったものの、国際スケート連盟(ISU)に初めて挑戦を「認定」されている。

そんな超大技に挑むマリニンは自らを「4回転の神」と呼び、宇野自身が憧れの羽生以外に目標と公言する北京五輪王者ネイサン・チェン(米国)の後継者ともいわれる存在。今年1月の全米選手権ではショートで2本、フリーで4本の4回転を成功させ、チェンに次ぐ2位に入っている。4回転ジャンプを演技構成で重視する宇野にとっては今季もライバルとなり得るだろう。

アイスショーでは新しいプログラムに果敢にトライし、少しずつ完成度を高めていくと位置付ける。「今もなお世の中では様々な困難を強いられておりますが、今できること、今日できることに一生懸命になれば必ず明日に繋がっていくと思っています」と宇野は社会情勢も踏まえて新シーズンへの意欲を語る。「1年ごとに自分の取り組み方は変わっていく」と進化を止めないスケーターの新たな挑戦がいよいよ始まる。

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