北京冬季五輪では羽生結弦が挑戦で「初認定」
前人未到の超大技、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)はフィギュアスケート男子の羽生結弦(ANA)が2月の北京冬季五輪の男子フリーで果敢に挑み、回転不足と判定されて成功こそならなかったものの、国際スケート連盟(ISU)に初めて挑戦を「認定」されて話題を呼んだ。
その公式戦で成功者が未だに現れていない「夢のジャンプ」に挑んでいるもう1人のホープが、4月の世界ジュニア選手権王者で17歳の新星イリア・マリニン(米国)だ。
米国フィギュアスケート協会の公式ツイッターで公開された動画では練習とはいえ、滑らかな助走から両手を広げてきれいに着氷を決め、世界に衝撃を与えている。米メディアも「最も完成に近い4回転アクセル」などと称賛した。
「4回転の神」の異名、母も名選手のフィギュア一家
自らのインスタアカウントを「quadg0d(4回転の神)」とするほど4回転にこだわるマリニンは身長168センチで手足が長く、4月の世界ジュニア選手権(エストニア・タリン)でジュニア歴代最高の合計276.11点をマークして初優勝。フリーではルッツ、トーループ、サルコーの3種類計4度の4回転ジャンプに成功し、2位に41.80点差もつける圧巻の演技で、新世代のスター候補に名乗りを上げた。
元ウズベキスタン代表の両親を持ち、母は四大陸選手権やNHK杯で頂点に立った名選手のタチアナ・マリニナ。1998年長野冬季五輪では8位に入賞している。
そんなフィギュア一家で英才教育を受けたマリニンは、全5種類の4回転を既に習得したという。1月の全米選手権ではネイサン・チェンに次いで銀メダルを獲得。シニアの経験不足から北京冬季五輪代表を逃し、3月の世界選手権(フランス・モンペリエ)はショートプログラム(SP)4位から崩れて9位に終わったが、北京五輪王者に輝いたチェンの後を引き継ぐ「ポスト・ネイサン」との呼び声も高い。
4回転半成功の偉業達成へ高まる期待
フィギュアの全6種類のジャンプの中で1回転半の「アクセル」は唯一、前向きに踏み切り、他のジャンプよりも半回転多い分、最も難度が高いとされる。4回転半は基礎点が最高の12.50点に設定され、まだ誰も成功したことがない「神の領域」でもある。
羽生の北京冬季五輪での4回転半ジャンプへの挑戦は、五輪や世界選手権などの主要大会で史上初めてとなり、フィギュア界で新たな歴史を切り開く大きな一歩になった。
ジュニアで実績を残したマリニンはフィギュア大国ロシアのメディアも注目しており、来季はシニアの舞台で活躍が期待される逸材だ。羽生の背中を追いかけるように、これまでも自らのインスタで練習の様子や4回転アクセル挑戦の様子を報告。完成度を高めている。
羽生が開いたフィギュア界の新たな扉。最初の成功者は誰になるのか―。来季は4回転半ジャンプ成功という偉業達成へ歴史的快挙に期待が高まりそうだ。
【関連記事】
・羽生結弦のクワッドアクセル「世界初認定」でフィギュア界に新たな歴史
・羽生結弦が珠玉のプログラムを磨き続ける理由
・羽生結弦の言葉が誰の心にも刺さる理由