「ボレロ」で初の世界一から新たな一歩
4種類計5度の4回転ジャンプを跳ぶ自身「最高難度」の構成に挑んだ昨季の「ボレロ」から新たな挑戦を決意した。
2月の北京冬季五輪フィギュアスケート男子シングルと団体で銅メダル、3月の世界選手権(フランス・モンペリエ)で悲願の初優勝を遂げた24歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)は5月24日、Now Voiceで来季のフリーを「音楽の父」と呼ばれたバッハの名曲「G線上のアリア」で滑る考えを明らかにした。
振り付けは宮本賢二氏が担当。昨季は「世界一を目指すためには何が必要か。これまで以上の4回転ジャンプ」と考え、フリップ、ループ、サルコー、トーループの4種類計5度の4回転を果敢に組み込む「ボレロ」を大切に育てながら、世界選手権で世界歴代3位の合計312.48点をマークし、一つの完成形に到達した。さらなる「進化」を期す新シーズンへ新たな一歩を踏み出す。
来季SPのGravityは4月にお披露目
来季のショートプログラム(SP)は米国の人気ギタリストで親日家としても知られるジョン・メイヤーが歌う「Gravity(グラビティ=重力)」を演じることを既に公表しており、4月下旬のアイスショーで初お披露目した。
どこか哀愁が漂うエレキギターが印象的な落ち着いた楽曲で、選曲はSP、フリーともに絶大な信頼関係で師弟関係を築く元世界王者のステファン・ランビエル・コーチだという。
来季は4回転ルッツも新たな武器に
宇野はアイスショー、プリンスアイスワールドに向けた中継局のインタビューで、来季の新プログラムを披露することも明言。高難度の「4回転ルッツ」にも挑戦していると明かした。
新シーズンに向け「ジャンプは4回転ルッツをもしマスターできたら、自分にとっては大きな成長につながる。苦手でもやり続けなければ進まない」と意欲をにじませた。「ジャンプはやることが少なくなってきている。去年と変わらず成長したい。もう一度、世界一になるには成長し続けなければいけない」と挑戦者の気持ちを忘れず、強い覚悟を示した。
国際スケート連盟(ISU)総会で来季のルール変更が承認されることも想定し、得点源となる連続ジャンプのバリエーションを増やしていく狙いもあるようだ。「ルールに適応していくのが競技者」とのプロフェッショナルな心構えも語った。
ランビエル氏を自宅に招待、充実した時間も
宇野の弟、樹さんが自身のSNSやユーチューブで報告したところによると、来日中のランビエル・コーチを名古屋市の自宅に招き入れ、来季に向けた構想も着々と進んでいるようだ。愛犬とじゃれ合う様子も公開された。
宇野が国内拠点の中京大アイスアリーナでも指導を受け、行きつけの焼き肉店ではケーキとともに再会も祝福。1人立ちしたどん底期からランビエル氏とはい上がった成功体験が支えになっているのだろう。公私ともに充実した日々を過ごしている。
宇野が最近目標のスケーターとしてよく口にするのは、北京冬季五輪男子シングル金メダルのネイサン・チェン(米国)。初制覇した3月の世界選手権は五輪王者のチェンが不在だったこともあり「もっと成長したい」と純粋に挑戦者の気持ちを継続している。
来季も新プログラムに魂を込めて打ち込むことでスケートの喜びを感じ「失敗も成長するための大きなきっかけになる」と目を輝かせる宇野。「今年からシニアに上がるような気持ちで」と世界一の重圧を感じず、ゼロからの再出発を期している。
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