試合に出場できない「プロ」
「プロ」のフィギュアスケーターによる演技を観たことがあるだろうか。世界中の注目を集めた北京冬季五輪で滑った選手は全員が「アマチュア」である。
他のスポーツと同様、フィギュアスケートの世界にも「プロ」と「アマチュア」がいる。ただ、フィギュアスケートはアマチュアの方が注目度が高いという珍しい競技なのだ。では、両者の違いはどのようなところにあるのか。
まずフィギュアスケート界におけるアマチュアとは、国際スケート連盟(ISU)に登録している各国のスケート連盟に加入し、選手登録をしている選手のこと。正式にはエリジブル(有資格者)という。
かつては、ISU主催のフィギュアスケートの大会は賞金が出ず、アマチュア選手はアイスショーに出ることも禁じられていた。しかし現在では、アマチュア選手にもスポンサー企業がつき、テレビやコマーシャル、アイスショーに出演するなど様々な活動が可能だ。
一方、プロとして活動するには、選手は引退届を出して選手登録を解除しなければならない。そのため、オリンピックや世界選手権に出る権利を失い、主にアイスショーなどで演技することになる。
カナダやアメリカのような、フィギュアスケートが競技として人気になった歴史が長い国では、競技とアイスダンスを楽しむ層がそもそも違っていたりする。だが、人気が出てから歴史の浅い日本では、オリンピックや世界選手権など注目度の高い大会に出場するアマチュア選手の方がより認知されているだろう。
安藤美姫は振付師としても活動
技術点と演技構成点からなる厳密な審査基準があるアマチュア競技に対して、プロの演技は基本的に点数をつけられることがない。そのため、難易度の高いジャンプを成功させることにこだわらず、アイスショーなどで自分を表現しながら滑ることができるのが魅力だ。
かつてアマチュア選手として大きな実績を残したスケーターの多くが、その後、プロへと転向し現在も活躍している。現役時代、女子選手として史上初の4回転ジャンプを成功させた安藤美姫もその1人だ。
彼女は13年に現役引退を表明し、引退後はプロへ転向した。その後はアイスショーなどに出演するかたわら、16年からは振付師としても活動している。最近では、2021年8月にビーコンプラザ(大分県別府市)で開催された「プリンスアイスワールド2021-2022『Brand New Story Ⅱ』~Moving On!~ 大分公演」に出演した。
浅田真央の現在
そして、バンクーバー五輪銀メダル、世界選手権を3度制覇など輝かしい実績を残した浅田真央も、2017年に現役引退を表明後、プロに転向。2018~2021年の3年にわたって自身が主役を務めるアイスショー「浅田真央サンクスツアー」に出演し、ファンへの感謝の思いを伝えた。
そして2022年2月19日放送の「バース・デイ」(TBS)に出演した際は、男女ペアでの演技に挑戦する様子を初公開し、「まだ本格的に(ペアを)始めて3カ月くらい」と語っている。
やはりシビアに高得点が求められる競技と、表現で観客を楽しませるアイスショーでは「魅せ方」も全く異なるということだろうか。
ライバル同士で激しく火花を散らす五輪とは違い、プロの舞台ではフィギュアスケーターたちが新たな一面を見せてくれるに違いない。
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