歴史の長い「氷上の社交ダンス」
「アイスダンス」と聞いて、どのような種目が思い浮かぶだろうか。フィギュアスケート競技の一種目とは知っていても、ペアや男子シングル・女子シングルとの違いはあまり浸透していないかもしれない。
アイスダンスは男女1組のペアで、音楽に合わせて滑走しダンスリズムを表現する種目だ。審査されるのは主にステップワークや滑走技術、ダンスリフトなどで、「氷上の社交ダンス」とも呼ばれる。
かつては規定の音楽とステップを滑る「コンパルソリーダンス」、リズムはあらかじめ定められており演技部分は自由な「オリジナルダンス」、そして音楽・構成ともに選手が自由に組み立てて滑走する「フリーダンス」の3種目があった。
しかし、2010年にルールが改正され、オリジナルダンスは廃止。代わって「ショートダンス(現在はリズムダンス)」が新設され、コンパルソリーダンスは「パターンダンス」と改名された。
2022年現在、国際スケート連盟が主催する競技会では、ショートダンスとフリーダンスの総合得点で順位が決まる。オリンピックの正式種目になったのは1976年のインスブルック冬季オリンピックで、実は歴史が長い。
高難度な技を競うペアと表現力重視のアイスダンス
一見、「ペア」種目との違いがわかりにくい印象を受けるのではないだろうか。両者の最も大きな違いはジャンプだ。
実はアイスダンスではジャンプをすることはあまりない。それどころか、派手なエレメンツ(要素)は禁止されている。たとえば、スロージャンプ、ツイストリフト、オーバーヘッドリフトなどである。
そもそもアイスダンスでは、シングル(1回転)ジャンプ以外のジャンプはプログラムに含まなくてもいいことになっているのだ。このようなルールがあるフィギュアスケート種目はアイスダンスのみである。
さらに選手2人が腕2本分以上離れてはいけない。2人が距離をとった演技を一定時間以上続けるのも禁止だ。
一方のペア種目にはこのような禁止事項はない。ジャンプをはじめ高難度な技の完成度を競い合うペア、リズムやダンスの表現を重視するアイスダンスと考えればわかりやすいのではないだろうか。
村元哉中・高橋大輔組は日本勢過去最高の2位
2022年の世界大会でもアイスダンスは多くの観客を魅了した。特に今勢いのある選手が、村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)である。
彼らは北京五輪出場こそ逃したものの、1月の四大陸選手権(タリン)では銀メダルを獲得。アイスダンス種目での出場はまだ2シーズン目でありながら、同種目の日本チームとして過去最高順位という快挙を成し遂げた。
さらに北京冬季五輪で日本の団体3位に貢献した小松原美里、小松原尊組(倉敷FSC)も注目株。同大会のフリーダンスでは、日本の芸者の生き様を描いた映画「SAYURI」の曲を使用し、小松原美里は着物をモチーフにした煌びやかな衣装で、夫婦の息の合った演技を披露した。
これまで日本のフィギュアスケート界ではシングル種目に注目が集まることが多かった。しかし、ペアやアイスダンスのようなカップル種目も、近年は輝かしい結果を残すようになってきている。この流れが追い風となり、競技の人気度、ひいては選手層の向上につながるのを願うばかりだ。
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