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北京五輪銅メダルの坂本花織が世界のスケーターの希望の光になった理由

2022 2/20 11:00田村崇仁
北京五輪銅メダルの坂本花織,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

浅田真央以来、12年ぶりの日本勢メダル

優勝候補の大本命だった15歳のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会=ROC)のドーピング騒動に揺れる中、フィギュアスケート女子で21歳の坂本花織(シスメックス)が4回転やトリプルアクセル(3回転半)の大技がなくても完成度の高い演技で世界を魅了し、北京冬季五輪で価値ある銅メダルに輝いた。

表現力を示す演技構成点のスケーティング技術では金メダルのアンナ・シェルバコワ(ROC)らを抑えて全体トップの9.46点。国際大会では今季初めて音楽の解釈など全5項目で9点台をそろえ、スピードとダイナミックなジャンプを武器にロシア勢3強の一角を崩す原動力となった。

女子シングルのメダルは1992年アルベールビル五輪「銀」の伊藤みどり、2006年トリノ五輪「金」の荒川静香、2010年バンクーバー五輪「銀」の浅田真央以来となる4人目。演技後の中継局インタビューでは「すごくうれしい気持ちでいっぱい。歴代のメダリストの中に入れたのは自分でもびっくり。本当に一緒の立場にいて大丈夫かな?」と泣き笑いの表情で喜びに浸った。

フリーは7つのジャンプ全て成功で自己ベスト

「シンデレラガール」と呼ばれ、17歳で初出場した2018年平昌冬季五輪は6位。あれから4年の月日は坂本を着実に進化させた。2月15日のショートプログラム(SP)は自己ベストの79.84点をマークし、強豪のROC勢に食い込んで3位発進。「女性の強さ」を表現するプログラムを丁寧に演じた2月17日のフリーでも真骨頂のスケーティング技術と完成度は際立った。

冒頭のダブルアクセル、続く3回転ルッツと流れるようなジャンプと着氷を決めた。ジャンプ以外のステップ、スピンでも最高評価のレベル4で魅了。基礎点が1.1倍になる演技後半も勢いは止まらず、フリップ―トーループの2連続3回転など7つのジャンプを全て成功し、SPに続いて3位の153.29点で自己ベストの合計233.13点をたたき出した。

切り札となる大技を習得する選択肢もあったが、確実にできるダブルアクセル(2回転半ジャンプ)と5種類の3回転ジャンプを駆使して勝負する戦略に迷いはなかった。

完成度を重視して一つ一つの技や表現レベルを高めた演技構成を世界のジャッジも高評価。恩師の中野園子コーチから平昌五輪後は自立を促され、自らの意志で大技を回避して出来栄え点で勝負する道を選択したことが奏功した形だ。全日本選手権覇者として臨んだ2度目の五輪で笑顔満開となる成長を証明した。

4回転なしでも技術や表現力で対抗

4回転時代のフィギュア界で4回転ジャンプを跳ばない選手がメダルを獲得した価値は大きい。

4回転に対抗するスピード、スケーティング技術、技のつなぎ、ジャンプの質、そして表現力を極めれば世界と戦えることを改めて証明した坂本の銅メダルは、世界の多くのスケーターにとっても希望になるだろう。フィギュアの原点でもある。

最終組の6人で4回転ジャンプやトリプルアクセル(3回転半)を武器に持たなかったのは坂本だけ。それでも全要素で加点を引き出す完成度の高い演技を見せ、演技構成要素の基礎点は合計62.02点と高くなくても技術点は78.90点で全体3位。表現面などを評価する演技構成点でも74.39点と全体2位と大健闘した。

ロシア勢との差、来季以降は4回転も視野

ROCのアンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トルソワの上位2人は技術点が100点を超え、合計得点で上位2人と坂本の差が約20点開く要因となった。

銅メダルの歓喜から一夜明けた2月18日、坂本は来季の目標として4回転ジャンプに挑む姿勢を示した。「4回転をやるならトーループかループか」と語り、3月の世界選手権(モンペリエ=フランス)後に取り組んでいく意向という。

25歳となる4年後の大会はミラノ・コルティナダンペッツォ五輪。「全然まだまだ跳べそうだなって」と3大会連続の五輪へ早くも決意を新たにしている。

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