初の総合演出、全国で200回超のツアー
フィギュアスケート女子の歴史に燦然と輝く浅田真央と金姸児(キム・ヨナ)は現役引退後もそれぞれの道を着実に歩んでいる。同い年の良きライバルとして、ジュニア時代から五輪までしのぎを削った2人の現在地を追った。
2010年バンクーバー冬季五輪の銀メダリストで30歳の浅田真央は4月27日、3年前から続けてきたアイスショー「浅田真央サンクスツアー」の最終公演を横浜アリーナで終えた。
初めて自ら総合演出を手掛け、新型コロナウイルス禍で中止などを余儀なくされた公演もあったが、全国各地で200回を超えるロングランを開催。いまや伝説となった2014年ソチ冬季五輪のフリーで演じたラフマニノフの名曲「ピアノ協奏曲第2番」など現役時代に滑ったプログラムも再現し、表現力豊かなステージで長年のファンを喜ばせた。
22年間の選手時代に負けないくらい濃密だったサンクスツアーの最終公演を終えると、自身のインスタグラムで「集大成として全て出し切り、滑り切る事ができました。終わってしまい、淋しい気持ちもありますが、晴れやかな気持ちでもあります。サンクスツアーは幕を閉じましたが、これが終わりではなく、新たなスタートだと思っています」と充実した気持ちを素直につづった。
子どもたちへ「真央リンク」創設にも意欲
2017年4月に現役引退を表明した国民的スケーターの浅田は、第二の人生を模索する中でファンに感謝を伝える「サンクスツアー」を立ち上げた。振り付けから衣装まで全てを試行錯誤しながら手掛け、もう一度滑りたいプログラムをメドレー形式で届けるアイススケートショーは新たな旅立ちでもあった。
5歳でスケートを始め、16歳で初出場したNHK杯で彗星のごとく現れて優勝すると、代名詞の「トリプルアクセル」と誰からも愛される飾らない人柄で一躍日本中の注目を集める存在になった。
一方、全国を回るツアーのリーダとして他のキャストを引っ張り、演出家として立ち回る姿は、現役時代の「天才スケーター」とはまた違う姿だった。
さらに国民的テレビ番組「徹子の部屋」にも出演し、今後の夢として子どもたちの練習環境をより良くするため、自らが手掛ける「真央リンク」創設にも意欲を示した。構想はトップ選手を目指す子どもたちだけでなく、一般の人も滑れるスケートリンクだという。現役を引退しても浅田の「スケート愛」は高まるばかりだ。
自然に囲まれた田舎生活などの夢も語った。一つの旅を終え、また新たな旅が始まろうとしている。
キム・ヨナは平昌五輪の大使と最終点火者
2010年バンクーバー冬季五輪金メダリストで30歳の金姸児(キム・ヨナ)もまた韓国の国民的なスターだった。
「国民の妹」として絶大な人気を集め、2014年ソチ冬季五輪を最後に引退したが、2018年平昌冬季五輪では広報大使として大忙し。五輪招致の段階から流ちょうな英語で招致をアピールする「顔」となり、国際オリンピック委員会(IOC)の会議や数々の国際舞台で堂々と演説を行って活躍したのも記憶に新しい。
平昌五輪では大会のハイライトとなる開会式で聖火リレーの最終点火者の大役も務め、まさに韓国アスリート界を代表する立場に成長している。
平昌五輪後はアイスショーなどにも精力的に出演しているが、国連児童基金(ユニセフ)の親善大使としても活躍の幅も広げ、テレビCMなどにも引っ張りだこ。氷上で美しく舞った金メダリストの人気と存在感は浅田真央と同様、今後も不動の価値があるようだ。
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