NHK杯で今季の女子日本勢GP初制覇
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦、NHK杯(東京・国立代々木競技場)で11月13日、女子は21歳の坂本花織(シスメックス)がショートプログラム(SP)に続いてフリーでも1位の146.78点を出し、今季世界7位の合計223.34点で2連覇を達成した。女子の日本勢で今季のGP初制覇となり、混戦の北京冬季五輪代表争いで一歩リードした形となった。
GP第1戦のスケートアメリカ覇者のアレクサンドラ・トルソワ(ロシア)や紀平梨花(トヨタ自動車)が欠場した中、10月のスケートアメリカで4位の坂本はシリーズ全6戦の上位6人によるファイナル(12月・大阪)進出も決め、前回の4年前と同様に五輪シーズンに合わせ、調子を上げてきた。
演技後のNHKインタビューでは「この大会でショートとフリーをノーミスでそろえることが目標だった。ちょっと危ない部分はあったけど、大きなミスなく終えられたのがうれしいです」と喜びを語った。
ロシア勢不在で地力の差
SP首位で迎えた最終滑走。今季の課題としたフリーのプログラムは新型コロナウイルスで制限された世界で「女性の力強さ」を表現することをテーマにし、海外のドキュメンタリー映画の音楽を用いた難解なものだ。
強敵ロシア勢は不在でも「怖かった。相変わらず緊張がすごくて」という心理状況だったという。それでも2018年平昌五輪6位の坂本は表現豊かに演じきり、勝負どころで地力の違いを見せた。
冒頭のダブルアクセル(2回転半ジャンプ)で体が傾いても着氷をまとめた。「最初のアクセルで傾いてしまってヒヤッとしたけど、最後まで持ちこたえられてよかった」。演技後半のフリップ―トーループの2連続3回転を決めると「練習通りの感覚になった」と落ち着きを取り戻し、ジャンプでは最後の要素となる3回転ループはバランスを崩しながらもこらえ、息を切らしながらフィニッシュ。七つのジャンプで全て加点を得た。
表現面を示す演技構成点は「音楽の解釈」で9.04点を出すなど3項目で高評価の9点台。4回転ジャンプやトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)など大技を出さなくても、総合力の高さで成長を証明した。合計得点で2位の17歳、河辺愛菜(木下アカデミー)に17.90点差をつける圧勝だった。
スピンやステップも修正
表彰台まで約1点差の4位だった10月のスケートアメリカから内容もきっちり修正。スピンは3本全てで最高評価のレベル4を獲得し、ステップシークエンスもレベル4だった。坂本は「アメリカ大会でスピンやステップのちょっとしたミスでも表彰台を逃した。NHK杯でその悔しさを晴らせた」と満足そうに振り返る。
10月初旬からは国内での2連戦を志願し、北京、ラスベガスと4週連続で試合に出場。実戦をこなしながら課題を克服してきた。「GPファイナルっていう舞台もオリンピックの選考に入ってくるので、どの試合でも安定した演技をすることでちょっとずつ自分のイメージがアップできるかなと思うので、ちょっとずつですけど、シーズンベストもちょっとずつ更新できて。まだショートにしろ、フリーにしろ、まだ伸びしろがあるので、シーズンベストを更新して、いいものをシーズン後半に向けて、できるようにしたいなと思っています」
6位入賞を飾った平昌五輪はまだ高校2年生のホープだった。今は神戸学院大に進学し、女子の中堅という立場に変わった。4回転など高難度のジャンプで世界を席巻するロシア勢にどう対抗するのか―。坂本は等身大の自分を向き合い、演技の完成度を高めることで、勝負する覚悟を固めている。
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