逆転で7年連続の全日本選手権切符
今季のテーマに掲げる「唯一無二のスケーター」へ正念場を乗り切り、リベンジの舞台へ道が開けた。
フィギュアスケートの東日本選手権は10月31日、東京都西東京市のDyDoアリーナで行われ、2016年世界ジュニア選手権女王で20歳の本田真凜(JAL)が合計152.02点で5位に入り、逆転で7年連続の全日本選手権(12月22~26日、さいたまスーパーアリーナ)出場権を確保した。
女子のショートプログラム(SP)で50.37点の8位と出遅れたが、フリーでは表現力を示す演技構成点で高評価されて101.65点の5位と巻き返した。東日本出場の選手にとって、女子は上位5選手が年末の全日本に進める条件だった。
大会前に浅田真央から激励で奮起
10月上旬の東京選手権は12位。心が折れそうになり、自分の演技に対する葛藤もあった。
そんな時、大会前に元世界女王で2010年バンクーバー五輪銀メダリストの浅田真央さんから連絡があり一緒に練習する機会に恵まれたという。昔から憧れる大先輩から激励を受け、自分のプログラムに自信を取り戻せたのと同時に、全日本出場への約束に奮起した。
フリー曲は2018~19年シーズン以来となる「ラバーズ」。冒頭の3回転ループ―2回転トーループを成功すると、3回転フリップも着氷した。3本目の3回転サルコーで転倒したものの、最後は3回転トーループからの3連続ジャンプを着氷させた。
持ち前の表現力で魅了し、終盤のスピンやステップも最高レベルのレベル4を獲得するなど大きなミスなく無難にまとめた。
「特別な思いがある」という全日本の舞台。苦しみながらも、浅田と約束した切符を逆転でつかみ、心の底から感謝した。
アイスダンスに取り組んで心機一転
2020年12月の全日本選手権は、体調不良により棄権。それだけにリベンジへの思いは強い。
民放テレビのインタビューによると、当時の休養中にアイスダンスに取り組むなど新たな挑戦で自分の中で発見もあったという。
「アイスダンスをやって自分のプラスになった。同じ競技ですけど、全然違うスポーツをやっているような感覚。スケーティングやステップが自分のプラスになった。気持ち的にもスケートが楽しいと思えた」と心機一転した心境を明かしている。
さらに「競技を続けるからにはトップを目指す。一度ジュニアの時にトップになれたようにシニアでも上を目指して頑張りたい」と決意を新たにした。
今夏にはアイスショー「ザ・アイス」にも出演し、独特の世界観も披露した。持ち前の表現力に磨きを掛けた。自分らしく、自分にしか出せないところをもっと伸ばしていければ―。そんな思いは浅田からの激励でもさらに強くなったようだ。
親友の伊藤美誠から刺激、1人ラーメンも
東京五輪で夏季大会の日本女子選手として史上初めて金、銀、銅メダルを獲得した卓球の伊藤美誠(スターツ)は親友の間柄。そんな伊藤の五輪の試合は全試合チェックしたそうで、同じアスリートとして刺激も当然受けている。
全日本切符を得た東日本選手権の翌日は、自身のツイッターで人気ラーメン店「一蘭」に1人で行ったことを報告。しかも半替え玉3杯の食べっぷりで「1人ラーメン。はーい。明日からまた気をつけまーす」と茶目っ気たっぷりにつぶやいた。
2018年平昌冬季五輪で金メダルに輝いたアリーナ・ザギトワ(ロシア)ともジュニア時代、互角に競い合った実力者。中学時代に挑んだ世界ジュニアで女王に輝いた実績がある分、本人もシニアで思い通りに行かない現在地に忸怩たる思いもあるだろう。
その華やかなスケーティングと周囲を魅了する表現力は憧れの浅田をはじめ多くの人が認めるところ。北京冬季五輪を見据えたシーズンで自らの殻を破れるか―。真価が問われる年となりそうだ。
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