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三浦璃来、木原龍一組「りくりゅう」が北京五輪フィギュア団体初メダルのカギ握る

2021 10/27 06:00田村崇仁
スケートアメリカで2位に入った三浦璃来、木原龍一組,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

三浦璃来、木原龍一組が銀で日本人ペアGP初の表彰台

北京冬季五輪シーズンに入ったフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第1戦、スケートアメリカでペアの三浦璃来、木原龍一組(木下グループ)が快挙を達成した。

璃来と龍一で「りくりゅう」の愛称で親しまれるペア。10月23日、米ネバダ州ラスベガスで行われたGPでショートプログラム(SP)に続いてフリーも3位になり、自己ベストの合計208.20点で2位に入った。

日本人同士のペアとしてGPの表彰台は史上初めて。兵庫・宝塚市生まれの19歳、三浦と愛知・一宮市生まれの29歳、木原。10歳差コンビが日本では馴染みが薄い弱点種目で飛躍的に成長し、金字塔を打ち立てた。

羽生結弦ら擁する団体はカップル種目が鍵

「りくりゅう」ペアは9月のオータム・クラシック(カナダ)でも国際大会初優勝。滑るたびに自己ベストを更新して進境著しい2人の躍進により、日本は北京五輪で団体初のメダルも追い風が吹いてきた。

2014年ソチ五輪から採用された団体はシングル、ペア、アイスダンスでチームを構成し、日本はソチ五輪、2018年平昌五輪で2大会連続の5位。シングルに五輪3連覇が懸かる羽生結弦(ANA)や平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)ら世界トップレベルを擁し、アイスダンスでも村元哉中、高橋大輔組(関大KFSC)らの台頭でレベルが向上する日本にとって、カップル種目の成長がメダルへの鍵。期待が膨らむ大きな一歩となった。

フィギュアで最もアクロバティックなペア

国際スケート連盟(ISU)の競技ルールでペアは「1人の女性と1人の男性から成る2人組」と定められ、シングル同様、SPとフリーがある。

五輪では1908年ロンドン夏季大会で初開催され、男性が空中に女性を投げてジャンプに導く「スロージャンプ」、男性が女性を頭上に高く投げて回転を終えて降りてくる女性を受け止める「ツイストリフト」など大技が特徴的で、フィギュアで最もダイナミックかつアクロバティックな種目ともいわれている。一方でけがのリスクも伴う。

そんなペアと比べて「氷上の社交ダンス」と呼ばれるアイスダンスは2人が同調してステップや小刻みなターンを重視し、楽曲に沿った「ダンス」で魅了する違いがある。

結成3季目、磨いた力強いリフトで熱演

五輪シーズンのGP初戦、ペア結成3季目の「りくりゅう」ペアは息の合った演技でピンチにも動じなかった。

身長145センチの三浦が174センチの木原に放り投げられて跳ぶスロー3回転ルッツで転倒。フェンスにも激突したが、すぐ立ち上がって笑顔で最後まで踏ん張り、右膝の出血は演技後まで気付かなかったほど集中していた。

それ以降はコンボスピン、男性が円の中心の軸になって片手で引っ張るように女性を支える「デススパイラル」、リフトと最高評価のレベル4を獲得。自己ベストをマークして演技を終えると、会場の大歓声と拍手に包まれて拳を突き上げた。

日本代表では2011年NHK杯2位の高橋成美、マーヴィン・トラン組以来、日本人同士ではGP初の表彰台。昨季の世界選手権3位のロシアペアや地元米国ペアも上回った。

4年前の平昌五輪で22組中21位に終わった木原が三浦に声を掛け、2019年8月に新ペアを結成。新型コロナウイルスの影響で実戦の機会がほとんどなく、危機感を持った北京冬季五輪シーズンに向け大技のスロージャンプや力強いリフトを磨いてきた。

今大会では目標だった合計205点を上回り、五輪シーズンの名刺代わりとなる熱演で世界に「名前」を売ったのも大きい。破竹の勢いで滑り出した「りくりゅう」ペアから北京五輪まで目が離せなくなりそうだ。

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