2月24日、バカセグアと王座決定戦
プロボクシングのWBOスーパーフライ級1位・田中恒成(28=畑中)が2月24日、東京・両国国技館で同級2位クリスチャン・バカセグア(26=メキシコ)と王座決定戦に臨む。
2020年大晦日に4階級制覇を狙って井岡一翔に挑んだものの8回TKO負け。プロ初黒星を喫してから3年以上が経過し、ようやく巡ってきた晴れ舞台だ。
田中は2015年5月に日本ボクシング史上最速の5戦目でWBOミニマム級王座を獲得。2016年大晦日には8戦目でWBOライトフライ級王座を獲得して2階級制覇を達成し、2018年9月には木村翔に判定勝ちして12戦目で3階級制覇を果たした。
井岡に敗れるまで全勝街道を突っ走っていたスピードスターが16戦目で味わった、プロボクサーとして初めての挫折。勝った井岡が世界的な評価を高め、世界で最も権威があるとされるアメリカのボクシング誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンドで10位にランクされたのは、それだけ田中のKO負けが衝撃的だったことの裏返しとも言える。
数カ月に一度しかリングに上がれないボクシングで、ひとつの敗戦が持つ意味はとてつもなく大きい。負けても次の日に取り返せるスポーツではないため、勝ち続けないと道が途絶えてしまうのだ。
だからこそ初めての敗戦から学ぶことは多かっただろう。もう一度、世界戦のリングに上がるため地味でハードなトレーニングを続け、スキルアップに励んできた。この3年間の集大成を見せるのが2月24日の王座決定戦だ。
4階級制覇達成なら井岡一翔と統一戦の可能性も
WBO2位にランクされるバカセグアはこれが世界初挑戦。「ロッキー」の愛称を持ち、じりじりと距離を詰めながら前に出る好戦的なタイプだが、スピードはない。戦績も22勝(9KO)4敗2分と平凡で、19勝(11KO)1敗の田中がスピードで圧倒する展開が予想される。
昨年12月14日の会見では「これまでの人生で一番大きなチャンスだった試合に勝てなかった時から自信を失ったり、あきらめそうになったり、逃げそうになった時もありましたが、自分と向き合ってボクシングから逃げずに立ち上がってここまで来れた」と胸中を吐露。「そういう経験をしてきて多少のことではブレない自分ができた」と精神面の成長を明かした。
井岡一翔に敗れたショックから立ち上がり、愚直にトレーニングを積んできた成果を発揮するリングが刻一刻と近付く。「難しい相手ではないと思ってるんでKOで勝ちたい」と落ち着いた口調ながら自信をのぞかせた。
初めて負ける悔しさを知った田中恒成。約3年前に自分を奈落の底に突き落とした井岡は現在、同じスーパーフライ級のWBA王者だ。日本ボクシング史上3人目の4階級制覇を果たした暁には、統一戦というリベンジの舞台が実現する可能性もある。田中恒成の復活ストーリーはまだ通過点だ。
【関連記事】
・井上尚弥のKO完勝が「苦戦」に見えた理由、データで見るボクシング4団体統一戦
・平岡アンディに見る「父子鷹」の成果、幼少期からのボクシング指導は世界への近道?
・那須川天心は待望のKOなるか?初の世界ランカーと試金石のボクシング3戦目